映画音楽

映画「素晴らしき映画音楽たち」もしも映画に音楽がなかったら?を考えてみよう。

映画音楽というと、何をイメージするだろう?サウンドトラックでしょ、BGMでしょ…と、思いつくものは色々ありそうだ。

例えば、好きな映画が「スターウォーズ」の場合、スターウォーズのテーマやダースベイダーのテーマはすぐ歌えるだろうか。熱心なスターウォーズのファンじゃなくても映画を観た後なら、思わず口ずさんでしまうんじゃないだろうか。

「グレイテスト・ショーマン」を観た人はどうだっただろうか?「ボヘミアン・ラプソディ」を観た人はどうだっただろう…。きっと作品内で使われた曲が頭の中でエンドレスリピートされたんじゃないだろうか。それが映画音楽のすごいところであるし、一番の魅力である。

そう、この作品は、その映画音楽の素晴らしさを紐解くドキュメンタリーだ。まずは予告編をぜひ見てほしい。

作品情報
製作:2016年アメリカ
監督:マット・シュレイダー
上映時間:1時間34分
あらすじ:ハリウッド映画の主題歌やメインテーマは、どのようにして生まれるのか。映像からイメージされた旋律が、オーケストラの演奏などを通じて映画音楽になる過程を取材。ピアノのシンプルなメロディーが『E.T.』のテーマ曲へと変わっていく様子や、『ライオン・キング』でオスカーを受賞し、数多くの大作に携わってきたハンス・ジマーの苦悩など、知られざる映画音楽の裏側を明らかにする。

ドキュメンタリーというと、NHKスペシャルなどを連想して一見堅苦しく見えるかもしれない。しかしこの作品は違う。数々の偉大な映画を取り上げながら、映画音楽の歴史、重要性やその役割、そして巨匠たちの苦悩の末に生まれた名曲たちを讃え振り返る。そして、改めて映画音楽の素晴らしさを伝えるものだ。

映画にとって重要なのは、作品自体の面白さはさることながら、音楽だといってもいいはずだ。映画のストーリーを引き立て、その世界観を伝える為になくてはならないものこそが映画音楽だ。そして、私はそんな映画音楽を愛してやまない。これを機に、映画音楽ファンが増えたら嬉しいなと思う。前置きはここまでにして、見どころを中心に良さを伝えていきたい。

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目次
見どころ①: 映画音楽の歴史と映画音楽の3つの役割
見どころ②: 作曲家たちの作品に掛ける熱い想い~名言・エピソード~
見どころ③: 映画音楽の制作の知られざる裏側・豆知識について

見どころ① 映画音楽の歴史と映画音楽の3つの役割

映画音楽の歴史は、初期は無声映画の映写機の騒音をごまかすためから始まる。オルガン奏者が映画館で専用のエレクトーンのようなシアターオルガンと呼ばれる専用の楽器でその場で音楽をのせるのだ。エレクトーンの倍以上の鍵盤と数々のボタンがあり、実に興味深い楽器だ。音のない映画にオルガン奏者が命を吹き込んだ。
そしてオーケストラやジャズ、ロックバンド、シンセサイザーなどの電子音など様々な音楽が映画に使用されるようになった。今ではすっかり当たり前になっているが、そうした背景や発展について解説されており、非常に興味深い。

皆さんは映画に音楽がなかったら?と、考えてみたことはあるだろうか。もし、考えたことがなければ一度ここで考えてみてほしい。

もし映画に音楽がなかったらどうなるだろうか?それでは想像してみよう。

無音で流れるスターウォーズのオープニング。
無音で自転車で空を飛ぶE.T.とエリオット。
無音でタイタニック号の船首で腕を絡ませて立つジャックとエリザベス。
何だか奇妙なシーンにみえるはずだし、何か物足りないどころではなく圧倒的に何かが足りないことがわかるはずだ。映画音楽は私たちが思っている以上に、映画の中で存在感を発揮しているのだ。

さっそく作品内で取り上げられている映画音楽の役割を、象徴的な作品とともにがいくつかまとめたい。

<映画音楽の3つの役割> 
(基本の役割)ストーリーを引き立てる
(役割1)効果音としてシーンを目立たせ観客の感情を引き込む
(役割2)作品のテーマ曲(モチーフ)として印象付け、記憶に残す

まず映画音楽の転換期と呼ばれている作品、「キングコング」だ。キングコングがビルの上にしがみつく特撮シーンは、音なしで見るとなんともチープなものに見える。

しかし、ここにオーケストラの音楽が入ることで一気にキングコングの恐ろしさが増しストーリーを引き立て、観客の感情を煽るのだ。これが映画における音楽の力を初めて見せつけた作品といわれ、映画音楽導入初期であり基本となるストーリーを引き立てるための映画音楽の登場だ。これ以降、様々な作品でテンポや強弱によりシーンを魅せる工夫が凝らされるようになる。

続いては、「サイコ」だ。シャワーを浴びる女性を襲うシーン。このシーンの曲は、現在多くのテレビ番組でも効果音として使われることが多い。不協和音でイヤなことが起きるという体験を視聴者が同時にできる

そして、「ジョーズ」もこれまた有名な作品のひとつ。たったの2音で(厳密には他にもあるが主旋律は2音といってもいいだろう)サメが近づいてくる緊迫感を表現し、視聴者にそれを体験させている。これが(役割1)効果音としてシーンを目立たせ観客の感情を引き込むというものだ。

ここから言えるのは、映画音楽は人の視線や目線の振り付けをしているということだとも作品の中では述べられている。画面上の特定の動きに音楽をマッチさせるのだ。
もっと分かりやすい例だと「未知との遭遇」が紹介されている。その効果は実際に作品を見て確かめてほしい。

続いて、(役割2)作品のテーマ曲(モチーフ)として印象付け、記憶に残すについてだ。

みなさんは映画を観た後、頭の中でずっと作品のテーマ曲(モチーフ)がエンドレスリピートされることはないだろうか。

例えば、スターウォーズのテーマやハリーポッター、ジュラシックパーク、E.T.など作品を観終わったあとに頭の中でエンドレスリピートされてしまい、思わず口ずさんでしまうものがあるはずだ。

これは映画音楽の中でも最も尊いことではないかと私は思っている。作品と音楽が結びつく、素晴らしい現象じゃないだろうか。

そしてすごいのは、上記に挙げた「スターウォーズ」も「ハリーポッター」も「ジュラシックパーク」も「E.T.」も、そして「インディージョーンズ」も、全てジョン・ウィリアムズによって作曲されているということ。本当に天才だと思う。作品の中で、ジョン・ウィリアムズのチームに参加した演奏者は、「演奏をした音楽が傑作だと興奮が収まらない」「ウィリアムズが関わっていると今までにない経験ができる」「演奏して仲間の顔を見て確信した、”永遠に残る作品を奏でた”とね」と述べている。

「パイレーツ・オブ・カリビアン」のテーマを作ったハンス・ジマーも私が大好きな映画音楽の巨匠のひとり。彼は、シンセサイザーや電子音を効果的に使うことで有名で、映画音楽のレッドツェッペリンとも例えられているし、「ダンケルク」では緊迫感いっぱいの鼓動を模したような音楽が特徴でアカデミー賞も受賞している。
そして私が愛してやまない映画、「ロード・オブ・ザ・リング」を手がけたハワード・ショアも本当に本当に素晴らしい。

話が少し脱線したが、上記に共通していることは、鑑賞後も口ずさめるようになるほど、何度も同じテーマが繰り返し流れるという点だ。

作品内の共通のテーマ曲を複数アレンジで用いるというのは、今ではよく用いられるが、それゆえにテーマになる旋律は非常に重要となる。
この作品の中で例として取り上げられている「ロード・オブ・ザ・リング」は、特に象徴的な例だと思う。テーマとなるひとつの旋律を何パターンにもアレンジし、哀愁を漂わせたり、壮大なスケールを感じさせたり、戦いの前荒々しさや勇気覚悟さえもを感じさせたりしているのだ。

こうして試行錯誤の末、様々なシーンに合わせてアレンジされた旋律は、作品中ずっと形を変え流れ続け、映画を観た後も私たちの記憶に残り続けるのだ。テーマとなる旋律は、まるでよく練られた企業のCMや広告のキャッチコピーのように、作品のイメージや世界観を作り出す要となるのだ。

見どころ②: 作曲家たちの作品に掛ける熱い想い~名言・エピソード~

映画音楽の歴史を振り返ると同時に、映画音楽の巨匠たちの作品に関わる姿勢を垣間見れることが私は特に面白かった。 憧れの作曲家たちがどんな表情でどんな声で話すか非常に興味があったからだ。独断と偏見で抜粋した巨匠たちの名言をいくつかピックアップしてみた。

試行錯誤しながら音を見つけるのは楽しい。
作曲家は語り部だ。
音楽次第では、映画のメッセージが変わったり、破壊されかねない。
音楽は映画の魂だ。
狙った通りの反応を引き出す"感情の潤滑油"さ。
映像では伝えられない感覚に訴えかけるものだ、作品を昇華させる。
映画音楽は、20~21世紀が生んだ偉大な芸術だ。
映画音楽の作曲家は特別な力を持っている。それと作品が組み合わさることで、映画にパワフルで不思議な力が与えられる。

私が大好きな「パイレーツ・オブ・カリビアン」を手掛けたハンス・ジマーは、どんなふうに仕事を受けているのかについてこう話していた。

「面白い作品がある、楽しいぞと誘われ、アイデアを聞いた私は選ばれたことに有頂天になる。これに参加できるのかってね。」

「でも皆が帰ると1人で青ざめるんだ。どうやればいいか分からない。その後電話で断りたくなる。ジョン・ウィリアムズに頼んでくれってね。」

「楽譜は真っ白のままで発想なんて都合よく生まれない。だから常に恐怖心と戦っている。」

もっと得意げに仕事を受けているのかと思っていたけど、ハリウッドの巨匠でさえ、発想は都合よく生まれない・常に恐怖心と戦っているということを述べていることに非常に親近感を覚えたし、何かを作り出す生みの苦しみというのはやはりあって然るべきものなのだなということが分かって少し安堵も覚えた。

もうひとつ愛おしくなるようなエピソードがあるので紹介したい。

「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」の映画音楽を手掛けるブライアン・タイラーは、映画の上映をこっそり観客の反応を見るために映画館に行き、映像ではなく入口の隅の方から客先を眺めるという。そして、上映後にはトイレにこもり、鑑賞後の観客たちがトイレで口ずさむのを待っているというのだ。そしてこんなことを言っている。

「できの良し悪しは、観客を見ればわかる。そこが映画音楽の魅力だ。」

「自分が子供の頃に覚えた感動を、他の人たちと共有できるなんて最高の仕事だよ」

「しかも後世に残るなんて信じられないことだ。映画は僕が死んだ後も観続けられる。それってすごいよ。」

巨匠たちでさえ作ることに不安を感じている一方、誇りを持って制作に当たるその姿は、泥臭くもあり、キラキラしていて、まるで夏休みに自分だけの冒険を楽しむようなイメージさえ感じた。名作映画の裏側で、映画音楽の巨匠たちが映画音楽について熱心に語るのはロマンが詰まっていると思った。

見どころ③: 映画音楽の制作の知られざる裏側・豆知識について

スタジオから、オーケストラ、合唱団、バンド、そして監督、現場スタッフ、ミキサーなどの様々な人が映画音楽の制作に関わっている。監督との打ち合わせから、制作中の姿、収録風景まで様々な部分が登場する。

中でも興味深かったのは、スポッティングと呼ばれる監督との対面での打ち合わせだ。映画音楽家たちは、特に監督との会話を重要視している
中でもジェームズ・キャメロン監督が述べている印象深い言葉がある。

「ほとんどの映画監督は、感情を音楽に変換できない。だから作曲家はセラピストのように監督の言葉から意図をつかむ必要がある。」

監督との打ち合わせの会話を進める中で、映画音楽の作曲家たちは、監督が求めているものをうまく引き出し表現していくというのだ。

また豆知識としてだが、20世紀フォックスのロゴをバックに流れるファンファーレもある作品で却下されたものを、ダリル・ザナック(当時の20世紀フォックスのトップ)が気に入ったため、今に至るまで使われるものになったそうだ。 

最後に…!

ここまできたら、作品を観てるのとほぼ同等くらいに映画音楽がどれだけ重要で素晴らしいものなのかということが伝わっていることだろう。

ぜひ、実際に作品を観ながら、「これがあれか!」「おお!たしかに!」という答え合わせと復習をしてみてほしい。

そして、私たちの中に想像以上に映画音楽は自然と入ってきていることを体感してみてほしい。きっとその頃には、これを読んでいるあなたもジョン・ウィリアムズやハンス・ジマーが気になり始めているだろうし、映画音楽はんぱねえ!ってなっていることを期待している。

それでは、みんなTSUTAYAへGO! 

おまけ。
私のお気に入りの映画音楽を集めたオリジナルプレイリストはこちらから!(個人的に壮大でパワフルなものをチョイス。映画の主人公になった気持ちで聴きながら作業すると捗ります。自分の人生の主人公は、自分だからね。)


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めーたん (Megumi.T)
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