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ヨガは自分の体と願いに向き合うツール

食器棚の上に、圧力なべや土鍋を置いている。背の低い私は棚の上の重たい鍋を取ろうとするとき、腰のあたりが辛く、グキっとなりそうになるのをかばっているのに気づいた。

自分の体に起きているのは、重たい鍋が落ちてきたら危ないぞと、構えて体が硬くなっている。また、鍋が高いところにあることに意識が向いて、いきなり手だけを伸ばしていることだった。

では、やり方を変えてみよう。まず立って、体の前側が頭から足までつながってるのを思い出す。足を一歩踏み出しながら、頭と上半身をスムーズに前へ。後ろ足で軽く押し出すと同時に、腕を肘と一緒にふわっと持ち上げて、まずはそっと鍋に触れる。鍋を包み込むように持ったら、体と一緒に肘を引き寄せながら、ゆっくりおろしてくる。

文章にするとなんだか長ったらしくて「たかが鍋をおろすのに、そんなに悠長なことやってられない」と思うかもしれない。でも、試しにやってみて欲しい。腰が楽だし、動きが断然スムーズになるから。

日常生活というのは、たいがい毎日繰り返し。だから同じ動きや、座りっぱなし、立ちっぱなしを続けることが多くなる。積もり積もって体のどこかに負担をかけてしまうのだ。それが慢性の腰痛や肩こりなどの原因になる。

自分の体をよく知ること、体の感覚に繊細になること。そのためにヨガはとてもいいツール。ヨガは自分と向き合う練習だから。

ヨガの目的は完璧なポーズを完成させることじゃない。手を伸ばしたり、体を反らせたり、バランスをとったりといろいろな動きをしながら、自分の体に向き合い、観察し、起きていることを受け止めるのが目的だ。

例えば、四つん這いになって、右足だけすっと後ろに伸ばし、ゆっくり踏み込んでみよう。ふくらはぎの硬さに気づき、繰り返し踏み込むと、じわじわと伸びてくる。どれだけ伸びるかを誰かと比べなくていいし、硬い体がダメだなどと、ジャッジする必要もない。

ヨガマットの上だけでなく、日常の中でもこの意識を持ち続けてみる。例えば、忙しさに追われているとき「今、私は焦っている」と気づく。呼吸が早くなったり、肩が重くなるかもしれない。体の変化で「はは、焦ってるんだ」っていったん受け入れてみよう。

そしてそれから「じゃあ、どうしたい?」と自分に問いかける。
一息ついたら、いま必要なことは何だろう。何を望んでいるんだろうと、「願い」に目を向けてみて欲しい。思いのほか落ち着いて、気持ちも体も楽になるから。


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