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第185話 静寂のこだま


「助けて。」

 夜、電気を消してベッドに入ると、待っていたかのように彼の意識が飛んでくる。今私の元へとやってきているこのエゴセルフの意識とは、なんだか表面的なもの……奥から上がってきたというよりも、どうにも一人で対応しきれず動揺している怖さのように感じ取れた。

「わかったわ。私が一緒にいるからね。」

 安心を言い聞かせるように幽体全部で包み込むと、薄ぼんやりと、“慰めてほしい”との想いがそこに浮かんでいる。

 私自身、怖くないわけではなかった。自分の双子の彼とはいえ、低い男性のエネルギーに対してとてつもない抵抗が表面まで昇ってきていて、相手が彼でなければ本当は逃げ出すところだった。 
 それでも、この時ばかりは蓋をした。性被害トラウマの“恐怖心”に対して一時的な鍵をかけると、ゆっくり腕を伸ばしていく。肉体の腰だけがひとり勝手に動き出す。

「どうしよう、どうしよう。どうにも怖くて仕方がない。僕を助けて。」

 彼が泣いている。
私にしがみつきながら性に逃げて気を逸らしても、近づいてくる得体の知れない恐怖を前に、彼の心が泣いている。
 抱きつかれている皮膚の表面、一気にすべて悪寒がして、ベッド横に置いてある毛布をさらに一枚余計に重ねた。

……

 その翌々日、午後の中途半端な時間に、家の前の坂道を上がってくる一人の中学生に行き合った。

「うわ、久しぶりだね。今日は早退して病院かなんか?」

 今年中学二年生に進級したその子は、入院中のあきらが同じ病室だったことから親しくなって、子供同士看護師さんの目を盗んで夜中までこっそり一緒に遊んでいた仲。
 聞けばなんと、学校ではスサナル先生が顧問を務める部活に入っているとのことだった。

「今日本当は午後、体育祭の準備日なんだけどね。
他の運動部は仕事が割り当てられてるのに、スサナル先生が『うちの部活だけ忘れられた、仕事の割り当てハブられたよ。』って言って、へこんでて。
 そのおかげでこっちは仕事やらずに済んで、こんなに早く帰れてラッキーだけどね。」

 意外なところからの間諜(かんちょう)の働きに、先日の先生の恐怖心がいよいよ具現化してきたことが伝わった。
 更に数週間も経つと、今度は彼がひっそりとビジネスSNSから退会していることがわかり、あの人自身の人間関係の精算が始まった。

 そこから先、彼の動向は完全なる“サイレント”となり一切の情報が遮断され、再び噂を耳にするのは何か月も後になってからになるのだった。




written by ひみ

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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。

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でもね、彼のこの情報が入ってきて、「彼、孤立かぁ。厳しいなー」と思った反面、嬉しかったんですよ。だってもうね、私自身あらゆる浄化に全振りしてましたから。

……というのも、これは私の考え方なんですが、『彼の辛さがわかるからこそ、そして代わってあげられないからこそ、この寸暇(すんか)となる一時間でも30分でも自己浄化して早く自分が軽くなって、向こうのプログラムを開始させよう。どうせやらなきゃならないなら、一日でも早く、さっさと崩壊させてあげよう。』ってそんな風に思いました。
崩壊がまだ始まってない時が、じゃあ彼にとって楽かというと、決してそんなことないんですよね。私のことを無理矢理忘れるように負荷をかけているわけだから、酸欠で生きてるみたいなかんじ。

だからこそ日常生活を送りながら、『今、自分が何にフォーカスしているか』ということに常に注意を払っていました。
たぶん遭難救助とか災害救助のセオリーと同じだと思うんですが、まず、自分の足場を確保する。共倒れにならないように、自分軸を確立する。そうして初めて、彼のことが救えます。

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