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営業 ✕ AI 今井晶也が解き明かすインテリジェントセールス

2022年末に登場したChatGPTをはじめとする生成AIは、私たちの仕事にどのような変化をもたらすのでしょうか。今回のmeetALIVE では、「営業」にフォーカスし、その可能性に迫ります。ゲストは『The Intelligent Sales ~AIを活用した最速・最良でクリエイティブな営業プロセス~』の著者、今井晶也氏。AIを活用することで、営業プロセスを劇的に変革し、新たなビジネスチャンスを掴む方法について解説していただきました。

<プロフィール>
今井 晶也 氏
株式会社セレブリックス セールスカンパニー 執行役員 カンパニーCMO
セレブリックス営業総合研究所 所長 兼 セールスエバンジェリスト

セレブリックス営業総合研究所の所長およびセールスエバンジェリストとして、法人営業・法人購買・営業とAIの実務に関する研究を行う。
2021年8月には 『Sales is 科学的に「成果をコントロールする」営業術』を扶桑社より出版。営業本のベストセラーとして電子版含め出版数が7.5万部を超える。2022年7月には単著2作目として『お客様が教えてくれた「されたい」営業』、2024年4月には待望の3作目として、『The Intelligent Sales ~AIを活用した最速・最良でクリエイティブな営業プロセス~』を翔泳社より発売。生成AIと営業に特化した国内最初の書籍として注目を集める。現在は執行役員 CMOと新規事業開発の責任者を兼任。管掌するプロダクトとして営業コミュニティのYEALE、営業専門の人材紹介のSQiL CareerAgent、日本最大級の営業エンターテイメントJapan Sales Collectionなどがある。
Everything DiSC©の認定トレーナーであり、専門は営業、プレゼンテーション、コミュニケーションスタイルと多岐にわたる。2023年9月より一般社団法人生成AI活用普及協会の協議員に就任。


―― 今井さんは、株式会社セレブリックスのセールスエバンジェリストとして、数々の実績を築いてこられました。そんな今井さんが考える、営業にとっていちばん大事なことは何でしょうか。

今井さん
プッシュ型の営業は、相手が買おうと思っていないところに飛び込む、いわば“招かれざる客”です。そんな営業パーソンの話を聞いてもらうためには、営業のプロフェッショナルであることが重要です。しかし、口で言うのは簡単ですが、お客様の会社の業務をお客様以上に理解することはできません。では、どうすればよいのでしょうか。それは、会社の外にある3つの視点を持っておくことです。

1つ目は、競合他社の視点です。たとえば、「競合他社ではいま、こんなことにお金をかけたり、予算を増やしたりしていますが、御社でも似たような動きはありますか?」といった会話ができると、「この人、いい情報を持っているな」と思ってもらいやすいです。

2つ目は、お客様のターゲットに関する情報、つまり市場の視点です。そして、3つ目は客観的視点です。その会社を客観的に見て、課題を示すことができるか。この3つの視点を踏まえて理想や未来とのギャップを示すことが重要であり、そのサポートに生成AIが役立ちます。


―― 営業のプロフェッショナルになるためには、競合他社の視点・市場の視点・客観的視点を持っておく必要があり、生成AIはそのサポートをしてくれるとのことですが、具体的にどのような使い方をすればよいのでしょうか。

今井さん
さまざまな使い方がありますが、今回はおすすめの2つをご紹介します。1つ目は、商談の準備で利用するケースです。たとえば、ChatGPTに以下のようなプロンプトを入力します。ちなみに私は音声入力を使っています。多少文脈に違和感があったり、誤字脱字があったりしてもAIが間違えているところを修正して調べ直してくれるので問題ありません。

すると以下のように、今井晶也さんは「営業組織の改革を重視している」「新しいテクノロジーや営業手法を取り入れることで市場での競争力を保っている」といった情報がアウトプットされます。

今回は私個人のことを聞きましたが、主語を企業に置き換えれば、Webサイトなどで企業が公開している情報を集めることができます。その場合は、企業が大事にしていることを聞いたり、ライバルと比較して強みをまとめてもらったりすることも可能です。

また、「調べた情報をもとに、今井晶也さんと対面したときに、最初の挨拶でどんな話をすると喜ばれそうか考えてください」と聞くと、アイスブレイクトークのヒントになります。こういった営業の準備にAIを使うと、簡単に情報を集めることができます。


2つ目は、商談の練習相手にAIを利用するケースです。営業のレベルアップのために、AIにお客様役を演じてもらいます。以下のようなプロンプトを入力し、あとは話し掛けるだけです。

今回は簡易的な内容にしていますが、佐藤商事はどんな企業で、どんな商品やサービスを提供しているのかといった情報をインプットすれば、より精度の高いやり取りが行えます。さて、ここまでは多くの人が思いつく使い方です。ここからさらに掘り下げていきます。

ロールプレイング後に、お客様の感情をスコアで表してもらうのです。納得感はあったか、合理的であったか、信頼性はあったかなど、指標となる要素をいくつかピックアップしてスコア化してもらうことで、客観的評価を知ることができます。

―― その場合、どのような項目で評価するかをあらかじめ決めておく必要がありますか。

どちらでも構いません。自社で受注要因を可視化できているのであれば、事前にAIに読み込ませてください。それがわからないときは、「どういう項目で評価をすればよいですか?」とAIに聞いて考えてもらうこともできます。そもそも、わからないことをAIに相談できるようにならないと、AIは上手く活用できません。


―― 視聴者から今井さんに質問が届いています。「現在、美容の仕事をしていますが、集客に限界を感じています。AIを集客に活用することはできるのでしょうか?」とのことですが、いかがでしょうか。

今井さん
つまり、B to C の集客ということですね。もちろん活用できます。おすすめは「生成AI井戸端会議」です。以下のようなプロンプトを入力します。

“これからあなたは、美容サロン◯◯のオーナーです。ターゲットは、◯◯のような方々です。狙いたい商圏、客単価は◯◯です。これに対して、どのようなニーズに、どんなシチュエーションで、どんなプロモーションを仕掛けるのがよいのか。Aさんは消費者役、Bさんは企業側の集客責任者役、Cさんは集客コンサルタント役になって、3人で井戸端会議をしてください。会議の時間は1時間です。そして、最終的にどんな対策を取るべきか、アウトプットを30個出してください”

このように指示をすれば、さまざまなアイデアを出してくれます。

―― すごいですね。出てきたものを見るだけでも楽しそうです。

今井さん
60点ぐらいの答えしか出てきませんが、それでも、別の仕事している間に60点の答えを出してくれるのですから助かりますよね。

―― それは、生産性が上がりそうですね。

今井さん
たとえば、トイレットペーパーのような日用品をスーパーマーケットに入れて、最終的に消費者に届けるといったB to B to C でも、どんな店頭プロモーションを仕掛けたら買いたくなるか考えてもらうことができます。その場合は、自社の営業役、マーチャンダイザー役、消費者役、コンサルタント役の4役を設定して試してみてください。


―― 生成AIを営業に活用するうえで、大切なことは何でしょうか。

今井さん
「プロンプト&ラリー」という考え方です。プロンプトについては、みなさんよく考えています。でも、よい回答が得られず1回でやめてしまう人が多いようです。それでは、思うような回答を得ることは難しいです。2回目、3回目に意識を持っていきましょう。

私は生成AIのことを「地方にいる自分よりIQが高い新卒」と思っています。どういうことかというと、地方に住んでいる同僚とは会って話すことができない、つまりテキストコミュニケーションしかできません。加えて新卒なので、教えなければ仕事はできません。でも、IQは高い。そんな人に1度だけ質問して、よい回答が得られなかったからといって、その人を諦めますか。そうじゃないですよね。

私のおすすめのプロンプトは、「いまの回答の考え方は正しいので、これを記憶してください」。この一言です。こうすると、私の考え方の傾向をAIがインプットしてくれるので、以降の回答が自分の考えに近いものになっていきます。

何かをAIに尋ねるときは、複数のパターンを聞くようにします。そして、出てきた答えに対して「2番・3番・5番の考え方がこういう理由で私にフィットします。これを『今井的アプローチ』と名付けて記録してください」と指示するのです。次は、「今井的アプローチを駆使して、30個キーワードを出してください」と指示する。こうしたラリーを繰り返すことで、よい回答が得られるようになります。

―― 最後に、今井さんが著書『The Intelligent Sales ~AIを活用した最速・最良でクリエイティブな営業プロセス~』の中で、いちばん伝えたかったことを教えてください。

今井さん
「これまでのトップセールスの前提が変わる」ということです。たとえば、バスケットボールの試合終了間際、最後の得点のチャンス。あなたなら、シュート確率の高いAさんとそうでないBさん、どちらにパスを出しますか。きっと、Aさんに出すのではないでしょうか。

これは仕事でも同じです。AIが使えて人の3倍の速さで仕事ができるAさんとそうでないBさんがいたら、大事な仕事をどちらにお願いしますか。Aさんですよね。評価制度は公平であったとしても、依頼される仕事は公平ではないので差が出てきます。だから、営業パーソンのみなさんには、AIを上手に活用して、よりよい営業プロセスを築き上げてほしいですね。


【まとめ】
一度の質問で諦めず、プロンプト&ラリーで回答の質を上げていく。そうすることで、AIは質問者の考え方を学び、心強い味方になっていくのですね。生成AIの活用の仕方次第で、仕事のプロセスが大きく変わる可能性を感じました。

ライター コクブサトシ @uraraka_sato
meetALIVE プロデューサー 森脇匡紀 @moriwaking
meetALIVE コミュニティマネージャー 小倉一葉 @osake1st
写真:集合写真家 武市真拓

meetALIVEとは…
meetALIVE(ミート・アライブ)は、「今、会いたい人に会える」を目指すコミュニティプロジェクト。
「毎日をより楽しく、世界をより豊かにしよう!」と挑戦を続けるイノベーター達と語らう企画を用意しています。

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