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点字ブロック まとめ
3月18日は点字ブロックの日ということで、日本の岡山県生まれの点字ブロックについて紹介します。
点字ブロックは、正式名称を「視覚障害者誘導用ブロック」といいます。視覚障害者が足裏の触感覚で認識できるよう、突起を表面につけたもので、視覚障害者を安全に誘導するために地面や床面に敷設されているブロック(プレート)のことです。
1 点字ブロックの歴史
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点字ブロック発祥の地の石碑
(画像はJapaaan magazineより)
点字ブロックは日本の岡山県で誕生しました。
安全交通試験研究センターの初代理事長である三宅精一氏が、友人の日本ライトハウス理事長・岩橋英行氏から助言を得て、視覚障害者の安全かつ快適な移動を支援するための設備として、 1965(昭和40)年に発案・発明し「点字ブロック」と名付けました。1967(昭和42)年3月18日、岡山県立岡山盲学校に近い旧国道2号の原尾島交差点(現:国道250号原尾島交差点周辺)の横断歩道周辺に計230枚が世界で初めて敷設されます。
2010年には、点字ブロック発祥の地として同交差点に記念の石碑が建てられています。
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三宅精一氏の写真
(画像はWikipediaより)
点字ブロックは岡山・大阪・京都などから徐々に広まっていきましたが、大阪府立盲学校(当時)の教職員からの陳情で1970年に国鉄駅として初めて阪和線我孫子町駅のプラットホームに敷設されます。東京都道路局も導入を決定したことで日本全国に普及していきます。
この頃からブロックは弱視者が見やすいよう黄色が多く用いられるようになっていきました。
当初、点字ブロックは点状の1種類だけでしたが、1974年に旧建設省建設技術研究所の補助を受けて「道路における盲人の歩行誘導システム等に関する研究委員会」が設置され、線状のブロックが新たに考案されます。
しかし、各地域で形状の異なる点字ブロックが設置されたため(1997年には線状と点状を合わせて44種類もあったそうです)、非常に紛らわしく2001年に日本工業規格(JIS T 9251)として規格化されました。
また、点字ブロックはその有用性から世界の多くの国々で普及しますが、国ごとに形状や敷設方法が異なることが問題となり2012年に初めての国際規格ISO23599が発行されています。
2 点字ブロックの種類と特徴
点字ブロックには大まかに3つの種類があります。それ以外の点字ブロックについても紹介します。
点字ブロックは、JIS T9251(視覚障害者誘導用ブロック等の突起の形状・寸法及びその配列に関する規定)によって規格が決まっています。一変は30センチ以上の正方形で、突起の高さは足裏や白杖で識別できるよう5ミリと決まっています。
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(画像は北海道ロードサービスより)
1.誘導(線状)ブロック
「誘導ブロック」は、進行方向を示すブロックです。線が並んだ形状をしているため、「線状ブロック」とも呼ばれています。これは、視覚障害者がブロックの突起を足裏、あるいは白杖で確認しながら突起の方向にしたがって進むことができるように設置されています。
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(画像は日本盲人会連合より)
2.警告(点状)ブロック
「警告ブロック」は、危険箇所や誘導対象施設等の位置を示すブロックです。点が並んでいる形状をしているため、「点状ブロック」とも呼ばれています。これは、文字通り注意すべき位置を示すブロックです。階段前、横断歩道前、誘導ブロックが交差する分岐点、案内板の前、障害物の前、駅のホームの端等に設置されています。
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(画像は日本盲人会連合より)
3.駅ホームの点字ブロック
日本の駅のホームにはかつて白線が引かれているだけでした。駅のホームは視覚障がい者にとって「欄干(てすり)のない橋」と呼ばれ、非常に危険なのです。
そこで、現在多くのホームには、警告ブロックに一本の誘導ブロック(内方線)がついた点字ブロック(内方線付き点状ブロック)が設置されています。この誘導ブロックが内側にあり、電車の方に飛び出したりホームから転落しないよう注意する目印になっています。
この点字ブロックは、「鉄軌道駅プラットホーム縁端警告用内方表示ブロック」と呼ばれ、ガイドライン化ののち、2014年のJIS T 9251改訂で盛り込まれています。
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(画像は東洋経済ONLINEより)
4.その他の点字ブロック
道幅が狭く、点字ブロックを敷設できない場合に、半分(縦線2本)や縦線1本のみの誘導(線状)ブロックが使われる場合もあります。
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(画像はWikipediaより)
横断歩道に道路と白線の色に塗られた警告(点字)ブロックです。エスコートゾーン(横断歩道点字ライン)と呼ばれます。
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(画像はWikipediaより)
夜間でも見やすいようLEDライトが埋め込まれた点字ブロックもあります。
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(画像はWikipediaより)
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(画像は京都工芸繊維大学より)
和式トイレや男性用小便器の足を置く位置の目印として、小さな警告ブロックが置かれている場合もあります。盲学校や福祉センターなどで見たことがありますが、それ以外での設置例はあまりないようです。
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(画像はトイレ探索日記 by 東府中の人より)
日本点字図書館わくわく用具ショップや日本ライトハウス情報文化センターなどでは、避難所などで使用される簡易に設置と取り外しができる点字ブロックや細長いパームラインという商品も販売されています。
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(画像は日本ライトハウス情報文化センターより)
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(画像はわくわく用具ショップより)
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(画像は日本ライトハウス情報文化センターより)
5.歩導くん(視覚障害者誘導ソフトマット)
車椅子の方や他の障がい者の方、高齢者、台車、ベビーカーの通行など、公共性のある施設にも点字ブロックの代わりに設置できるように開発された視覚障害誘導ソフトマットです。
凹凸のないゴム製で簡単に取り外しができ、しかも床にしっかりと貼りつくので簡単にはズレません。
大きさや色のバリエーションがあります。
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(画像はトーワ株式会社より)
6.点字ブロックの販売
点字ブロック公式WEBサイトにて販売されています。ブロック型、タイル型、のりつきタイル型などいろいろな種類があります。
3 点字ブロックの色
点字ブロックの黄色は弱視の方が地面や床と区別して見えやすいようにと配慮されたものです。
デザインで床のタイルの色と紛れてしまう点字ブロックも多いですが、弱視の方は道しるべがなくなり困ってしまいます。
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(画像は点字楽譜&点字アート「ブレイルフレンド(BrailleFriend)」のブログより)
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(画像はtogetterより)
4 点字ブロックの困った敷設例
残念ながら、視覚障がいユーザーのことをあまり考えていないんじゃないかという点字ブロックも見かけます。
こちらはコンビニの駐車場ですが、駐車スペースを避けて非常に大回りに敷設されています。
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(画像はNAVERまとめより)
地下鉄の駅ホームですが、点字ブロック上に柱が出ていてぶつかりそうです。
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(画像はNAVERまとめより)
なぜかS字カーブになっている点字ブロックもありました。
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(画像はNAVERまとめより)
こちらはなぜか2本の点字ブロックが並行しているものです。
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(画像はTwitter @AOPIKUJPG510より)
駅のホームの点字ブロック上に柱が…これは危険ですね。
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(画像はTwitter@syuwanurseより)
5 世界の点字ブロック
日本発の点字ブロックは世界にも広がり、現在150カ国以上で使用されているそうです(点字毎日より)。海外の点字ブロックをいくつか紹介します。ちなみに英語で点字ブロックは、tactile tile(タクティル タイル)、点字ブロックの舗装はtactile paving(タクティル ペイビング)というそうです(tactileは「触知」、pavingは「舗装」という意味です)。
1.オーストラリア
色はグレーで床とのコントラストが低くわかりにくいですね。危険な敷設例もあるようです。
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(画像はイソムラ式より)
メルボルンの点字ブロックは信号によって色が変わるものがあるそうです。
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(画像はTwitter@sakamoto_entameより)
2.デンマーク
景観に配慮した設置例が多いようですが、弱視の方は見にくいかもしれません。
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(画像はイソムラ式より)
3.オランダ
日本の点字ブロックとよく似た、点状と線状のブロックがあるようです。
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(画像はイソムラ式より)
4.台湾
駅などの公共施設には設置されているそうですが、街中ではほとんど見かけなかったようです。
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(画像はイソムラ式より)
5.アメリカ合衆国(サンフランシスコ)
こちらも台湾と同じで、街中では見かけなかったようです。
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(画像はイソムラ式より)
6.イタリア
ヴェネチアのローマ広場。白色の点字ブロックと細いパームラインのような点字ブロックですね。
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(画像はTwitter@uroburo96より)
またヴェネツィア本島のターミナルとその付近のほかでは、橋やヴァポレット乗り場の直前に申し訳程度敷かれていることが、稀にあるそうです。
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(画像はTwitter@uroburo96より)
パドヴァでの点字ブロックです。色は赤や黒など統一されていない様子です。
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(画像はTwitter@uroburo96より)
7.インドネシア
インドネシアの点字ブロックは日本同様黄色のものがあるようです。上に屋台停まってますけど…。
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(画像はTwitter@uroburo96より)
8.エジプト
初めて日本に渡ったエジプトのNGOが街のあちこちで見かけた視覚障害者向けのさまざまな工夫に感銘を受け、日本の事例をエジプトに持ち帰り、日本の点字ブロックを参考に設計→製造→実現したそうです。
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(画像はTwitter@gyosha_PTより)
参考にさせてもらったサイト、イソムラ式さんや後で紹介する本『点字ブロック 日本発 視覚障害者が世界を安全に歩くために(徳田克己/水野智美)』には、これら以外にも一風変わった海外の点字ブロックが掲載されています。また点字ブロックの日に#点字ブロックで流れてきたツイートも参考にさせていただきました。
6 未来の点字ブロック 「ICTを活用した歩行補助システム」
最近はICT化が進み、視覚障がい者の歩行をサポートするGPSを活用した歩行案内やAIなどの活用の研究が進んでいます。
1.VIBLO by &HAND(ヴィブロ・バイ・アンドハンド)
点字ブロックに発信機(LINE Beacon)を内蔵したVIBLO BLOCK (ヴィブロ・ブロック)と、スマートフォンのLINEアプリ、スマートスピーカーClova、ワイヤレスオープンイヤーステレオヘッドセットXperia Ear Duoを使用し、視覚障がい者の移動を声でサポートするサービスです。一般社団法人PLAYERSと株式会社WHITEがプロトタイプを開発中です。
ルート上のVIBLO BLOCKに近づくとスポット情報がLINEに届くそうです。また家族や支援者がスマートスピーカーで現在地を確認でき、ルートを外れてしまったときやトラブルが起きたときは、LINEのビデオ通話昨日と連携し、目の代わりになってサポートできます。
詳細はこちらのサービスページで確認してください。
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(画像はPRTIMESより)
2.視覚障がい者向け歩行サポートシステム
点字ブロックに黒い丸や三角のシールを貼り、それをカメラでAIが読み取り、骨伝導ヘッドフォンからの音声でその場に適した道案内をするという研究に石川県金沢市と金沢工業大学が取り組んでいます。
点字ブロック(警告ブロック)の突起に黒い丸シールが付いていて、その組み合わせ(3000万パターンもあるそうです)に合わせた音声を流すそうです。また三角のシールで方向を読み取ります。
金沢で行われた実証実験では、JR金沢駅での方から来た場合は「左手に北陸鉄道の改札口があります」、逆に北陸鉄道側から来た場合は「右手側がJRです」などと方向から判断して案内してくれるそうです。
詳細はこちらの記事で確認してください。
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(画像はFNNPRIMEより)
3.ブロックボイス
日本道路株式会社が開発した、感圧センサの付いた点字ブロック(警告ブロック)の上に人が乗ると、ブロック近傍のスピーカーから案内音声が流れる仕組みです。
スマートフォンなどの機器は必要なく、シンプルなシステムなのでメンテナンスの負担も大きくありません。
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(画像は音声案内システムの案内所より)
4.BRaVS Libraryを活用したデジタルマップ
日本ユニシスと筑波技術大学との共同実験で、スマートフォンのアプリを使って点字ブロックを撮影することで、デジタルマップ上に点字ブロックを自動登録するシステムです。
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(画像はマイナビニュースより)
7 点字ブロックのゆるキャラ
1.マモちゃん
点字ブロックを守るゆるキャラのマモちゃん。点字ブロックの大切さを小さい子に知ってもらうために誕生したそうです。よく見るとスカートの裾に点字ブロックがデザインされています。日々啓発活動などに取り組んでいるようです。ゆるキャラグランプリにも出場しているようです。
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(画像はFacebook点字ブロックを守る「マモちゃん基金」より)
まもちゃんぬいぐるみも販売中です。
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(画像はFacebook点字ブロックを守る「マモちゃん基金」より)
2.点字ブロッくん
茨城県立盲学校のゆるキャラ、点字ブロッくんです。イラストはリアルな感じですが、着ぐるみは可愛らしい?感じですかね。狂気を感じるデザインが個人的にお気に入りです。
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(画像は茨城県立盲学校ホームページより)
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(画像はMt.KAZENOKAMIのブログより)
3.てんぶろう
点字ブロックの番犬で、白杖の天使はくたんの一番の友だちだそうです。点字ブロックの上や周りに危険はないか?といつも見守っているそうです。ストラップも販売しているそうです。
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(画像はTwitter @hakutan_strapより)
6 点字ブロックのグッズ・本
神奈川県にあるつばさの会では、点字と点字ブロック柄のマスキングテープを販売しています。点字ブロックは誘導ブロックの途中に警告ブロックが出てきます。
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(画像はHUFFPOSTより)
こちらは主にキーホルダー屋さんというところが販売している、全て警告ブロックになっているタイプのマスキングテープです。
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(画像はBOOTHより)
こちらは岡山生まれのオカモトラボさんが販売しているゴム製の点字ブロック・コースターです。amazon.co.jpで販売中です。
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(画像はオカモトラボより)
グッズではありませんが、ネット上で点字ブロックのネイルも発見しました!
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(画像はPinterestより)
『点字ブロック 日本発 視覚障害者が世界を安全に歩くために(徳田克己/水野智美)』はその名の通り、点字ブロックについての本です。世界各国(北朝鮮の隠し撮り写真も笑)の点字ブロックや高齢者や車椅子にも配慮した設置のルールなどが記載されています。
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(画像はamazon.co.jpより)
点字ブロックのキーホルダも発見しました。誘導ブロックと警告ブログの2種類があり、それぞれ裏には「すすめ」と「とまれ」と書いてあります。
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(画像はminneより)
NPO法人六星ウイズでも、点字ブロックキーホルダーが販売されていました。こちらも誘導ブロックと警告ブロックの2種類があります。
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(画像はNPO法人六星ウイズより)
岡山ライトハウスのワークランド虹では、点字ブロック煎餅なるものの販売取次をされているそうです。岡山市のふるさと納税の返礼品にもなっていました。さとふるで確認できます。
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(画像は記者撮影より)
8 他の人の障がいになる
点字ブロックは視覚障がいの方にとって必要なものです。しかし、高齢者など足腰の弱い人が突起につまずいてしまったり、車椅子やベビーカーなどの障害になったり、雨天時や氷結時に滑りやすくなったりするなどの問題点も指摘されており、改善などが望まれています。
敷設の際は、車椅子やベビーカーが利用するスロープには設置しない(視覚障がいの方はどれくらい登ったのかがわかりにくいスロープが苦手な方が多い)、エレベーターは乗り降りするドアの前ではなくボタンの前まで誘導するよう敷設する(乗り降りする人が通りやすい、ドアの前だとどこにボタンがあるのかが視覚障がいの方にわかりにくい)など工夫することができます。
それらの適切な敷設例は『点字ブロック 日本発 視覚障害者が世界を安全に歩くために(徳田克己/水野智美)』に掲載されています。
また点字ブロックの種類と特徴でもしょうかいしましたが、段差のない視覚障害者歩行誘導ソフトマットの歩導くんという商品もあります。
羽田空港では、誰もが使いやすいユニバーサルデザインということで、ターミナル内の点字ブロック敷設を少なくして案内所まで繋げ、そこからはコンシェルジュや航空会社スタッフが案内するようにされているそうです。エレベーターやトイレ前などは音声で案内しています。
また建物内では床とどっちの素材を変える(床をクッションにし、突起はゴムや金属など硬いものにする)ことで識別しやすくし、車椅子や高齢者も安全にた通れるよう突起の高さを1.5ミリにする、色は黄色でなくても床とのコントラストがはっきりしてわかりやすい色にするなどデザインで解決しようとする企業もあるようです。
9 点字ブロック上の障害物
点字ブロックの上に、立ち止まって話をしたり、荷物を置いたり、駐車・駐輪されているケースがあります。
視覚障がいの方がぶつかったり、自転車を倒したり、自転車のタイヤに刺さった白杖を折ったりするトラブルも日常茶飯事です。相手がわからなかったり、逃げたりして泣き寝入りすることがほとんどです。
毎年3月18日は点字ブロックの日で、多くの盲学校や視覚障がい者関係団体が啓発活動をしています。
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(画像はTwitter @moudoukenLkunより)
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(画像はFacebook点字ブロックを守る「マモちゃん基金」より)
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(画像は茨城県立盲学校ホームページより)
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(画像はTwitter @tattumiiiiより)
キャンペーンでこんな煎餅を配られていることもあるそうです。
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(画像はTwitter@higdshiより)
10 点字ブロックの上を歩いてみよう
点字ブロックの上を目をつむって歩いてみましょう。試してみると真っ直ぐ進んでいるのかどうか不安になると思います。
片足だけ点字ブロックに乗せると右と左の足裏の感覚で違いを把握し、点字ブロックに沿って真っ直ぐ歩けますし、はみ出た方の足が警告ブロックをすぐに確認してくれます。
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(画像は著者撮影より)
使う立場のことをあまり考えていないような敷設例もあります。実際に目をつむって試してみるのも大事なのではないでしょうか。
以上で点字ブロックの紹介は終わりです。またいろいろと発見したら随時更新していきます。
参考にしたサイト
①日本盲人会連合ホームページ「点字ブロックについて」
② Japaaan magazine『日本人の偉大な発明「点字ブロック」は友達の為に自分のお金を使って世界で初めて開発された』
③東洋経済ONLINE『視覚障害者にとって駅ホームは危険だらけだ 見える人にはわからない問題や不安』
④Wikipedia 視覚障害誘導用ブロック
⑤Wikipedia 三宅精一
⑥視覚障害者誘導用ブロック(点字ブロック)の適切な設置のためのガイドブック-間違いやすい設置例を中心に- 日本交通安全学会
⑦音声案内システムの案内
⑧交通安全試験研究センター
⑨点字ブロック公式WEBサイト[](https://isoamu.exblog.jp/8187622/)
10イソムラ式
表紙の画像は、2019年3月18日にGoogleのトップページを飾っていたGoogle Doodleのものです。AXIS Web Magazineの記事より引用しました。