「やってるうちにプロになるから、大丈夫。この言葉は、店をはじめたとき、 お守りだった。」 2020/07/03
終日在宅ワークだったのだけど、今日からスタンディングデスクとステッパーを導入したので立ちっぱなしで働いてみたら結構疲れた。しかもステッパーは40分くらいするとかなり汗だくになる。運動不足の解消には良さそうな手応えなのだけど、腰が痛い⋯⋯。どうやら、スニーカー履いてやったほうがいいらしい。初日から飛ばし過ぎたのかもしれない。何事も過ぎたるは及ばざるが如し⋯⋯
善渡爾 宗衛・杉山 淳『荷風を盗んだ男: 「猪場毅」という波紋』を読み終える。中に「四畳半襖の下張」も収録されていたのだけど、完全に春本だった。古家を買った老人が襖の下張りに何か書きつけてあるのを見つけ、半紙を1枚ずつ剥がしていくと、そこには男女の情交が描かれていて⋯⋯という仕掛けが荷風らしいというか、ただストレートに描かないところが趣深い。
その後、田尻久子『橙書店にて』を読み始める。熊本の書店の店主のエッセイ。ゆっくりと読みたい、仕事終わりにホッとするいけてるチョイス。今週も終わったなぁ、という安堵と共に読んでいる。
店を開こうとしていたとき、何もかもが未経験だった。行き当たりばったりで、勢いにまかせて進めていたから、いざお客さんを迎える日が近づくとさすがに不安になった。喫茶も営業することにしていたから、メニューを試作しては、お客さんに出していいのかと自問自答したり、友達に聞いたりしていた。
そんなとき、村本さんが言ってくれたことを、本人は憶えていないと思うが、いまでもたまに思い出す。やってるうちにプロになるから、大丈夫。この言葉は、店をはじめたとき、 お守りだった。
田尻久子『橙書店にて』P.19
自分のプロフィールを書く機会があって、人様に誇れるような偉業があるわけでもないし、何を書いたものだか思案した結果、ただただ色々なことをしてきただけなのだけど、まぁその色々してきたことがキャリアよな、と思ったのでそれを書いた。やってるうちに、プロになるだろうか。まぁお給料もらってるからプロだと思ってやらないとそれはそれで嘘だよ、という気もする。
ある日お客さんから戦争体験を聞くくだりがあるのだけど、たった4行ぽっちのこのエピソードが、これだけで短編小説読んだような鮮烈さがあって、読んで、ふぅっと息がもれた。
近所の女の子が空襲で死んでしまった話。爆弾は真っすぐに落ちるものだから、空襲のときは道の端に避ければそうそう当たるものではないという。女の子はその日、真新しい下駄を覆いていた。そして、逃げる最中に、脱げた下駄を拾いに戻って爆弾に当たった。真新しい下駄を履いていたばかりに、女の子は死んだ。
田尻久子『橙書店にて』P.68
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