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Love Me Againについて想うことを書いてみよう

V(of BTS/キムテヒョン)
1995年12月30日生まれ
代表曲:Love Me Again

じゃないですかもう。

彼が大好きだと語ったこの曲は、もうひと目見た(MV視聴がこの曲とのファーストコンタクトだからね)そのときから彼の代表曲となることを確信したほどの出来栄えだったわけですけど、MV公開から1年が経ち、もう本気で押しも押されもせぬ代表曲の地位を確立してしまったよね。
まる1年グローバルSpotifyにチャートインした、とかもそうなんだけど、そういう記録的なことだけじゃなくて存在じたいが、みたいな意味で。

MVほんとすごい。
毎日繰り返しの視聴に耐えるどころか都度見入る。
ずっとひとりの人間が歌ってるのが映ってるだけなのに。

そう、ひとりの人間が歌ってるところがずっと映ってる、ただそれだけ。
場面変化もほぼない、鍾乳洞の中で。
ふつう飽きるんだよそんなの。え、それだけ?みたいになる。それがどうよ?
ならんが。
この、画面への吸引力がキムテヒョン、Vの仕事なんだよ。

よく思いついたよね鍾乳洞。
1cm伸びるのに50年もかかると言われる鍾乳石、具現化する地球のロマンが太古からの時の流れを降り注ぐ形に形成して見せる中でゆらめく光と影、追いかけて追い縋るようなそのうつろいはまさにもう1度愛してと言いつのる歌詞を映し出すように浮かんで消え、流れて去る。
自然がつくりだした神秘の中にあって、この世のものとは思えない情景をおもわせるこの妙。
そこでただ歌う、輝く人、だよ。

何かのような、と表現してしまうのは安直過ぎるしクリエイター側にとってうれしい反応ではないように思うこともあるけど、ひとえにこちらの語彙力と表現力のなさのせいだとは思いつつも、初見のこのとき思った「星から来た男じゃん」というのは、もちろんソースとなったのはデヴィッド・ボウイであったけれどその模倣だと言いたかったわけではなく、この「Love Me Again」MVに描かれる人物と同じ、もしくは近い星の出自の人物を、ジギースターダストくらいしか知らない、という話だ。
その後テヒョン本人からデヴィッド・ボウイの名がイメージソースとして挙げられたことによりとても救われてしまうのだけど。

これは、かなしい恋のうたでしょ。
もう戻れないことを知っていて、それでも言いつのる「Love Me Again」。
嘘ついてつよがっても帰らなかった心と相手を思ってずっともう1度愛してって懇願していて、本当に相手に伝えられたのかはわからないけれどせつせつと訴え続ける復縁の願い。
しかし。
せつなさは彼の声質が連れてくるし、歌い手としての感情表現として悲しい色を纏わせてもいる。
だけど、繰り返されるフレーズのせいもあって、聞いていて受ける印象は「淡々としている」なのよ。
ここがすごい。
この、歌詞に寄って乗せた感情のさじ加減がすごい。
どこまでも悲痛に悲しみを伴って歌うことも可能だったのを、淡々としてると感じさせるほど冷静さを保って進行していく。
かと言って、本人が「少し退屈かも」と心配してたのは単なる杞憂で繰り返しても繰り返しても飽きない絶妙すぎる温度感でちゃんとドラマを伝えてもいる。
この歌唱がもたらす効果として生まれたのが、「客観性」だと思う。

さらに非現実性をプラスする、テヒョンのヴィジュアル。
Visual。
ビジュアルって言葉がVから始まってんの運命なんじゃないの?彼の名はV。ってかんじ。
この視覚的訴求力すごい。
様々な国と文化の結集みたいな彼独自の美しさに、ゴールドと赤のスパンコールだよ。
これ服作りに関わった皆さんうれしかったと思う。こんな活かし方、似合い方を見られて。
強烈なインパクトを与える衣装の魅力はそのままに、しかしそれを収めてしまう容量がテヒョンの美貌にはあるからね。
彼の容姿造形の美しさに加え、所作の美しさから香るエレガンスが、派手さ、奇抜さ、みたいなものを浄化させてかくもいい感じに洗練させてしまう。
だから既製品と思えない、彼のためにオーダーメイドしたような似合い方をして収まっちゃう。
細かなスパングルが光を跳ね返して拡散させてさざめくようにきらめくのがきれいで、これはどこまでを計算して選ばれた服なのかと感心する。
濡れたようなみずみずしさを放つ輝きと、ウェットな質感の髪、イヤカフのきらめきまでがリンクして、すべてがよく似合う。
この質感の統一が洗練を作ってもいるんだよね。
何かが特出して主張するのでなくうまく馴染ませて、完成形のクオリティをただ上げる。
曲の持つ風合いから言っても別に衣装がゴージャスでなくてもよいじゃん。そこをこれにした意味、気概、演出意図。
何を導き出してどう見せたかったかってことに他ならないと思うんだけど、それはこの曲がいずれ世界のスタンダード・ナンバーになるとおもわせる時代に左右されない普遍性を持っているからで、ともすればありきたりになりそうなものをそうさせないためのビジュアルからのメッセージだと思うんだよね。
テヒョンてまずそうじゃん、音楽も服も古い時代のものが好きで、だけど彼が纏うとなぜかどれもこれも古さではなく良さが際立つの。
彼自身が流行を作るくらいの存在だっていうことはこういうことなんだなと納得させられる、今感、旬感が常にあって、古いものと現代の空気が無理なく馴染んでしまうの。
どこかスペイシーなまでのきらめきを纏う衣装はだからSF的ですらあって、ものすごく洗練されたレトロフューチャーみたいに見える。
近未来的でグラマラスなテイストを感じさせる衣装と彼自身の持つエレガンス、その存在する場所が壮大な自然の結晶というミスマッチ具合がこう微妙で絶妙な時空の捻れみたいなものを生み出してるんだよね。
すごいよ。ここにいて歌ってるだけなのに。

その結果、大自然のあまりに驚異的な成果物がかえって非現実的な神秘をつくり出す別世界感を見せながら客観性を持ってかなしい恋のうたを歌ったこのMVを見るに得られた物語は、ああ、ここで歌ってる人の物語ではないのかもしれない、という可能性。
この人は歌手なんだなと。語り部として歌を歌っている歌手なんだわ、と。
どこかの星で別の星のスタンダード・ナンバーを歌うような。
もしくはそう、別の星から地球にやってきてこの世界の流行歌を歌うような。

ほんと衣装と背景と歌詞の内容はそれぞれ離れてるの。
その離れたものをひとつにして成立させてるのがこのキムテヒョンなの。
バラバラなそれを、どれに偏って沿うこともなくただ身につけそこに立ち歌うだけで集約させてしまうの。
特に大きなアクションもなく。
見上げたときや横を見たときの目のとつぜん面積を増す白目の分量とそこに入る光がきれいなのや、衣装のスパングルに反射した光が一瞬彼の頬に照り返って鱗みたいに見えるのや、そいいうものすら演出効果になるくらいの動きの少なさでもって。

果たしてこれはなんだ?と思う。
こんな人、世界中探しても他にいる?と。
他にこんな、何もしないまま歌ってるだけで世界を生み出してしまう人がいるかな、と。
しかもこれ、韓国語の歌なのよ。
彼は韓国人で、19世紀から西洋が焦がれるオリエンタリズムを持って生まれていて、どこの国や文化でも愛せるような普遍的なメロディと詩を深く甘く少し乾いた、ものがなしさとせつなさをおびた声で歌う。
とびきりかがやかしいヴィジュアルで。
しかも歌詞の登場人物の性別わからないところも大好き。そこもすごく今に合ってる。
ほんとこのMV観てると、こんなに様々な文化をいっぺんに味わえることもそうないんじゃないかとおもう。

確実に彼はひとつの答えを、見本を、手本を、レジェンドを、完成させてしまった。
それこそデヴィッド・ボウイが成し得たスターオブスターズの地位のように。
きっとずっと残る、必聴必視の名作として。

1からまったく新しいものを作り出すには人類は歴史を重ねすぎているように思うし、生まれてから見聞きしたものの情報が蓄積されて表現や好みを作る要素となっていくわけだから、それを考えても本当にまったくオリジナルの、なんの前例とも被ることないものってもう生まれないと思うのね。
だから既存のもののどこを拾ってどんなふうに見せるか、というやり方で新しいものをつくるしかないのでは、と思うんだけど、この曲とMVはその成功例じゃないかなと思ってる。
普遍的なもの、ブラッシュアップしたもの、今まで組み合わせとしてあまり見た気がしないもの、そういうものたちがうまく調和し、あるいはコントラストを作って成果を見せたときに、新鮮さをともなう成功を感じるんじゃないかと思うと、ねえテヒョン、できちゃったんじゃない?と思う。
キムテヒョンが100年後も語られる存在になったときに、その功績として残るもの。
そうやって築かれていく歴史にリアタイしてる感じがこの2023年8月10日からずーっと続いてる。その興奮のまま醒めもせずにあっという間に1年経ってしまった。
なんていうかもうだから、Congratulation、テヒョン。みたいな気持ちなの。
おめでとう、大成功だね、素晴らしいねよくやったね、そして、本当にありがとう、という感謝と感動で胸がいっぱい。
……のまま月日が経ってしまって全然言葉にもできなかったから、1年経ってやっとこんな文章を書いています。

この先どれだけ名曲が生まれても、どれだけ好きな曲ができても、「Love Me Again」は特別なエポックメイキング楽曲。ずっと大好きで切なくなるほどの曲であり続けてくれると思う。
比喩でもなんでもなく毎日欠かさず聴いていて、こんな素敵な曲を日常にもたらしてくれてありがとう、と思うよ。
365日ありがとうLove Me Again&キムテヒョン。
そしてこれからもよろしく。ともにありましょう。どうか。


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