あのタンクを満たすのに以前は五時間かかった。いまは三時間ですむ。節約された二時間は俺のものーー俺に与えられた五時間ごとに二時間ずつ墓を遠ざけるかけがえのない自分の時間だ。 2020/07/31
久しぶりの終日在宅で早起きして部屋を片付け、落ち着きを取り戻そうとしている。今週サボり続けていたリングフィットもやって汗を流しなんとなく健康的な生活スタイルを取り戻した気がしてみたり。作業をしながらひたすらCDをiTunes(MacOS CatalinaからはMUSICという名前になってしまった)に取り込んでBGMとして流している。
手始めにAlicia De LarrochaのBoxセットを読み込んでいるのだけど、丸みのある高音が心地良くてたまらない。いぶし銀の玉をころころと転がしたような優しい高音は、ジャズピアノで言えばRed Garlandのようなイメージなのだけど。それが全て簡単に、しかもお安く手に入る時代なのでなんとも素晴らしい世の中だなぁとは思うが、本当に価値あるものの対価がこれでいいのか、と一抹の不安も感じる。
それでもクラシックはまだ個人の偉業をアーカイブ化しようとする意志を感じるけれど、ジャズはからきしダメで、プレイヤー個人にフォーカスしたボックス企画などは昨今、本当に見ないなぁ、という印象。いや、もちろんマイルスとかコルトレーンとかそのクラスは廉価版出てるけど、もうちょっと他の人も出して欲しい、という感じ。もう、持ってるからね。文学においても個人全集というのはもうビジネスとして成立しなくなってきているし、古書も人気なく価格もだいぶ下がってきているのだけど、自分は個人の偉業を集大成した全集という形に対して憧れと、それを読んで網羅したという達成感が好きなタイプなので、全集大人買いをコツコツやっていきたいと思っている。まぁ、もうこれは単なる道楽としか言いようがないのだけど。
アイン・ランド、ついに3巻に突入。分厚く、重いが本質的な示唆に富む作品。アメリカの経済界の要人たちに影響を与えてきたというのもよくわかる。日本でもビジネス界隈の人たちでもっと読まれてもいいと思うんだけどな。
「俺は自分に必要なものをすべて生産しながら、手法を改善しつつある。そうして節約する一時間は俺の人生に加えられた一時間だ。あのタンクを満たすのに以前は五時間かかった。いまは三時間ですむ。節約された二時間は俺のものーー俺に与えられた五時間ごとに二時間ずつ墓を遠ざけるかけがえのない自分の時間だ。」
アイン・ランド『肩をすくめるアトラス 3 AはAである』P.41