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秘密の花園 改訂版 第三話
「マコ、おはよう。体調はどう?今日は出掛けられる?」
顔を隠すように俯き、後ろに回した手で背中にあった枕を持ち上げながら姿勢を整えるとマコはふっと息を吐いた。
トリはベッドの横の小さなテーブルの上に庭で摘んできた花を花瓶に入れてそっと置いてから、マコの近くに静かに腰を下ろした。
「きれい、いつもありがとう」
マコは花を見て言った。
「その指、どうしたの?」
ベッドから身を乗り出し、トリの
秘密の花園 改訂版 第二話
化け物がいる。トリはそう思った。身体を少しも動かすことができずに、鳩の姿をした老人の鋭く鈍い視線を浴びたあとには意識さえ遠のいていくように感じた。
グッと力を入れ握りしめたトリの手のひらから血が滴り落ちていく。爪は尖り、肉に食い込み、それはまるで目の前にいる老人の羽の生えた皺だらけの手と同じように見えた。
トリは手紙を握りしめたまま身動きが取れなくなり、その場に立ち尽くしていた。身体は次第に
秘密の花園 改訂版 第一話
満月の夜。
少女は艶のあるチーク材で作られた机の引き出しの中から、一通の手紙を取り出した。黄ばんだ色をしたその手紙は月の明かりに照らされ、より一層不気味さを増している。
宛先に書かれている住所に見覚えはなく、少女は不安に思いながらも出かける準備をした。
「宵町月乃一丁目?」
しばらくすると黒い雲が月を覆い、雨が降り出してきた。
少女は傘も持たずに、宛先の住所を調べるため郵便局へと