上村松園と美人画の世界@山種美術館
山種美術館で行われている、松園さんの全作品を中心に、美人画の収蔵品の展覧会です。
上村松園女史は私の大好きな日本画家。
美人画の美しさ、その細やかさに魅了されます。
着物や装飾品、髪型や化粧など、描き込みが本当に細かくて、男性でももちろん細かく描かれてはいるのですが、女性だからこその精細さのようなものを感じます。
上品さも松園作品に持つ強い印象。
さわやかな色気というか、男性が描くものの色気とは違う、同性目線を感じています。
その理由が「蛍」という作品のキャプションにありました。
「蛍」の題材は蚊帳を吊る浴衣姿の美人。
蚊帳に美人と云ふと聞くからに艶かしい感じを起させるものですが、それを高尚にすらりと描いて見たいと思ったのが此図を企てた主眼でした。良家の婦人を表したのです。
(中略)
要するにこの図はともすれば、廓の情調でも思い出させさうな題材を捉えて却つて反対に楚々たる清い感じをそそる様に、さらさらと描いたものです。
「蛍」『青眉抄その後』(求龍堂/昭和61年)より
お母さんが子どもに目を留めながら蚊帳を吊っているようなたたずまいで、浴衣の色遣いもとてもさわやかで、す。
色気だけが美人画ではないのよ、という松園さんの心意気を感じます。
松園さんの作品を見ていて楽しいのが、やはり衣裳や髪型。
一緒に行った着物好きな友人と、近くで見ないとわからないような細かい柄などを見つけながら楽しみました。
特に髪型にもこだわりが強かったという松園さん。
キャプションに以下の文章が取り上げられていました。
ちいさい頃から、いろいろの髷を考案して近所の幼友達にそれを結ってあげ、ともにたのしんだのがこうじて、年がつもるにしたがって女の髷というものに興味を 深く持つようになった。
ひとつは私の画題の十中の八、九までが美人画であったために、女の髷と不可分の関係にあった故ででもあろう――髷については、画を描く苦心と平行して、それを 調べていったものである。
「髷」『青眉抄』(六合書院/昭和18年)より
髪型についての解説も掲示してあり、写真NGだったので全てメモ。
ミュージアムショップで山種美術館所蔵の松園作品をまとめた冊子が販売されていて、その中にも同じ内容があったので資料として購入してきました。
これは私的には永久保存資料なのですが、水をこぼしちゃった!
次に行ったときに買いなおそうかな……。
松園さんが描く女性たちは、江戸末期が中心のようです。
浮世絵のようにデフォルメされ過ぎていないので、実物を思い描きやすく、より楽しいんですよね。
京と江戸とで違いもあったのでしょうが、当時は服装や髪型、眉などで立場や身分がわかったので、それを見ればどういう女性かが類推できるわけです。
花嫁がする「文金高島田」という髪型がありますが、「島田」というのは娘のする髪型、結婚したら丸髷を結っていたのだそうです。
いろいろな島田髷があった中でも、格の高い「文金高島田」が花嫁の髪型として流行・定着、現在に至ります。
花魁・遊女や歌舞伎役者など、当時のファッションリーダーの髪型を上流階級の女性が真似をし、さらに一般に広がっていくケースも多かったようですが、服装に関する、松園さんの”つぶやき”もありました。
どうも今時の人は、ヤレ流行ソレ流行と着物の柄から髪形から、何も彼も流行となると我れ勝ちに追ッかけて、それが自分に適(うつ)らうがうつるまいが、そんなことは一切合財考へなし で随分可笑しな不調和な扮装(つくり)をしてゐる人が沢山あるやうです。御自分ではそれでいいでせうが、知らぬが仏とやらで、存外平気でゐるやうですけれど、考へてみると随分変なものです。何とかして自分にあふもの、適る形などについて婦人がそれぞれに自分で考えるようなことになつてほしい気がします。
「好きな髷のことなど」『青眉抄その後』(求龍堂/昭和61年)より
自分に似合うものをしっかり考えて装うべし。
着るものの形態は変わっても、考え方は変わりませんね。
この当時の美しいものをたくさん作品として残してくれた松園さんに感謝です。
他、現代までの美人画の作品を数多く見ることができました。
伊東深水の作品もいくつか出ていましたが、当時の流行の着物にパーマヘアの、最先端の女性たちを描いた「春」がお気に入りに。
輪郭線を太く描いた、他とまったくタッチが違うモダンな作品で、こういう絵も描いたんだなと。
どんな女性を題材にしているかも興味深く、また画家による描き方の違いも見られるのが面白い展覧会でした。
上村松園と美人画の世界
山種美術館 ~2020年3月1日(日)まで
一緒に行った友人が美術館のサイトで近いうちにTV放映があることを知り、その前がいい!と急遽日程を決めて行きました。
私たちはゆったり見ることができて大正解だったけど、その後は結構混んでいるのかな?
会期ギリギリ鑑賞常習の私が早めに見に行き、会期中に鑑賞記をアップできるとは……友人に感謝です(笑)
山種美術館、次の展示のテーマは桜!
桜好きとしては次も行かなくては。
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