体験記事「特別展 ユニバーサルミュージアム さわる!"触"の大博覧会」
コロナ禍のために延期になっていたみんぱく(国立民俗学博物館の特別展「ユニバーサルミュージアム さわる!"触"の大博覧会」を体験してきました。
みんぱくへ行く日を調整中の間は、特別展実行委員長の広瀬先生の解説動画を観て気分を盛り上げます。
それと指を数えて待つ間に、「触って鑑賞するためのレクチャー」なんて記事も書いてみました。
さぁ準備は万端ですよー。
いざ入場、そしてのっけからベタベタ触る
さて、当日になりました。
訪れたときは朝早くで空いていたので、一人きりで最初のコーナーからベタベタと遠慮せず触らせていただきました。
まずは興福寺仏頭レプリカから。社会科教員なので日本史資料集で見かけたことあります。正確なレプリカみたいで、左耳や後頭部の欠けも写真で見たままです。
隣で広瀬先生のレクチャームービーも流れています。
目をつむって触ってみると他の仏像では盛り上がっているはずの額の白毫が凹んでいたり、ほうれい線がなくてツルツルなお肌だったり、内側が意外にザラザラだったりといろいろな発見がありました。
世界地図は意外に凹凸がなく、目をつむって触るとインドあたりまではわかるのですが、アラビア半島から北アフリカは陸地と海(地中海)の違いがわかりませんでした。でもアルプス・ヒマラヤ造山帯や環太平洋造山帯やハワイの盛り上がりはよくわかり、さすが火山帯といった感じです。
隣にあった富士山付近の触地図は、富士山とそれ以外の山地の高さの違いが触ってよくわかりました。
なんと広瀬先生登場!?
そうやっているとなんと他美術館の職員さんを案内する広瀬浩二郎先生が来館。ここぞとばかりにお声をかけると「せっかくなので一緒に回りますか」とのお声をいただきました。
ありがとうございます。よろこんで、ご一緒させていただきました笑。
せっかくなので興福寺仏頭や世界地図についてもどんどん質問していきます。
そして広瀬先生本人を目の前にしながら、広瀬先生の像を触るというなんとも不思議な体験をさせていただきました笑。
せっかくなので像を触った後に広瀬先生と握手をしつつ、右手をじっくり観察させていただきました。実はこの作品以外にも広瀬先生がこっそり?出演されているんですよ。
そしてお経の文字が浮かぶ暗闇の中で耳なし芳一さんとご対面。ネタバレになるので詳しくは言いませんが、隅々まで触ると、あっと驚く仕掛けがありました。
セクション1「彫刻を超克する」
ここではいろいろな彫刻を触れます。普段なかなか彫刻を触ることなんてないと思いますが、見ると触るのとは大違い。触ってみると目で見たイメージだけでわかった気になっていた自分に気づかされます。
日本や世界から集められたハートの石。僕のお気に入りは20番のベトナム芸術大学のもので一番触り心地が良かったです。触り比べてみてください。
こちらの作品は遠目から眺めると蟻塚のように見えますが、近づくと細かい石材が重なっているのに気づきます。広瀬先生によると、映像でみる触ってみたいランキングの上位だそうですが、個人的には触り心地はあんまりでした。
動物の彫刻もあり、ガマガエルが背中のブツブツがリアルで個人的におすすめです。写真がブレて上手く撮れていませんでしたが…。
セクション2「風景にさわる」
風景に触るということで、陶器製の信楽の触地図や、信楽の射真ワークショップで作成された、窯元付近を散策中に気になったものに粘土を押し当てて型取りしたものを元にした信楽射真作品などが並びます。
周りにはたぬきなんかの信楽焼も並びます。
個人的に気になったのは街中の地面や壁をこすりだし(フロッタージュ)した作品。凹凸はそこまでないのですが、梅田の真崎界隈なんて知ってる場所で、現場の音が流れるものもありすごく惹かれました。
セクション3「アートで対話を拓く」
対話の通り、複数で感想を伝え合うような作品が展示されています。
いろんな立体コピーを触ったり(A1サイズの立体コピーなんて初めて触りました)、左右の手を紙袋の中に入れてそれぞれの小さな立体を同時に触ったり、「私はこれが一番気になった」「これエリマキトカゲのエリみたい」「手のひらのなかにジャストフィットする」そんな対話が生まれていきます(一人の見学じゃなくてよかった笑)。
上からぶら下がった2千枚もの布の中を歩く作品も面白かった。自分が進む中で手や顔の触覚や布の擦れる音も含めて文字通り体感できるアート。気に入って何度も突入しました笑。
肛門の位置から動物の内部に手を突っ込む作品(しかも触り心地かすごいんです)や、木製や金属製の帽子やヘルメットを触ったり被ったりする作品もあり、さらに対話も広がります(写真も撮ってもらいました)。
そしてこの頃になると、最初は触るのを躊躇ったり、指先で少しだけ触って終わりだった見学者の方々が積極的に触り、口々に自分の感想を伝えるようになってきました。
広瀬先生ともその話をして、布の作品を通してみなさん触るモードになっていくのだそうです。そんな変化も面白いですね。
触手話のように箱の中にある手の形(指文字)を触る作品は、最後の6つ目の中身が謎を呼び、論争になりました。
個人的には指文字の表記というか右にずらすことを表しているのだと思いますが…気になる人はコメントで質問してみてください。
セクション4「歴史にさわる」
2階へ上がり、まずはとっても気になっていた入る古墳へ。いわゆる前方後円墳の形に凹んでいる中に靴を脱いで全身で入りこむという作品です。
床暖房が入っていて「まるで砂湯みたい」と言ってる方もいました。脚を折り曲げるといい感じの位置になりました。大きすぎて全体像を感じられない古墳を体感できるようにと工夫された作品なのだそうです。
そしてみんぱくミュージアムショップでは、舌で古墳を体感できる古墳キャンディも販売されているんです。もちろん後で食べました。ちなみに選んだのは応神陵古墳です。
また以前読んだ広瀬先生の本にあった、触るために製作されたふれ愛観音像もありました。みなさんがよく触った(つまりよくなって欲しいと願いを込めた)のであろう眼や脚や肩は表面の金色が剥げてきています。
裏面もじっくり触らせていただきました。このふれ愛観音像は、仏は人を見下ろすのではなく同じ高さにあるべきだということで低くつくられているのだそうです。
セクション5「音にさわる」
個人的に思い入れのあるのが盲学校の生徒たちがつくった笛吹ボトルです。懐かしい映像と共に甦る記憶と共に一つひとつのボトルを手に取りました。実はボトルの中に1つ、広瀬先生の作品もあるんですよ。
他にも僕の生まれる前(昭和40年代)の録音された音が流れる作品(個人的に寛永寺の除夜の鐘がお腹に響いてよかったです)や、ポクポク叩いて音が鳴る楽器のような陶器の作品、スポーツの音が流れる作品(男子と女子でバスケットボールのパスやドリブルの音が違うんです)などもありました。
セクション6「見てわかること、さわってわかること」
さて、最後のセクションです。
いろいろな作品や触る絵本などがありますが、まずは触れる写真から。何度も試行錯誤し、触図の厚みを工夫されたそうです。よくよく触ると何段階かの厚みの違いに気づくはずです。
僕は個人的にクロード・モネのファンなのですが、モネの作品(レプリカですが)をこの手で触れる日が来るなんて…ものすごく個人的な話ですが、油絵の質感を感じた、大変感慨深いひと時でした。
有名な作品を立体で表現する、しかもそれを触れるのはとっても面白い。
そしてフランスの触る広告はいろんな仕掛けがあってうちの子どもたちも喜びそう。
奥にあった触る絵本コーナーもじっくり体験させてもらいました。『さわる迷路』にハマっているうちの子たちはこれも楽しめそうです。
気づけばもう2時間も経っていました。これにて体験終了です。
まとめ
とても楽しい時間を過ごすことができました。
そして音声ガイドならぬ生広瀬先生ガイドのお陰でより一層気づきを深めることができました。
また一緒に回ってくださった方々のお陰で触る体験だけでなく、そこで得た気づきを話して共有し、また深めていくことができました。
こんなご縁があるなんて…本当にありがとうございました。
さて、触ることに関していろいろ語りたいことがないではないのですが、とにかく触るって楽しいなと感じた時間でした。僕が触る世界の楽しさを知れたのは、盲学校やフロアバレーボールの全盲プレイヤーの経験や広瀬先生の本との出会いがあったからだと思いますが、一緒に回っていく方々がどんどん積極的に触るようになり、触る世界の楽しさに気づいていく様子を見るのも嬉しく感じている自分がいました。
小難しいことは言いません。ただこの特別展ユニバーサルミュージアムは、触る世界へと導いてくれる素敵な場所です。もちろんその魅力の全てを紹介できませんし、僕の拙い言葉では感じたこと全てを伝えることもできません。でも、とっても楽しいです。
そんな触る世界をぜひ体験してみてください。
この拙い記事が、みなさんを触る世界へと案内するための一助になれば幸いです。
表紙の画像はみんぱくホームページ上のユニバーサルミュージアムのチラシより引用しました。