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知的障がいの方への選挙のサポート

今日は衆議院選挙と国民審査の日ですね。

以前に視覚障がいの方の選挙について記事にまとめました。

Xで知的障がいの方の投票についてのヘラルボニーさんのポストを拝見したので、どのようなサポートがあるのかを調べてまとめてみました。


まずは選挙の流れを知ろう

NHKみんなの選挙にはわかりやすい言葉で、ルビつき、音声読み上げにも対応しているわかりやすくつたえる「選挙の投票のしかた」が紹介されています。

狛江市手をつなぐ親の会が東京都狛江市や狛江市福祉サービス等連絡協議会の各事務所・作業所等と協働で作成した、知的障害のある方への投票支援に関する動画もあります。

盛岡市では「知的障がい者の家族や支援者のための投票支援ガイドブック」が作成されています。

枚方市では、知的障害者の投票をサポートするため、選挙の概要や投票の手順を映像でわかりやすく解説したDVDを貸出ししているそうです。

これら以外にも、各自治体で投票の流れについてわかりやすく解説した冊子や動画が作成されています。投票の流れを知るときの参考になるかと思います。



あとで紹介する係の人によるサポートを受けるには、入場券を渡す前にいる「相談係」に声をかけます。

冒頭で紹介したヘラルボニー「#CARE VOTEプロジェクト特設サイト」では、投票所に持っていける「やさしい投票ガイド」が公開されています。

また「やさしい投票ガイド」の経緯についてnote記事でもまとめられています。

投票の際のサポート

1.投票所での付き添い

(画像はNHKみんなの選挙より)

知的障がいある方の中には「慣れない場所に行くということがまず大変だ」という方もいます。

投票所は慣れている場所とは限りません。1人で投票所の中を移動することには大きな不安がともなうかもしれません。

そんなときは、家族や介助をする人といっしょに投票所の中に入ることができます。僕自身もガイドヘルパーをしていたときに、車椅子の方と一緒に投票所へ行ったことがあります。

また投票所では、係の人に付きそいや手助けをたのむことができます。

「わかりやすいことばで説明してほしい」「ゆっくり話しかけてほしい」などの希望がある場合は、係の人に伝えれば大丈夫です。

(画像はNHKみんなの選挙より)

どこまで付き添いができるのかは、その投票所の責任者(「投票管理者」といいます)が、投票する人それぞれの状況に応じて個別に判断することになっているそうです。公平な選挙のために、家族や介助する人と離れることもあります。

投票所では「誰に投票したのか、どの政党に投票したのか」がわからないよう、投票した人の秘密が守られなければなりません。

また投票にほかの人が干渉するおそれを避けることが基本となります。

そうしたことを踏まえて、どこまで付きそいが認められるかは、その投票所の責任者(「投票管理者」といいます)が、投票する人それぞれの状況に応じて個別に判断することになります。

NHKみんなの選挙より

また人混みが不安なとときは、期日前投票ができます。役所のほかに、ショッピングセンターなどで投票できることもあります。

(画像はNHKみんなの投票より)

2.係の人に頼めるサポート

投票のしかたがわからなくても、係の人に聞けばどうやって投票すればいいのか教えてくれます。

自分で投票用紙に書くのはむずかしいという人は、あなたが投票したい人や政党の名前などを言ったり指さしたりすれば、係の人に代わりに書いてくれます(代理投票)。

(画像はNHKみんなの選挙より)

字を読むのが難しい人は、お願いすれば、あなたが投票したい人や政党の名前などを係の人が代わりに読んでくれます。

それ以外に「やさしい投票ガイド」にあるようなコミュニケーションボードや札幌市や静岡県永泉町の「選挙支援カード」などを持っていき、困ったことや助けてほしいこと伝えることもできます。コミュニケーションボードが投票所に置いてある自治体もあります。

(画像はヘラルボニー#CARE VOTEより)

(画像は総務省より)

(画像は札幌市より)

(画像は総務省より)

3.メモなどの持ち込み

投票にあたっては、自分で用意した候補者に関するメモなどを持ってきてもよいとされています。

実際に意思表示用の候補者一覧を作成、持参し、代筆を依頼したというポストもありました。

選挙のこうなったらいいな

1.投票所の手順や見取り図を掲載する

実際に知的障がいのある息子さんと投票にいかれた方の声として、投票所の手順や見取り図があれば、見通しがあると心構えしやすく、安心して参加できる方も増えるだろうなという意見がありました。

2.コミュニケーションボードや投票支援カードの設置を増やす

係の人にたのめるサポートで、コミュニケーションボードや投票支援カードについて紹介しました。総務省のサイトでは、取り組んでいる自治体の例が掲載されていますが、まだまだ少ないようです。これらの取り組みがもっと広がればなぁと思います。

またコミュニケーションボードの前に「お手伝いが必要ですか?」の確認ボードがあればという声もありました。

3.子どもたちへの主権者教育を充実させる

僕自身は知的障がいの中でも軽度といわれる子たちに対して、授業の中で選挙について伝えてきました。ただ支援学校にいる全員にできているかというとまだまだです。

投票には、選挙についての知識だけでなく、選ぶ、伝えるをはじめとした様々なスキルが必要になります。それはキャリア教育と同じように小学部、中学部、高等部と計画的に段階的に取り組んでいかないといけません。もちろんその子に合わせた支援や配慮を検討していくことも必要です。

この記事で紹介したサポートも子どもたちに伝えていく必要があります。

今回調べていく中で、狛江市が作成した知的・発達障がい者のための「わかりやすい主権者教育の手引き」という冊子が参考になりそうです。

4.わかりやすい言葉で情報を発信してほしい

立候補者の主張を知るために役立つ選挙公報。でも、小さい文字がたくさん並び、難しい表現もある、漢字にはルビはありません。

法律の制限のため、選挙管理委員会などがわかりやすく要約して伝えるということはできません(それ自体が選挙の公平さを損なう可能性があるからです)。

調べてみると札幌市長選挙で手をつなぐ育成会がルビつきのわかりやすい選挙公報を作成した例があるそうです。

僕自身も選挙についての授業をした際に、実際に住んでいる地区の選挙公報を生徒たちと一緒に見てみましたが…漢字や難しい言葉のため、自分で内容を理解するのが難しい子はいます。

要約やわかりやすい言葉に置き換えるというのも難しく面はたくさんあります。ですが、調べてみると、公約をわかりやすくまとめたり、実際に候補者全員の演説を聞きにいくなど知的障がいのある方の投票に向けて工夫されている方々がたくさんいらっしゃいました。

まとめ

冒頭のポストを見てから調べてみると、投票支援カードやメモなどの持参など自分も知らなかったものがあり勉強になりました。

また自治体による取り組みの差や、わかりやすい選挙情報の発信などこれからの課題もわかりました。

わかりやすい選挙情報については、難しい面もあります。わかりやすくするということは、本来の意図を変えたり、恣意的なバイアスがかかったりする可能性があることです。わかりやすい言葉では伝わりにくい微妙な感覚やニュアンスもあることでしょう。

ただ今回の調べていくと、立候補者に知的障がいのある方が直接話をする中で、立候補者自身がわかりやすく伝えてくれたというポストを見つけました。

立候補者からもわかりやすい言葉で伝える工夫をする余地もあるのかなと思います。

そんなこれからの選挙のあり方を考えていくきっかけになればと思い、いろんな情報をまとめてみました。

何かのお役に立てば幸いです。


参考にしたサイト

1.NHKみんなの選挙「知的障害のある方の投票について解説」

2.総務省「障害のある方に対する投票所での対応例について」

3.総務省「知的障害者のための投票環境の整備の推進について 〜行政改善推進会議の意見を踏まえ、県・市町村選挙管理委員会に参考連絡〜」

4.立命館大学生存学研究所「「権利だからどうぞ」で済ませられない話——知的障害者と投票」

5.『知的障害者に対する投票支援のルーツを探る ― 滝乃川学園元職員らの聴き取りから―(堀 川 諭)』

6.『知的・発達障害成人の選挙をめぐる現状と課題―保護者を対象とした意識調査から―(大井ひかる・成田 泉・島田 明子・水内 豊和)』



表紙の画像は、ヘラルボニー「#CARE VOTEプロジェクト特設サイト」から引用した#CARE VOTEの画像です。