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第139話 何度も何度も、何度も何度も




 一晩泣きながら眠ったことで、今まで表面にあった分の嫉妬がかなり軽くなっていた。
 ウエサク以降、身体はいつも不思議なエネルギーの動きを感知し続けているけど、この日はいつにも増して、背骨や喉の中を清涼感のある気がスースー頭頂に向かって流れていて、“循環”の状態がいいことがわかった。
 そうして朝、久しぶりに少しだけ意識がすっきりすると、その日は今までにない自分に出会えた。

 ……これは、昨日の発見はすごかったのかも!

 午前中のやることを大急ぎで終わらせると、午後になってもありがたいことにその勢いは止まらなかった。そしてそのまま、けーこにLINEを入れた。


「すごいことに気づいた!」

「はいw」

「お昼終わったらウチ来られる?」

「いいよー。タバコ吸ったら行くね。」


 雑貨店で買った、クマの耳つきスリッパを履いてもらった。これだけ近くに住んでいても、普段けーこが玄関を越えて家の中まで上がることはなく、実のところ彼女が我が家で靴を脱ぐのは五年ぶりくらいになるのではないだろうか。それを私のほうから家に誘う日が来ることになるとは、自分でも信じられないことだった。

 彼女がやって来たタイミングでは、ティーポットにはさっき淹れた紅茶がまだ半分以上残っていた。コースターの上に、カップだけを新しく出した。

「あのね。
今私、感情を毎日深く視ているんだけどね。
……私、昔は自分には嫉妬って無いものだと思ってたんだけど、私、本当はけーこにたくさん嫉妬してたんだよ。」

 ぽつりぽつりと、それまで深く閉じ込めていた本当の感情を表に出した。

「その子は口にガムテープを貼っていて、それ見てごめんって苦しくなったんだよね。ちゃんとけーこに言わなきゃって……。」


 結局、最後まで口を挟まずに私の話を聞いてくれたけーこは、長期にわたる私の嫉妬心に対して怒ったり咎めたりすることもなく、あっさり、そしておおらかに受け入れてくれた。

 そのあとは、お互いに今までと変わらないくだらないお喋りをして過ごした。そうして最後は、あきらのお迎えに行かなければならない時間を五分ほどオーバーしてから、玄関前で解散となった。

……

「『嫉妬』、あのね。今日、私ね。

私が嫉妬してた人に、『嫉妬』の話をしたんだよ。」

 心の奥のほうで、目を見開いて、息を飲むような感覚があった。

「嫉妬してた人に、嫉妬のことをお話ししたの?」

「そうなの。“私、あなたに嫉妬してました”って、嫉妬の話をしたんだよ。」

「嫉妬の話、嫉妬してた人に話したの?」

「そう。今日ね、嫉妬してた人にね、私、嫉妬の話をしたの。」

「ええー?嫉妬してた人に、嫉妬のことをお話しをしたの?」

「そうなの。私、嫉妬してた人に、嫉妬のことを話したんだよ。」

「嫉妬のこと、嫉妬してた人にお話ししたの?」……

……ザザー、ザザーと、皮膚の表面が波打った。長い時間をかけて、私は『嫉妬』に同じ話を繰り返し聞かせ、すると嫉妬はその度に息を飲み、何度も何度もそのことを私に確認したがった。


 その晩は、夜中に寝ている間にも眠りが浅い状態になると、嫉妬の意識が繰り返しさざなみとなって表皮を駆け巡っていくのが伝わった。
 それと同時に体内では、普段の睡眠中ではおとなしい微細なエネルギーが動き回っていた。まるでそれは、体が保持する水分が潮の満ち引きのように集まっては散り、散っては集まってくるような、とても不思議な感覚だった。

 寝ぼけたままで、心の中で小さな『嫉妬』を抱き寄せると、コプンと小さな呼気があがった。




written by ひみ

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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。

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突然ですが問題です。
人が何度も同じ曲を聴きたがったり、暇さえあればずっと同じゲームなどをしたがるのはなぜでしょう?

今日のお話で、私の『嫉妬』は何度も自分の存在意義を私に確認してきました。

よく、「感情を飽きるまで感じ尽くすとその感情は満足して消える」という話、聞いたことはありませんか?

感情もエゴもみんな繋がっているので、それぞれきちんと感じ尽くすことによって満足して統合されていきます。

なのでこの時私は、“初めて話すことのように”、何度も嫉妬に向き合いました。

だから、ある曲を聴いて涙が出るのなら、繰り返し聴くことをお勧めします。
あることを思い出してムカついてしょうがないなら、繰り返し思い出すことをお勧めします。

ゲーム中毒の人は、たぶんゲームとゲームの間に『罪悪感』とか『自己否定感』とかたくさん見て見ぬ振りしてると思うけど、その状態の人に「闇を視なさい」なんて無理だから、飽きるまでゲームをやり尽くすことが結果、次に進める最短だったりします。
気が遠くなりそうだけどね。

『怖い』
『恥ずかしい』
『面倒くさい』などなど。
ぜんぶ、やりきってください。

潜在意識の書き換えには、繰り返しが欠かせません。
何度も。何度も。

たぶんあなたが思ってる、その百倍くらいかな。



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←今までのお話はこちら

→第140話 鏡に映った自縄自縛

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