番外編 あきらとけーこ
それは、あきらがまだ小学生だった頃の話。
小児病棟でのスマホや携帯の扱いには、細かいルールが定められていた。Wi-Fiは無く、それでも面会中の私のスマホを使ってのオンラインゲームや動画視聴は時間によって可能だったり、家にいる時、キッズ携帯から私宛てのメールが届くこともあった。
ベッド上での生活を続けてきたあきらが、車椅子で病棟の外へと移動できるようになったのは、入院してから半年後。ようやく院内を少し散歩できるようになると、その日は初めて“通話可能エリア”へとやってきた。
「誰かに電話、かけてみたい。」
ところがその日は平日で、時間もまだお昼頃。クラスの友人と喋りたくてもみんなそれぞれ登校中で、誰もつかまらないだろう。
祖父母や親戚、あきらが知ってる私の友人たち。なんならいっそ小学校にかけてみる……?
私が次々提案すると、「じゃあけーこにしようかな。けーこなら電話に出てくれるかな。」と淡い期待を寄せている。
「それじゃあいくよ。」と発信ボタンをタップすると、久しぶりの外界との接触にあの子自身も照れていて、頬がほんのり紅潮している。電波の向こうのけーこからも、「やばい嬉しい。なんか泣きそう。」と、くぐもった声が漏れ聞こえてきた。
ところがそんな美談ではないこの二人の“普段”とは。
退院後。
ふとしたことからけーこ自身、彼女に対するあきらの態度が毎回“適当すぎる”のを疑問に思っていた時期があった。
「なんであきらって私に対して、いつも扱いが雑なんだ?」
確かに母である私の目から見ていてもその通りで、返事も適当なら妙な素っ気なさまであった。そしてそれは、およそ母親の友人に接する時の距離感とは思えなかった。
そこでけーこは、彼女自身の過去世を次々と探っていくことにした。……というのも、無許可であきらのアカシックを霊視するのは不法侵入と同じこと。当然、「上からの許可が降りなかった」とはその当時のけーこの談。
トントン、
「あきらいる?」
トントン、
「あきらいる?」
過去世の記録を一つ一つノックしながら探ること数回。とうとうその中の一つに、かつてのあきらを見つけたらしい。
……
「ジュンー、ほら、行くよー。」
「待ってお姉ちゃん。」
「まったくもう。」
なんと二人は過去世において、とある男性の守護につく、座敷童子のような精霊のような肉体を持たない姉弟をやっていたということで、あろうことかあきらのほうが姉だった。
今世、私にも弟がいるからわかってしまう。往々にして姉というのは弟という生き物に対し、何故だか要らない“母親感”を発動してしまう。
「弟は、お姉ちゃんである私の言うことを聞いていればそれでいいの!」
その名残りが、弟であったけーこに対するあきらの態度を現在までもデカくさせていた。
……
「聞いてよあきら。今日、けーこが店でイケメン目の前にして変だったんだよ。」
「ああ?何言ってんの、あの人はいつだって変でしょ。」
もう一度改めて書かせてもらうと、あきらにとってのけーことは、あくまでも自分の母親の友人である。
written by ひみ
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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。
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この話は少し前に書き上げていて、いざという時のストックにしようと思ってたんです。
ほんとあきらってけーこに対して、
「え?ああ、うん。あーはいはい。」みたいなかんじ。
それが昨日の、meetoo shipにあきらもいるよって話を書くことになったらこっちも急に載せたくなりまして。
そしたら明日って、2022.2.22だ。
明日の話のタイミングのために、ここでこれを載せる流れが来たか。
相変わらず私の魂は、ちまちま凝ったギミックが好きだな笑