特別支援学校からの発信「課題を取り組みやすいように分けて考える課題分析」
今回は、個別の教育支援計画や個別の指導計画での目標設定にも活用できる課題分析と、課題に取り組む手順を考える順行・逆行について紹介していきたいと思います。
課題分析ってなんだ?
課題分析とは、「活動を手順などの細かな行動単位に分けること」です。このままでは、なにがなにやらわかりにくいので、例をいくつか紹介しましょう。
「手洗いをする」と一口に言いますが、課題分析し、細かく分けることこうです。
(画像はぱくたそより)
普段意識していないと思いますが、手洗いってこんなに細かい段階に分けることができます。これが課題分析です。
それ以外にも例を紹介します。
「(制服から体操服へ)着替える」なら、
(画像は椅子王国より)
「登校後、朝の用意をする」なら、
(画像は朝日新聞より)
「カップヌードルを食べる」なら、
(画像はぱくたそより)
なんとなく課題分析がわかってきたでしょうか?
こうやって課題分析をすることで、どんなことをどんな手順でするのが具体的にわかりますし、見通しを持って取り組めます。課題ができていない場合は、どの手順でつまづいているのかもよくわかります。
また子どもの課題だけではありません。
旅行に行く、料理をする、掃除をする、研究授業をするなど、大きな取り組みも課題分析することで、大人の僕たちも見通しを持って取り組むことができるようになるのです。
さらに細かく分析できます
この課題分析は子どもの実態に合わせてさらに細かく分けることもできます。
例えば、「着替え」の課題分析を見てください。ここでは、「1 制服を脱ぐ」としていますが、これをさらに分析することができます。
さらに、この中の「ボタンをはずす」も細かく分析できます。
(画像はNHKテキストVIEWより)
さらに必要ならば「ボタンを持つ」ことの分析もやろうと思えばできます。つまり「つまむ」動作を分析することになります。
それ以外にも着替えに関連して、「靴下を履く」なら、
(画像はRUNNALより)
「上着のファスナーを閉める」なら、
(画像はくらしのマーケットより)
こんな感じで、子どもの実態に合わせて細かく課題分析していくことができるんです。
手順をわかりやすく示そう
課題分析をしていくと、子どもたちは何ができていて、何につまづいているのかが見えてきます。
中には、こんなふうに課題分析した手順表があるだけで、見通しを持ってひとりでスムーズに取り組めるようになる子どもたちもたくさんいます。
まずはどのような手順でするのかを、本人とひとつひとつ丁寧に確認し、手順をわかりやすく示してみてください。
(画像はみさきのイラスト素材より)
(画像は働く主婦の独り言より)
どの部分から取りかかるのか?
課題分析をしてみると、子どもたちがつまずいているのがどこかが見えてくると思います。
そこから練習に取り組むときに、前から順番に進めていく方法(順行型)と最後から進めていく方法(逆行型)とがあります。
僕のおすすめは逆行型なのですが、どういうことなのか説明します。
例えば、「靴下を履く」なら、
という段取りがあり、1から5まで前から順番に進めていくのが順行型です。
でも靴下を履く手順で一番難しいのって、「4 口ゴム部分をかかとまで引っ張る」だと思うんです。かかとのでっぱりを越えるのって大変ですもんね。
なので、4までは支援者が手伝いながらあるいは全部してしまって、最後の「5 すねまで口ゴム部分を引き上げる」から練習を始めるのが逆行型です。これだとハードルの低い部分から始められますし、子どもが自分でやって完成なので達成感も得られます。できた成功体験から、次への意欲につながるかもしれません。
(画像はひろのほいくえんより)
僕自身も全盲の子たちと上着のファスナーを閉める練習のときにこの逆行型で練習したことがあります。
ファスナーで難しいのは、「2 右手で持った金具(ファスナー)を左手の金具(スライダー)に入れる」だったので、まずは支援者と一緒に3まで取り組み、子どもがジジジッとスライダーを引き上げるのを10回したら達成!というところからスタートしました。徐々に「3 右手で持った金具を下に引っ張りなが、左手で金具(スライダー)を引き上げる」にも取り組み始め(ここで金具を持ちかえるのと右指で金具を下に引っ張るのが難しいんです)、そうこうしているうちに、2の感覚を子どもたちがつかみ始め、すべて一人でできるようになりました。
それ以外でも、例えば部屋の片づけをしない子に対して、イチからスタートするのではなく、最後の1つのおもちゃを片付けるところからスタートして、片付ける→「部屋がきれいになって気持ちいいね」と片付けの達成感を共有する→次は最後の2つをしてもらう…のようにしてみると、片付けの意欲が出てくるかもしれませんよ。
できない部分は努力だけでなく工夫も
またできない部分を練習してできるようになっていくのも大切なことですが、そうやって努力する以外にわかりやすい環境を整えたり、道具を工夫するという視点も大切にしてもらえたらなと思います。
僕自身はよくその子の好きなものを使います。些細なことかもしれませんが、ファスナーの練習のときはその子の好きな英語で回数をカウントしました。好きなキャラクターのグッズを使ったり、その子の好きなものと関連する内容を考えたりしてみてると、子どもたちの意欲や熱意が変わってくるかもしれません。
まとめ
課題分析の方法と順行・逆行という手順についての紹介どうでしたか。僕自身も自分でやることが多くなってきたときや疲れたときなんかに、一旦手を止めて課題分析でやる手順を紙に書き出して整理します。
そして課題分析をすると子どもたちがつまずいているポイントがよくわかるのが利点です。それは具体的な目標やその手立てを考えることにも繋がります。
とっても便利な課題分析、みなさんのやることにも子どもたちの取り組みにもぜひ活用してみてください。
参考にしたサイト
3.ザ・プロンプト「応用行動分析(ABA)とは – 自閉症の療育手法」
4.鹿児島県総合教育センター 特別支援教育第176号「課題分析を活用した個別の指導計画に基づく指導」
表紙の画像はJITANDAより引用しました。