屋久島旅。 |”もののけ姫”の世界に迷い込む、しっかりオチをつけてくれる太鼓岩 〜後編〜
長い間、「生涯で行きたい場所リスト」の最上位に君臨していた、屋久島。
このたび、ついに屋久島を訪れることができた。今回はその感動について書きたい。
前回は前編として、何よりも拝みたかった縄文杉のことと、屋久島で宿泊した宿のことについて書いた。
後編の今回は、島有数の名所である白谷雲水峡や太鼓岩を訪れたことと、屋久島旅に持っていって良かったアイテムについて書く。ぜひ最後までお楽しみください。
屋久島旅。 〜後編〜
”もののけ姫”の世界に迷い込む
10時間歩き通した縄文杉トレッキングから、明けて翌日。
筋肉痛の到来が追いつく間もなく、屋久島有数の景勝地、白谷雲水峡のトレッキングへ出発した。
登山口から太鼓岩を目指すトレッキングの所要時間は、約5時間。
縄文杉トレッキングよりも時間こそ短いが、その短かい時間で標高1000mまで登るため、アップダウンが激しい。
足場もかなり不安定だったので、正直体感疲労は同じくらいだった。
そして後述するが、この日、しっかりと雨が降った。屋久島の本領発揮である。
雨に打たれながらのトレッキングになったため、常に滑る足元に気を張らねばならず、精神的にも疲れが溜まった。
さて、白谷雲水峡のトレッキングコースだが、個人的には、縄文杉トレッキングよりも景観が美しいと感じた。
特に、白谷川が流れる水場のスポット。苔に覆われた屋久島の森は、とにかく水が映えるのだ。
深緑に染まった岩々の間を縫うように、透き通る川の水が流れていく。その景色の美しさに息を呑んだ。
太鼓岩までの道中、「苔むす森」という場所を通る。
苔むす森は、スタジオジブリ作品”もののけ姫”の舞台のモデルになった場所と言われている。
正直に言うと、屋久島の森は、どこも基本的に苔むしている。
しかし、やはり「苔むす森」という名前を冠するだけあって、苔の美しさがひときわ堪能できる場所だった。
この日は朝から小雨が降っていたため、苔が水滴を含み、きらきらと輝いていた。
まるで”もののけ姫”の世界に迷い込んだかのような、不思議な感覚を味わえる場所だった。
もし道中でヤクシカを見つけることができたら、「シシガミ様!」と言うことを、密かに心に決めていた(残念ながら見つけることは叶わなかった)。
ちなみにヤクシカには出会えなかったが、前日の縄文杉トレッキングで、ヤクザルと遭遇した。
トロッコ道の真ん中に堂々と座るヤクザル。あまりに人間慣れしすぎていて、思わず笑った。
写真を撮っていたら、突然目の前のヤクザルが叫び出し、周囲から別のヤクザルが5、6匹出てきて、取り囲まれるかたちになった。
結局襲われることはなかったが、その瞬間は、本気で「もうここまでか」と思った。怖かった……。
しっかりオチをつけてくれる太鼓岩
凸凹の足場に苦戦しながらも、美しい景観に癒されながら、中間地点の白谷避難小屋まで登ってきた。
途中「くぐり杉」と呼ばれる、幹が二股に分かれていて間を潜れる杉があり、これでもかというくらい潜ったりした。
しかし、ここから突如として雲行きが怪しくなってくる。白谷避難小屋を越えたあたりから雨足が強まり、山頂に近づく頃には土砂降りになった。
こうなってくると、周囲の景観を楽しむどころではない。雨量が一定を超えると、白谷川が増水して、帰れなくなる可能性もある。
「武家杉・公家杉」「かみなりおんじ」など、あらゆる名所杉を足早に通り抜け、一路太鼓岩を目指す。
太鼓岩とは、山の斜面から突き出した巨大な花崗岩。叩くと太鼓のような音が鳴ることから、その名がつけられたようだ。
標高約1000mの場所にあるため、自然の展望台になっており、岩の上に乗って屋久島の森を一望できる。
安全柵が一切設置されていないためとても開放的で、とにかく見晴らしの良い絶景スポットだ。
……とにかく見晴らしが良い絶景スポット、のはずだった。
土砂降りの雨だったので、正直なんとなく予想はついていた。
それでも、前日に目の前で霧が晴れていく縄文杉を目の当たりにしていたので、今回も何か奇跡が起きることを期待していた。
……合成写真?
深い霧で真っ白である。本来であれば緑に覆われた屋久島の森が眼前に広がるはずが、本当に何も見えない。
標高1000mの場所にいるはずなのだが、写真だけ見ると、地上5mと言われても信じてしまいそうである。
雨も強いため、写真撮影もそこそこに退散。ここから地獄の下山が待っているのは、前編と同様である。
思えば前日の縄文杉トレッキング。雨が多い屋久島で天候にも恵まれ、霧に包まれた状態から一転、神々しい姿を現す縄文杉を見ることができた。
あまりに出来過ぎだったのだ。旅はうまくいくことばかりではない。むしろうまくいかなさを楽しむことが、旅の醍醐味のひとつとも言える。
さすが太鼓岩、そのあたりをわかっている。全てがうまくいくわけないと、しっかり旅にオチをつけてくれた。
絶景を拝めなかったのは確かに残念だが、一緒に行った友人と、「太鼓岩に行ったのに真っ白で何が何だかわからなかった」という、一生笑える共通の話題ができた。
それだけで、本当に嬉しい。屋久島旅、最高でした。
トレッキング初心者による必須アイテム紹介
最後に、人生で登山を一度もしたことがなかった私による、屋久島トレッキングに持って行ってよかったアイテム紹介のコーナー。
なお初心者の方であれば、トレッキング道具は島内のレンタルショップ及び宿泊先で借りても良いと思う。
その場合、繁忙期は在庫がなくなる可能性もあるため、早めの予約をおすすめする。
まず、レインウェア。これは必須中の必須である。
100円ショップで買えるような雨ガッパではなく、できれば上下別々の、防水性能を備えた登山用レインウェアを買おう。屋久島の雨は、容赦なくこちらの体温を奪いにくる。
そして、リュック用の防水カバー。こちらも忘れずに準備しよう。
リュックの中に雨水が侵入したら、せっかく持ち込んだお弁当も、その他諸々の持ち物も全て水浸しになってしまう。防水性能を完備したナップザックを買うのもよし。
くわえて、アンダーウェアにもこだわろう。
汗を吸収してくれる吸湿性と、すぐに乾いて身体を冷やさない速乾性、こもった熱を外に逃がしてくれる放熱性に優れたアンダーウェアを選ぶべきだ。
身につけるものは総じて、こだわりすぎるくらいでちょうど良い。ちょっとでもいいものを買おう。
最後に、レジャーシート。これもなにかと重宝する。
道中でご飯を食べたり、荷物を一時的に置いたりするとき、雨で地面が濡れていることの多い屋久島では必需品と言える。
トレッキング中に「あれを持ってきていれば……!」となると、精神的にキツい。もちろん荷物の総重量と相談にはなるが、万全に準備しておくにこしたことはないはず。
皆さんもしっかり持ち物点検して、楽しい屋久島トレッキングを!
◇旅に関するおすすめ記事◇
◇本に関するおすすめ記事◇
◇読書会Podcast「本の海を泳ぐ」配信中◇
◇マシュマロでご意見、ご質問を募集しています◇