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第189話 私の中で、みんな生きてる。


 シリウス時代、母なし子となってしまった幼いリトの世話をしてくれたのは、宇宙子さん……ミトの姉である「エ・マァ」だった。発音が少しややこしいので、エマと呼んでいきたいと思う。

 もちろんミトが旅立ってしまったシリウスには父であったタケくんもいたし、殆ど記憶にないながら、当時は女の子だったスサナル先生の魂も一緒だった。
 けれどもミトを失った私の傷は深く、身の回りの世話も含め、私が精神面で頼っていたのがエマその人。子供だったリトはエマに懐き、母のように慕うと彼女からの愛情を貪った。またエマ自身もそれを赦し、かつての私を甘えさせてくれた。

 そんな彼女もやがては死んだ。寿命で肉体を離れると、とうとうリトは身に堪えるほどの独りぼっちを彷徨った。

 『天涯孤独』。
リトを纏った私のことを、宇宙子さんはそう形容した。


 続くセッションの間中、それでも嫌で嫌で仕方なく、いつ、「今日でひみさんとお別れね。」と言われてしまうかと怖さが浮かぶ。
 だって今まで誰一人として、本当の意味で最期まで私のことを愛し抜き、看取ってくれた人などこの宇宙にはいなかったから。

『いつもみんな、途中で消えちゃう。』

 それが私の、転生に転生を重ねて得た、唯ひとつの経験則だった。

 地球へ入植してきた当時の“シリウス人としての私”の想いを抽出していくと、深い『疑い』が横たわる。

……本当に、“地球なんか”に来て、みんないるんだろうか。エマはいるって言ったけど、確かにミトもいたようだけど、だけどどうせみんな、会えたとしたって結局いなくなっちゃうんでしょ。

 ところがその日のセッションでは、そんな孤独を乗り越えて、宇宙に広がる網の目のような意識へと自分を拡張させていくことになった。それから宇宙子さんが私の魂に話しかける。

「みんないるから。繋がってるから。
 私、あの時も言ったんだよ。
……肉体は消えても魂は消えない。絶対それを見せてやるよ。わからないって言うんならいいよ、私がそのことをわからせてやるよ。だからちゃんと私のことを見ておきな!」

 けーこにそっくりだなと思った。断線しても壁を作っても、けーこだけは絶対に、どれほど拒絶しても私から去っていかなかった。前はそれが鬱陶しかったけど、当時のリトに意地でも報いてくれたのだと思う。
 それから拡張した意識が、たくさんの懐かしい魂たちと邂逅していく。

 本当だ……本当だ……。
みんないた。本当に地球に、みんないた。

 大人の胸の高さくらいの地球が視えていた。その周りをぐるっと、シリウスの光のファミリーたちが取り囲んでいる。八人から、十人くらい。そして彼らはその地球儀を中心に、次々と手を中央に伸ばしては一人、また一人と重ねていく。
 そんな様子を彼らの足元から眺めていると、誰かがひょいっと、私のことを抱き上げる。

「おじいちゃん!」

 円陣に、リトの小さな手が混じる。

 “このことをみんなに伝えたい”。
どれほどの時を孤独に過ごそうとも、魂の繋がりは決して消えないと、それを多くの人に伝えたいと思った。私の孤独の経験が、紛う(まごう)ことなき宝物へと反転した。


 このセッションの終了間際、“リトの意識を入れた私”が天に向かってブンブンと手を振っていた。まるでパレードの主役のように、目には見えないたくさんの人に、愛想よく景気よく、惜しみなく手を振る。
 まんま子供の私を見て、宇宙子さんが爆笑している。
 センタリングして閉じる直前、おじいちゃんが私の頭を優しくポンポンしてくれた。

「ひみさん、ありがとう。」

 きっとおじいちゃん自身にも、自分がリトを巻き込んだとの負い目があったのだと思う。もつれた糸は一つならず、そうして統合されていった。

「おじいちゃん大好き!こちらこそありがとう。今、私はリトではないけど、それでも私はいつまでも、あなたのかわいい自慢の孫よ。」

『魂の繋がりは決して消えない』。
それを心に、深く刻んだ。



written by ひみ

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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。

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「どこにいるの?どこにもいないじゃないか!
地球に来たってどこにもいない。
どこにも、誰もいないのに、どうしてここにいなきゃいけないんだろう。」

青年リトも、初めはこんな風に思っていました。
でもね、今、ぐるっと一周まわって全部を俯瞰して、私は孤独も好きだなって思ってます。

私の彼は、とある小説に感化されて数年前から登山を始めた人。早朝、誰もいない山のてっぺんで、たった一人で朝日を迎えるらしいです。

人といる良さもあるけれど、独りの空気感もいいものです。
だけどそれは、人とのつながりが切れないことを魂が知っているからこそ、敢えて『孤独』として認め、味わい、満喫できる側面もあります。
真に孤独しか知らなければ、山を目指すことすらない。
真っ暗闇を歩かなければ、山頂での朝日には出会えない。

この前少し書きました。
勾玉の、白の中の黒い点、黒の中の白い点。あの『点』があるからこそ、エネルギーは循環できます。あの『点』があるからこそ、痛みが優しさへと変わります。闇と光は愛し合い、そうして反転が起こります。
あなたの『闇』は、どんな色ですか?

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→第190話 富士と大山

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