第175話 迷路
もうこれ以上、けーことは深く関わらないようにしようと決めたばかりだったけど、深夜再びタケくんの意識がやってきたことで堪らず彼女に抗議のLINEを送りつけた。
「昨日の夜中、スサナル先生の意識に繋がろうとするたびに、タケくんが割って入るように飛んできた。
“タケ。タケ。”って自分の名前のアピールを続けるから少し浄化しようとしたんだけど、そうすると今度はけーこの意識が私とタケくんを見にやってくるの。
昨日の昼間もタケくんから、『どうしてもあなたがいい』って二回も言われてしまったんだよ?それで昨夜は、『でも本心は違うでしょ?』って伝えると自分でもそのことをわかってる様子で、だからあの人自身もすごく苦しんでいたんだよ。
一晩何度もそれの繰り返し。
私がタケくんから話を聞こうとするたびにけーこが追いかけてくるからちっとも進まなくて、そしたらスサナル先生が、『自分が話を聞いてくる。』って言って、タケくんの方へ飛んでいってくれた。どんな話がなされたのかはわからないけど。
放っといていいって言うけど、けーこはタケくんから逃げてる。向き合うことから逃げてる。」
そんなことを書き込んでからしばらくすると、やがて彼女から返信が届いた。
「私、こないだひみに『タケくんとの椅子取りゲームに勝った』って送ったのあったでしょ。あれ本当はこういうことだったんだよ。
『私の人生の時間は有限で、だからこそ自分自身が楽しめないならあなたであっても必要ない。私は私自身が楽しむことを諦めないし、五感を感じられない世界は意味がない。だからその足枷になるのなら、あなたであっても出会いたくない。』って本人にそう言って、一度タケくんと解散した。
なるほどね。私は一旦あの人とは別々の道へ行こうとしたところだったけど、今回はひみに止められたってかんじかな。
統合か。ちゃんと生還するからさ。うん。私は私でやるから大丈夫だから。」
けーこはわかってない。
かつて彼女の前に現れた男性がけーこのツインレイかもしれないって思った時には、私は自分のことのようにそれを喜んだ。
結局その人は本物ではなかったけど、だからこそタケくんが現れた時。その時には私の霊的感度も上がり、思考以上に二人がツインレイだと実感できて本当に嬉しかったのに。けーこにも私と同じように、タケくんの瞳に広がる宇宙空間の美しさを感じてほしいって願ってるのに……。
私にとってのスサナル先生とは世界を広げてくれた人。例え中学校で顔を合わせるだけの間柄だったとしても、モノクロだった私の世界にほんの少しだけど色がついた。人間意識の五感以上の五感をたくさん体験させてもらってきた。
だったら何故、けーこはタケくんを『足枷』だと、そんな風に決めつけてしまうんだろう。二人だからこそ広がる世界だってちゃんと存在してるのに。
もうムカつく!いい加減ムカつく!
沸々と怒りが湧くと、やがて自分がおかしくなった。
一旦タケくんを切り離し、けーこのことも切り離し、自分自身の『怒り』や『憎しみ』にフォーカスする。ところがどれほど深く潜ってもどれほど光を当てようとも、得体の知れない闇の中から怒りが出てきて私を飲み込もうと付け狙われる。感情体、ウニヒピリ、エゴセルフに魂。そのどこに光を当ててみても、いつまで経ってもどこにも答えが見つからずにいた。
おかしい、変だ。
この『怒り』や『憎しみ』の原因がまるでわからない。一体何がこんなにも、私の中に燻っているんだろう。
さらに集中して感情を視尽くす。
わからない!出口がない!
なんでこんなに直視しても、けーこに対する怒りが途切れることがないんだろう。もう、助けて、誰か助けて!!
半分悔しさでいっぱいになりながらベッドに潜り込むと、またもタケくんの意識に飲まれ、さらにそれをけーこがじっと見ている。
一晩そんな状態で過ごすと、浄化の反動で微熱の寒さに震えながら“この怒りの原因はタケくんの憑依そのものだ”とようやく確信するに至った。
ふざけんな!毎回毎回ふざけんな!!
朝になっても寝不足でクマが酷かった。それからもう一度だけ、けーこに長文LINEを送った。
「……だから酷い憑依で一体化して飲まれ、タケくんの感情が私自身のものになってる。彼の感情の内訳は主に怒りと絶望。ただ、けーこがツインをやらないというならそれはあなたの自由だから、もしその時は何年かかるかわからなくてもこの人の浄化も私が全部面倒視る。」
それは意地でもなんでもなく、本当に全て背負う気でいた。だったら文句はないだろう。
どんな反論がやってきても全て迎撃する自信があった。「どこから来ても受けて立つ」と、けーこからの返信を待ち構えた。
written by ひみ
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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。
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奇しくもこの少し前、私自身のハイヤーセルフにこんなことを尋ねていました。
「もしも、宇宙の秩序を破る有り得ないサイズの大きな闇にそのほとんどを飲まれてしまったらどうするの?脱出不可能なほど光がなくて、僅かな光すら探し出せないほどに闇の世界になってしまったらどうするの?」
すると私のハイヤーセルフは、「例えそうであっても、絶望的に思えても、ひとつひとつ向き合いどれほどの転生と時間を費やしても、やはり地道にやり直すだけ。」
それを聞いて、ああ、私はどこまでも私なんだと思いました。
さてさて。いつにも増して不穏ですが、お話は続きますよ♪
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