行政との実証実験。渋谷区と取り組んだ女性起業家の経験談
ビジネスシーンで活躍する女性を支援する事業を手掛ける2名の女性起業家を招き、渋谷区の担当職員をモデレーターにユニークな実証実験の取り組みをトークセッションで紹介いただきました。行政と連携した実証実験、そして女性起業家の活躍を知りたい方にぜひお届けしたい内容です!
(SK-IIと渋谷区、meeTalkが連携し共同で開催する「女性起業家支援プログラム」より)
【登壇者】
井出 有希 / シェアダイン 共同代表
奥 温子 / ChiCaRo 代表取締役
田坂 克郎 / 渋谷区 グローバル拠点都市推進室 室長
※肩書きは2021年ご出演当時のもの
■ 登壇者プロフィール
■渋谷区のスタートアップ支援事業
渋谷区では、渋谷区スタートアップ支援事業を4つのステップで実施しています。「プロモーション」「環境整備」「企業・自治体連携」のフェーズを終え、現在は「実証実験」のフェーズに入っており、これまで22社が採択されました。また、区民700名以上が実証実験のモニターとして登録しています。今回登壇された井出さん、奥さんは共にその第一弾に採択された企業の代表をされています。
■各社サービスのご紹介
【シェアダイン】
出張シェフが各家庭を訪問
シェアダインは「食の悩みに対して、専門家が出張して解決する」サービス。幅広い世代の方の食の悩みや、アスリートやボディメイク、生活習慣病に至るまでのライフスタイルの悩みを専門家の力で解決しています。
これまでの飲食業の働き方から転身し、専門性を活かして活躍する1600名のプロフェッショナルが、出張シェフとして各家庭を訪問します。
【ChiCaRo】
オンライン育児サポートロボット
一方のChiCaRoは、遠隔共同子育てロボットを提供しています。「初めての子育てに悩むパパママを救いたい」という思いを起点に、子育て世帯の苦悩をテクノロジーを介することで新しい子育ての形を作っていこうとスタートした事業とのこと。ロボットで、遠くにいる人と一緒に子育てが可能となります。
■関係各社の休業・イレギュラーに対応し続けた、コロナ禍の事業への影響
そんな2社にとって、コロナ禍の影響はどういったものだったのでしょうか。
ChiCaRo 代表取締役の奥さんが手がけるのは、ものづくりのプロダクト。部品が足りない・工場が閉まってしまうなどステークホルダーの休業や、実証実験先のスケジュールなどイレギュラーに対応し続けたといいます。
ただ、サービス面においては、コロナ禍という「家事を専門の方に頼みたいが誰かに来てもらうのはまだためらわれる」というケースも多く、その際に、最初のアウトソーシングの方法として「ロボットを介して専門家の意見を聞ける」というChiCaRoのメリットを発揮できたのは良かった、と話す奥さん。
訪問サービスの難しさ、メディアを通じでポジティブな発信で文化をつくる
シェアダイン 共同代表の井出さんは、新型コロナ感染拡大第一波を受け、2020年4月にサービス自体を8日間止め、ガイドライン・利用規約の大幅アップデートなど感染予防対策も含めた準備を行ったそう。その結果、世間的に落ち着いてきた2020年6月にはサービス需要が過去最高を更新しました。
その一方で、日本では自宅での食事を大部の人に頼る文化がそれほど浸透しておらず、訪問サービスの難しさもあるため、今後さらなる情報発信が必要だとも感じられているとのこと。
ただ、外食自粛が求められたコロナ禍において「料理を作っていないと腕が落ちるから(飲食店に限らず)どこかで料理の腕を振るいたい」という料理人のニーズに応え、メディアを通した「おうちレストラン」といった新たな需要の喚起や、栄養管理をプロフェッショナルに任せることをポジティブに発信することに繋げられたと、前向きに捉えていました。
9割のメンバーが子育て中のChiCaro
チームとのオペレーションはコロナで変わったのでしょうか?
ChiCaRoでは、9割のメンバーが子育て中ということもあり、子育ての合間をぬって早朝・深夜の時間で動くことも。そのため、メンバーがオフィスに集まる日もほぼなくなり、良くも悪くも日常が変わっていったのを体感したとのこと。
シェアダインでも子育て中のメンバーが多く、フレキシブルに動けるような調整ができるようになってきたとのこと。ただ、まだコミュニケーションは対面の方がスムーズな部分も多く、週一回はメンバーで集まる機会を使ったり、オフィスを分散利用するなどして対応しているそうです。
■行政と実証実験をやってみて
行政と連携は、安心感や信頼につながり次の突破口に
渋谷区との実証実験を行う前のChiCaRoでは、子育て支援として世のためになるような事業を行なっていても知名度がないために壁にぶつかる局面が多かったといいます。それが今では行政と連携していることが安心感や信頼につながり、突破口に繋がったことを実感されました。
また、シェアダインはもともと子育て支援の文脈が強く、自治体との取り組みを視野に入れてアプローチするタイミングをうかがっていたのだとか。過去に実証実験に取り組んだ他の自治体と比べても、渋谷区はびっくりするほど動きが速かったことが印象に残っている、とのこと。
行政と協業する上で意識しないといけないポイントとしては、自治体によって取り組みに対する温度感やスピード感は違うということ。「住民へどういう価値を提供したいか」で各自治体の“色”も異なります。テーマによって重視されているポイントが違っており、どの切り口の支援と相性が良さそうかなども事前に確認する方がよいという話も出てきました。
また、年度区切りとなることを念頭に置いてプロジェクトを組み立てると受け入れられやすいというアドバイスもありました。
ChiCaRoの事業において、認可保育園との実証実験が重要だと考えられていましたが、渋谷区との実証実験前はなかなかそういったところとの連携も難しかった、と語った奥さんですが、渋谷区と提携をしたことで自社単独ではアプローチが難しかった認可保育園などとも新たに縁が持てたり、関係を深めることに繋げられたそう。
また、シェアダインからも「渋谷区と連携することによって見方がかわったり、事業が前に進みやすくなった」という話が聞けました。
実証実験や自治体の取り組みを知る方法はいくつかあるようです。おふたりも、インターネット検索や人づてで聞いていったほか、Google Alertで「渋谷区 スタートアップ支援」のキーワードで登録していたところ、ニュースが目に留まったことで今回の取り組みを見つけたとのこと。
渋谷区との行政連携を機に順調に事業成長が進んでいるように見える二社ですが、採用や資金調達など、まだまだ課題も多くあるとのこと。渋谷区にも、横のつながりを増やしていく場やチャレンジできる環境、資金を集める際の情報発信などにさらに期待したい、と話していました。
■起業家としてのバランスのとり方
女性起業家として活躍するおふたりですが、一人の女性としてプライベートとのバランスをどうとってきたのでしょうか。
シェアダインの井出さんは、仕事とプライベートの区切りがはっきりとしないなかで、家族との協力体制を確立してきたそう。
ChiCaRoの奥さんは、経営者の孤独という悩みに対して、「meeTalkなどのコミュニティでかなり救われた」といいます。腹を割って話せるような味方を増やしていくことが大事とおっしゃっていました。今回のようなプログラムなど、最近は昔と比べるとネットワーキングもしやすくなっているといいます。
そして、最後にモデレーターを務めた田坂さんからも、渋谷区自身も”スタートアップ”という意識で引き続き支援していきたい、との意気込みを聞くことができました。今後も渋谷区を中心に、ますます活発なスタートアップエコシステムと、女性起業家がのびのびと活躍できる場ができてくるのではないでしょうか。渋谷区とスタートアップの今後が楽しみですね!
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他にも続々と、講義・トークセッションのレポートを公開していきますので、ぜひチェックしてみてくださいね!
👇meeTalk 女性起業家支援プログラムの記事まとめ
https://note.com/meetalk/m/m552b00b92503
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概要:女性起業家・事業主のビジネスをサポートする支援プログラム
主催:SK-II、meeTalk
協力:渋谷区、Facebook Japan、Google
公式HP:https://meetalk.org/sk2changedestiny/
ライター:若旅多喜恵
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