10人の妊婦がいても1ヶ月で赤ん坊は生まれない
ソフトウェア開発においてブルックスの法則という法則がある。「遅れているソフトウェアプロジェクトへの要員追加は、プロジェクトをさらに遅らせるだけである」というものである。フレデリック・ブルックスの著書、『人月の神話』(にんげつのしんわ、The Mythical Man-Month: Essays on Software Engineering)において紹介されたものだ。
ブルックスの法則の詳細についてはWkipediaや書籍を参照していただきたいが、例えとして「10人の妊婦がいても1ヶ月で赤ん坊は生まれない」というものがある。工場におけるライン作業とは異なり、ソフトウェア開発のようなある程度の創造性を要求される業務では、人を増員すればその分だけ作業が進むわけではない。1人で10ヶ月かかる開発作業が、10人だと1ヶ月で終わるわけではないのだ。
意味合いは少々異なるが、基礎科学研究も同様なことが言える。研究活動には、並行して行うことができるもの(人を増やしただけ進むもの)と、時間的・物理的に直列に、一歩一歩、行わなければならないものがある。新規性の高い研究ほど後者の場合が多いと思う。まだ答えがわからない課題に取り組む場合、しばしば、思わぬ所にボトルネック(隘路)やピットフォール(落とし穴)がある。そして、それらは一つ一つ愚直に解決していくしかないのだ。