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書籍紹介『子どもと作戦会議CO-OPアプローチ(TM)入門』

『子どもと作戦会議CO-OPアプローチ(TM)入門(塩津 裕康)』という本の紹介です。


CO-OPアプローチってなんだ?

CO-OPコアップって聞いたことあります?

(画像はInstagramより)

試しに「CO-OP」と検索してみても、COOPそう我が家もお世話になっている生協(生活協同組合)さんがすぐさまヒットします。あまり馴染みのない言葉かもしれません(ちなみに「コアップ」で検索するとコアップガラナがすぐ表示されます…)。

僕は発達性協調運動症児・者(DCD)に対する課題指向型アプローチの一つということで知り、気になって本を購入してみました。

本の冒頭にはこのように紹介されています。

 朝起きて、着替え、朝食、歯磨き、登校、友達と会話、読書、文字を書く、パソコンを使う、ゲーム、虫取り、釣り……子どもの日々の生活は、さまざまな作業遂行の連続で成り立っています。……
 本書で紹介するCO-OP approach(コアップ・アプローチ)は、そういった子どもの作業遂行を改善するために開発されたアプローチです。その方法は、作業遂行の問題に対して、子ども自身で解決法を発見することで、スキルを身につけていくアプローチです。大人は考え方(問題解決の枠組み)を教えますが、スキルを手取り足取り教えるようなことはしません。子どもに効果的な質問をすることで、解決法の発見を導く関わりを行います。

Prologue「CO-OP approachとは?」より

さらにCO-OPアプローチには3つの中心概念があります。

  1. 子どもの視点を尊重して、子どもの目標が最優先され、子どもが積極的に参加するなど、子ども中心であること。

  2. 子どもが目標とする活動の「スキル習得」が目的なので、目標達成に関わるスキルに絞って練習すること。

  3. 問題解決の枠組み(Goal-Plan-Do-Check)を使用し、大人も関わりながら、子ども自身で問題解決することを重視すること。

子ども中心で問題解決に取り組むアプローチって聞くとなんだかワクワクしてきませんか?

CO-OPアプローチの流れ

CO-OPアプローチの流れを紹介します。

基本的にはGPDCシートにあるように、Goal(目標)を決めて、Plan(作戦)を考え、Do(練習)して、Check(確認)し、それによってまた作成や目標を調整して練習していくという、いわゆるPDCAサイクルを回していきます。

(画像はHaneTamaより)

では、ストーリーガイドに沿って紹介していきます。

1 子どもが選んだ目標「◯◯したいからはじめよう」

タイトルの通り、今現在の子どもが「したい、できるようになりたい」ことを目標にCO-OPアプローチがスタートします。こどもの「したい、できるようになりたい」という想いが取り組みのモチベーションになります。

(画像はHaneTamaより)

やりたいことリストに書き込み、重要度(自分にとってどれだけ重要か)を採点し、どれから取り組んでいくのかを考えます。

ゴールとなる目標は回数や距離、指導する道具などなるべく具体的なものにしましょう。

2 ダイナミック遂行分析「できない原因を考える」

ゴールに対して、まずは「やってみましょう」やるてみた上で、できない原因(改善点)を、人、活動、環境の3つの視点から、子どもと一緒に整理し、分析します。

(画像はAmazon.co.jpより)

  • 「人」は、身体の位置やタイミング、力加減など、子どもの能力について

  • 「活動」は、回数や距離、活動の種類など、活動が与える子どもの影響について

  • 「環境」は、道具、場所、他の子どもなど環境が与える子どもへの影響について

課題を細かいステップに分けていくと「どこに重点を置けばいいのか」が見えてきます。別の記事で紹介した課題分析が参考になるかもしれません。

3 認知ストラテジーの使用「作戦を使って練習しよう」

ここからがCO-OPアプローチの「キモ」です。子どもオリジナルの作戦を考え、実際にその作戦を使って練習していきます。

(画像はAmazon.co.jpより)

例えば二重跳びを10回するなら、

  • 「人」なら、手首をつかう作戦(手首を早く回す)、ハイジャンプ作戦(できるだけ高く跳ぶ)、足くっつけ作戦(両足をくっつけて跳ぶ)

  • 「活動」なら、10回連続から5回連続二重跳びへ変更する

  • 「環境」なら、なわを長くする作戦、軽い縄を使う、跳ぶ位置がズレないようにテープで目印する

などなど、考えた作戦を試し、どの作戦がいいのかを考えます。

4 ガイドされた発見「子どもの作戦をじょうずに引き出す!」

CO-OPアプローチでは、子どもに直接作戦を教えることはしません。が、子どもが自分で分析して作戦を発見していくのは難しいものです。

なので、大人が子どもが主体的に学習するためのガイド役になり、質問を通して作戦を「発見」するように促したり、コーチング、モデリング、フィードバックなどのヒントを提供したりといった関わりをします。

(画像はAmazon.co.jpより)

本には子どもが作戦を自ら発見できるように、どこに着目して、どんな声かけをすればいいか「作戦の分類」と「作戦の例」をまとめた『作戦図鑑』が巻末にあるので、とっても参考になります。

こうやって作戦を立て、練習し、確認し、また作戦を立ててを繰り返してゴールを目指していきます。同時に大人の支援や関わりは徐々に減らしていきます(フェーディングといいます)。

(画像はHaneTamaより)

でも、CO-OPアプローチは、目標達成では終わらないのです。

5 可能化の原理「作戦を応用しよう」

CO-OPアプローチでは、なにかスキルが身についたときは、他の場面や他の課題で応用できるよう促していきます。

そのスキルは他にどこで使える?別の活動でも使える?など話し合い、どんどん使いまくります。

それが子どもが自分で考える将来につながっていきます。

6 保護者や重要他者の参加「みんなでゴールの実現へ」

CO-OPアプローチの特にテクニカルな部分である「ガイドされた発見」を保護者など重要他者へと広げていきます。

CO-OPアプローチのオススメポイント

僕自身が本を読んでCO-OPアプローチを紹介したい!と思ったオススメポイントを紹介します。

子どもの想いからスタートする

教員や保護者からではなく、子どもの想いからスタートするのは大切な視点だと思います。

子どもの「やりたい」「できるようになりたい」といった想いのパワーってすごいものがあります。別の記事でも好きなものの圧倒的なパワー紹介しています。

意欲や興味関心という点からしても、本人のやりたいことにフォーカスして取り組むCO-OPはすごく効果的なんだと思います。

逆に周りが良かれと思って提案した内容でも、本人に意識がなかったり、本人が必要性を感じていない場合、取り組んでみたものの効果はイマイチ…ということも少なくありません。

周りから強引に勧められて、あるいは注意されるから仕方なく取り組んでいるなら、環境が変わればやらなくなる可能性大です。

子どもたちが納得して、意欲的に取り組むためにも「やりたいこと」を自ら選択することが大事なんです。

子どもの間違える/失敗する権利を奪わない

僕自身特に我が子と関わるときに反省することが多いのですが…。

大人って子どもが上手くいかないときに、ついよかれと思って「こうやったらいいんだよ」と教えてしまいがちです。特に教員なんて教えるの大好きなんです笑。

でも、思い出してみてください、遠い子どもの頃のことを。自分でアレコレ試してみたいのに、正解を教えてくる大人…いや、「自分でやりたいんだよ!」ってなりますよ。

僕たち大人は子どもの頃の記憶を忘れてしまい、今現在のできる状態が当たり前になっています。でも、当然ですが、最初からなんでもかんでも上手くできたわけはないのです。上手くいかない中で、前転も縄跳びも逆上がりもリコーダーも、練習して、失敗して、試行錯誤して、また練習して、少しずつ感覚をつかみ、できるようになってきたはずなんです。

みなさんも自分で気付いたり発見したりしたことってずーっと心と記憶に残っていませんか?そうなるためには、子どもたちが自分自身で考えて、悩んで、試行錯誤して、トライしてを繰り返していく必要があるんです。

だからこそ、子どもたちが間違って、失敗して、何度もトライする権利を守ってあげて欲しいのです。

そういった視点をもてると、子どもがやっていることに口を出しそうになるのを我慢して「見守る」ことができるようになります。

よく「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えなさい」と言われますが、子どもたちの試行錯誤が、魚の釣り方を考えるもとになっていくのです。

そんなことを僕自身は考えています。なので、「あくまでも子ども中心」というCO-OPの考え方にとても共感します。

大人が関われるからこそ手が届く場所へ

ヴィゴツキーの「発達の最接近領域」という言葉があります。

(画像はLIFENAVI COACHINGより)

教職課程を学んだ方はご存知だと思いますが、要するに子どもの一人でできる、できないの間には、「周りの仲間や大人との関わりや支援があればできる」があるということです。

そんな仲間や大人との関わりや支援のことを次の領域への「足場」と読んでいます。

CO-OPは子ども中心の取り組みですが、それ全てを子どもに任せて放置するのとは違います。

大人は子どもが主体的に取り組めるよう見守りながら、適切なタイミングでアドバイスしたり、方法や道具を提案したりといった形で「足場づくり」をしていきます。

その「足場」があるからこそ、一人ではできなかったことに子どもたちがチャレンジし、できるようになり、できるが広がっていくのです。大人の関わりがあるから、子どもたちの手が届く場所が広がっていくのです。それは子どもたちと関わる僕たち大人にしかできないことです。

そんな「足場かけ」を一度で終わらず広げていくのもCO-OPアプローチのオススメポイントです。

SST、ソーシャルスキルトレーニングを進めていくときに一番難しいとされる「般化」を意図的に設定されているのも特徴ですよね。

まとめ

子どもが主体となるCO-OP(コアップ)についての本の紹介でした。僕自身も話していてワクワクしてきます。

今まで紹介してきた支援の視点や手立て、便利グッズなどは有効な「作戦」になるかと思います。別の記事でも紹介していますので、気になる方はそちらもぜひ(自分の記事の紹介ばかりですいません…)。

本には具体的な事例についての取り組み例、ケーススタディや「作戦図鑑」が紹介されているので、読んでもらうとよりイメージが深まると思います。

なにより「子ども主体」という僕自身も大切にしたい視点を改めて確認できた本です。

気になった方はぜひ読んでみてください。

Hane Tama streで、本で紹介されている「CO-OPマップ」「GPDCシート」などが無料でダウンロードできます。

取り組みの流れがわかるCO-OPストーリーも掲載されていますので、ぜひ。


参考にしたサイト

1.Hane Tama store「CO-OPアプローチ」

2.作業療法士kousukeのWriter Office「発達障害児に対するCO-OPアプローチとは?支援の概要や特徴を解説!!」

3.LIFENAVI COACHIN G#229 最近接発達領域(ZPD)



表紙の画像は、Amazon.co.jpより引用した本の表紙です。