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教材紹介【社会/進路】『"はーとふる"ガイド』

これまで記事で障がい福祉制度についていろいろと紹介してきました。

今回は僕が授業で福祉制度について扱うとき、教材としてよく使う冊子『"はーとふる"ガイド』を紹介します。

(画像は大阪市より)


"はーとふる"ガイドとは

"はーとふる"ガイドは、大阪市福祉局障がい者施策部が毎年作成している、知的障がいのある方を対象に福祉制度をわかりやすく解説した冊子です。

この“はーとふる”ガイドは、大阪市内にお住まいの知的障がいのある方とその家族の方々などのための制度や施設等を紹介したものです。
-障がいのある方へ-福祉のあらまし(令和5年度版)の内容をより簡潔にまとめたものです。

大阪市より

各都道府県や市町村で『福祉の手引き』などの名称で福祉制度について解説された冊子が作成されています。ただ、元々の制度や複雑なことや難しい用語が多いこと、漢字にルビが振られていないことなどから、子どもたちが読んで理解するのはなかなかハードルが高いのです…。

その点、"はーとふる"ガイドは、知的障がいの方を対象にわかりやすく作られています。

はーとふるガイドは作成にあたり、次のことに気をつけています。
1.難しい言葉を避け、簡単な言葉(やさしい日本語)を使っています。
2.単文を使って、分かち書きにしています。
3.絵やイラストを使っています。
4.漢字にふりがなを振っています。 

大阪市より

やさしい日本語をイメージしてもらえるとわかりやすいでしょうか。

百聞は一見にしかず、実際にいくつかのページを貼っていきますね。

1.療育手帳について より
3.福祉サービスについて より
5.交通料金の割引 より

(画像は大阪市より)

いかがでしょうか、見ればわかりやすいというのが伝わったのではないでしょうか。


この"はーとふる"ガイドは、知的障がいに関わる福祉制度全般をカバーしています。なので、福祉制度の概要を把握するのにとても役立ちます。

以下に目次を掲載しますので、見ていただければわかると思います。

はじめに
目次
1.療育手帳について
(1)障がいの程度はひとりひとりちがいます
(2)療育手帳の取得(または更新)手続きの流れ
(3)こんなときは区役所の保健福祉課に行ってください
2.いろいろな相談をしたい
3.福祉サービスについて
(1)「障害者総合支援法」について
(2)権利や財産を守るためのサービス
(3)住まいについてのサービス
4.仕事を探したい
5.交通料金の割引
(1)Osaka Metroと大阪シティバス
(2)JR・その他の私鉄(阪急・阪神・京阪・近鉄・南海)
(3)大阪市内のバス(大阪シティバス以外)
(4)船・飛行機
(5)タクシー
(6)駐車場や駐車場の利用
(7)本人を乗せるための自動車
6.スポーツする見る楽しむ
(1)障がい者スポーツセンター
(2)大阪市内の施設
(3)プール・トレーニング場
7.年間・手当・税金など
(1)障がい基礎年間
(2)心身障がい者扶養共済制度
(3)生活福祉基金
(4) 手当・給付金
(5)税金の減免
(6)NHK放送受信料
8.健康・医療
区役所・大阪市こころの健康センター・エルムおおさか
(1)健康保険証
(2)障がい者健康診査
(3)重度障がい者医療費助成
(4)障がい者(児)歯科診療
(5)日常生活用具の給付
9.その他
(1) ヘルプマークストラップ
(2)大阪市防災アプリ
(3)大阪市の新しい事業について
(4)障がい者虐待について
資料:場所の一覧
(1)区役所一覧
(2)市税事務所一覧
(3)府税事務所一覧
(4)税務署一覧
(5)日本年金機構年金事務所一覧
(6)乗り物 問いあわせ先一覧
あなたの応援団(エコマップ)

あなたの応援団(エコマップ)は、その人の相談先をまとめ、具体的な事柄と相談先がひと目でわかるようになっています。

(画像は大阪市より)

自分の地域向けに活用するために

どの自治体にも同じような冊子があればいいのですが…残念ながらそうではありません。

"はーとふる"ガイドで福祉制度のざっくりした概要を理解できても、特に相談先など機関や施設の名前、場所は全く異なります。

なので僕自身が子どもたちに福祉制度について伝える際は、子どもたちが住んでいる地域の、役所の障がい福祉課をはじめとする相談先の場所と連絡先を必ず伝えるようにしています。

  • 役所の障がい福祉課

  • 障がい者相談支援センター

  • 障がい者基幹相談支援センター

  • 地域活動支援センター

  • 社会福祉協議会

  • ハローワーク

  • 障がい者就業・生活支援センター

  • 障がい者職業センター

  • 障がい者スポーツセンター

  • 保健福祉課や保健センターなど

2.いろいろな相談をしたい より

(画像は大阪市より)

僕自身は制度の詳細よりも相談先を知っておくことが一番大事だと思っています(制度については、興味のある子から質問されれば答えますが、基本的に大まかな概要を伝えるくらいにしています)。制度は変わることがありますし、自分の知らない制度があるかもしれません。実際に手続きする際には支援が必要な場合も多いからです。

もちろん相談支援員さんも強力な味方です(支援学校のうちは放課後等デイサービスのみ利用のセルフプランが多いのですが…)。

"はーとふる"ガイドでも、「くわしくは⚫︎⚫︎に聞いてください」という記載が多くあります。実際に行って尋ねてみれば、制度について詳しく教えてもらえますし、手続きのサポートも受けられます。

(画像は大阪市より)

ついでに役所を訪問しよう

そんな訳で、相談先の1つとして、役所を訪問してみましょう。

(画像は大垣市より)

盲学校時代には、役所に電話し、毎年かわる担当の方を確認したこともあります(日本ライトハウス情報文化センターという視覚障がい機器の販売や相談ができる施設にも校外学習で行きました)。

現在の勤務先である知的障がいの支援学校では、近隣の役所を訪問し、相談先や手続きについて職員の方からお話を聞く機会を設けています。

福祉制度の相談先としても、利用すべき公共施設としても役所の訪問はおすすめです。特別支援学校学習指導要領「社会科」でも、公共施設や制度について記載されていますし。

○中学部1段階
イ 公共施設と制度
(ア)公共施設の役割に関わる学習活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 身近な公共施設や公共物の役割が分かること。
イ 公共施設や公共物について調べ,それらの役割を考え,表現すること。
(イ)制度の仕組みに関わる学習活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 身近な生活に関する制度が分かること。
イ 身近な生活に関する制度について調べ,自分との関わりを考え,表現すること。

特別支援学校学習指導要領各教科等編 平成30年3月

役所へ行ったことがないという子もたくさんいますし、実際に役所へ行ってみると広くて…どこでどうしたらいいのかがわからず困るという子どもたちの気づきもあります。

なので障がい福祉課などの相談窓口を確認することで、将来大人になってから自分で相談にくるハードルを下げておくのです。

"はーとふる"ガイドと併せて、実際の相談先を訪問して将来的に利用する見通しを子どもたちにもってもらいましょう。

まとめ

盲学校時代には高等部が長く、進路学習の一環として福祉制度の学習をしたり、視覚障がい関連施設の見学をしたり、余暇活動の一環として障がい者スポーツセンターを利用したりといった取り組みをしてきました。

支援学校教員という立場で、卒業後の進路先や福祉制度について知っているかどうかで子どもたちへの関わり方が変わってくるかと思います。

高等部の先生は必然的に進路に関わるのですが。個人的には幼稚部や小学部の先生が進路先について話せるのが理想だなぁと思います。

でも、進路や福祉制度ってなにをしたら…というときにも、この"はーとふる"ガイドが役立つと思います。

福祉制度は法改正に合わせて変わっていきますが、毎年更新されるのもポイントです(なので、改訂ごとにリンク先が変わるので注意してください)。

よければ活用してみてください。



表紙の画像は大阪市より引用した"はーとふる"ガイドの表紙です。