【プレイフルな60歳のお誕生日パーティの進行】をやってみて学んだこと
こんにちは。
私はベルリンのこどもミュージアムでファシリテーターとして働いています。
これまで様々なこどもワークショップをしたり、こどものお誕生日パーティの進行をしたりしてきました。
遊びをメソッドとした学びやコミュニケーションのためのワークショップも行ってきました。
グループでの遊びを提供するときに大切にしていることはたくさんありますが、1960年代後半から1970年代前半にアメリカで生まれた「新しい遊び」のカタチ"New Games"のモットー、
"Play Hard, Play Fair, Nobody Hurt"
「懸命に公正にプレイし、誰も傷付けない」
もそのひとつです。
あるワークショップで出会った方から、
「今度60歳になるウルリッヒさんという男性が、遊びを取り入れたお誕生日パーティをしたいと言っているんだけど、やってみる?」
とお話をいただいて、おもしろそう!と二つ返事で引き受けた私。
事前にウルリッヒさんと直接会ったり会場となる部屋の下見をしたりはできなかったので、電話で連絡を取り、期待されていることや会場の間取りや設備やスケジュール、参加予定の方たちのコンディション等の打ち合わせ。
ウルリッヒさんは、誕生日には毎年特別なことをしているようで、期待が大きいのも伝わってきたし、遊びを取り入れた60歳のお誕生日の進行は、私にとって初めての体験です。
その日のその場の様子で臨機応変に対応できるように遊びの種類もたくさん用意し、流れや構成を考えて、何度かシュミレーションをし、どきどきわくわくながら迎えた当日。
この日一番大切なことは、もちろん、ウルリッヒさんと招待客のみんなに喜んでもらえること。
お祝いの日だから、みんなで笑顔で楽しめること。
お誕生日パーティに招待されたお客さんたちは、動きやすい格好で来るようにと言われていただけで、今日何が起こるのかは知らされていなかったようで、見知らぬアジア人に迎え入れられて、困惑している様子でした。
その雰囲気に私の緊張も高まります。
みんな揃ったところで、輪になって座りました。
まずは、なぜ私が今日ここにいるのかということ、日本では60歳のお誕生日は還暦と言って赤いちゃんちゃんこを着てお祝いすることなど簡単にお話して。
それから、みんな顔見知りのようだったので、お互いのことを違った面から知ることもできるかもしれないと、以前参加したワークショップで紹介された遊びを試してみました。
ひとりひとり、自分のキーチェーンにかかっている鍵の説明をする、というもの。
私の場合だと、
「こんにちは。あかねです。これは今住んでいる部屋と郵便受けの鍵で、こっちは私が働いているこどもミュージアムの鍵です。遊具デザイナーとしても働いているので、これはその事務所の鍵です。私はよく自転車で移動するので、自転車のチェーンの鍵もキーチェーンにかけています。このキーホルダーは、以前通訳させてもらった日本人の家族の娘さんがお礼にとくれた思い出のものです。」
と、短いけれど、鍵の説明をすることで、話すことに迷うこともなく、自分の一部の紹介ができます。
はじめましてのグループでも顔見知りのグルームでもなかなかおもしろいので、機会があれば、ぜひやってみてください。
そこで笑いが起こったり会話が生まれたりと、雰囲気が軽くなることもあるでしょう。
お誕生日会が始まる前の会話の様子では、ウルリッヒさんはなかなかのビジネスマンのようで、当日参加していた息子さんとその奥さんもお仕事をバリバリされている感じ。
お友達の多くも紳士的な方が多く、慣れないお誕生日パーティの始まりに戸惑っていました。
私の心臓はますますバクバク、みんなにも聞こえるんじゃないかと思ったほど。
私にできることは、とにかく、
遊びの力を信じて、みんなで楽しんでもらえるような流れをつくること。
それから、みんなでハッピーバースデーの歌を歌って、いくつかの遊びを試してみました。
参加は強制することなく、一緒に遊びたい人だけが、遊びごとに参加する、という形で進めていきました。
みんなが楽しんでいる遊びでは時間を長く取って、あまり盛り上がってないときにはバリエーションを加えたり、次の遊びに移ったり休憩したり。
体を動かす遊びや、頭を使う遊び、チームプレー、リラックスのための遊びなど、ひとりひとりの様子にアンテナを張って頭をフル回転させて、考えてきた遊びをできるだけ自然な流れで提案していきます。
初めは固い雰囲気で少し懐疑的だった人たちも、少しずつリラックスしてきて、途中からはなんと遊びの提案をしてくれる人もいて、最後にはみんなんで真剣に遊んで、一緒に汗をかいて大笑いでした。
初めは傍で見ていたウルリッヒさんの息子さんと奥さんも、途中から参加し、最後には会社でも取り入れてみると話してくれました。
遊びの力を信じて自分もとことん楽しんだ2時間。
遊びから少し離れていた大人たちが遊ぶ喜びを見つけて思いきり楽しみ始める瞬間を多く見させてもらえて、私にとっても最高の思い出になりました。