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第91話 航海に馳せる夢


あれから一週間が経とうとしていた。

「ツインレイをやめない」と決心してはみたものの、未だにたくさんの先生との思い出が亡霊のように私を支配していた。職員室で、最後の最後に私の寒さを気遣うなんて、あの人の優しさは罪だと思った。

昨日だって起きる間際に「待っていてね。」と言われてつい喜んでしまったけど、現実に彼が目の前にいるわけでもなくて、反動から日中は悲しみに呑まれてどうしようもなくなってしまった。

ツインレイの分離期間って、本当一体何なの?

「サイレント」と言われる期間の入り口に立ち、これからの茫漠(ぼうばく)とした時間を想像しては落ち込んだ。まだ未体験で未知ゆえに、疑問と共に嘆きが絶えなかった。

…………


そんな感じでスサナル先生に気持ちを持っていかれている一方で、旦那が出て行った後の部屋に対しては、強烈な違和感を抱き始めていた。長く使って“へたれて”しまったリビングのソファーや、お揃いだったベッドの買い替えも徐々に始めることにした。

財産分与にものすごく恵まれた訳ではなく、むしろ学費などのことを考えると慎重なやり繰りが求められていた。けれども“精気を奪われることがわかっている物”に対して、そのまま使い続けることなどできなかった。
それらが視界に入った時の、「ああ、これは旦那とこの時に買って」とか、「これは旦那がこの辺にビールをひっかけて」とか、そういう記憶に縛られる方が一つ一つ不愉快だったし、実際に憑依を誘発しかねないと考えた。(※)

いくつかの家具や布類は処分し、またいくつかは洗濯したり、入念に拭き掃除をすることで「気」の入れ替えをしていった。そして買い物も、お店を何軒も回っても気にいるものが無かったり、あるいはさすがに手が出なくて諦めたりも必要で、それなりに難しさを感じていた。
それでも、どれだけ時間をかけても自分の気持ちに嘘つかないで、本心から欲しいものを選ぼうと決めていた。「自分自身が求める『感度』」を尊重することを、この機会に練習しようと思ったのだ。

そうやって試行錯誤しながら店舗やネットを見ていった中で、とあるサイトで金色の船の置物を見つけた。
美しいガラスと繊細な金属でできた、手のひらの半分くらいの小さな帆船(はんせん)。ちょうどあきらの副賞だった遊覧船乗船をきっかけに、それまで興味がなかったはずの船に急に惹かれるものを感じて、一目惚れの勢いで買ってしまった。

白い小箱から取り出してベッドサイドに置いてみると、金属もガラスもキラキラと反射して美しい。角度を変えて眺めているだけで、どこか遠い海の上へと、まるで現実逃避の旅に連れ出してくれるような感じがした。

それからさらに一週間ほどが経ち、その頃までに「これは」と思えたツインレイサイトでは、有料記事も含めて2周目を読み終えて、自らの血肉とするため3周目に突入していた。

人は、たとえUFOなどのあり得ない物を目撃したとしても、時間と共に記憶を書き換え“まとも人間フィルター”を作って、見た記憶すらなかったことにしてしまえる生き物。自分にとって大切に覚えておきたいこと、学んでいきたいことは、定着するまで繰り返す。ましてサイレント突破なんていう、経験者からの明確な導き無くしては難しい道への挑戦ならば、結局のところはそれが一番近道なのだ。

『毎瞬毎瞬自分の感情を観察し、気分をニュートラルに戻しておくこと。』 

そうすると、リラックスして空いたスペースの分、エネルギーがたくさん流れ込んでくるのだとそのサイトは教えてくれる。読み込むたびに段々と、実際リラックスがとても大切なのだと腑に落ちてくる。

風を受ける金色の帆船を眺めながら、自分の感覚を研ぎ澄ませるように深呼吸すると、ありったけの笑顔を込めて、スサナル先生にニコニコマークを送ってみた。すると自分の意思に反して、どこから現れたのかわからないまま、婚約指輪が入った箱まで一緒に彼に送ってしまった!

「わっ」と一人で狼狽えて、ちょっとだけ椅子から飛び上がった。
私の“エゴ”をまんまと利用した、高次元のイタズラだろうか。だけどまだ、今の状態の私や先生では、その箱を開けられないということも不思議と理解していた。

愛する気持ちは胸にしまって、赤い糸の繋がりだけは見失わないようにしっかり掴んで。
今は怖さがいっぱいで足がすくみ、ガタガタ震えて仕方がないけど、たった一人、この広い海へ飛び込むのだと覚悟する。

その決意に応えるように、人知れずこの金色の船はやがてこっそり向きを変え、“故郷への帰り道”への意外な進路を取り始めていた。





※不用品の処分…物は、使っていなくても念の依代(よりしろ)として作用し続けます。相手の念を祓いのけられるほどあなたが強い光をお持ちか、もしくはある程度相手と統合できているなら持ち続けても影響ありませんが、そうじゃない限り処分するか、念を取り除くかをお勧めします。
(処分するのに“腰が重い”と感じる時点で、憑依体からの「これを捨てられては困る」に呑まれていると考えてください。)
物に残った念の遠隔ヒーリングや供養もできるので、お困りならmeetooにご相談くださいね。




written by ひみ

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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。




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