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「フードロス」は飢餓を生んでいるのか

 こんにちは。medien-lienのこーすけです。ハロウィンも終わり、コンビニ各社の飾り付けは一瞬でクリスマスに衣替え、という季節でしょうか(筆者はマレーシアにいるので想像です)。毎年こういった○○商戦で話題となるのが、その時節に向け用意されたものの、売れずに廃棄される食品、「フードロス」です。ケロケロ見聞録11月放送では、フードロスをテーマに、問題の核心に迫りました。年末に向け集まりも増える時期、買い出しに行く前にぜひご一読ください。

この記事は、九州大学の現役学生が制作するラジオ番組「ケロケロ見聞録」(ラブエフエム国際放送、毎月第1日曜よる10時から)をより深く楽しめる情報を提供するものです。

この記事に興味をもって下さった方は、ぜひ各種サービスでケロケロ見聞録をお楽しみください!


1.その問題、本当に問題?

 11月放送回の起点となった問題提起は、「結局フードロスは何が問題なのか、いまいち分からない」というもの。出演したハルとりさは共に食育として「もったいない」という教育を受けている一方、その本質を考えた経験はないと言います。りさはアルバイト中に目撃した大規模なフードロスをきっかけに興味を持ち始めたと言いますが、その理由もやはり「罪悪感を感じる」というものでした。

 放送内ではフードロス削減のゴールとして、SDGs(持続可能な開発目標)の12番目、「つくる責任、つかう責任」が登場しました。この目標はゴミ全般に関するものですが、2030年までにフードロスを半減させるという項目も設けられています。また、すべての国が取り組むべき課題であるとしつつも、先進国がリーダーシップを持って取り組むべきだ、とも述べられています。
 放送内では、りさが度々「想像力」というワードを用いていました。

目的や理由プラスで、そのおかげでどうなったのかを広めていくことが大事だと思う。こういう成果が得られた、という実感があると、やる気が生まれそう

ラブエフエム国際放送 「ケロケロ見聞録」2024年11月放送より

想像力をかき立てることで、誰かの苦しみや、起こっている状況の悪さを、また努力の結果好転した未来を共有できるようになるかもしれない。実際に自分の目で大量廃棄を目にした、りさだからこそ紡げた言葉に感じました。

↑りさの実体験はこちらから

2.フードロス削減は誰を救うのか?

 では、一緒に想像してみましょう。フードロス削減は誰のためのもので、誰を救うのでしょうか。

 フードロスやSDGs12に関するウェブページをいくつか参照すると、「フードロスと食糧危機」を結び付けて記述しているものが目につきます。世界中では年間これだけの食料が捨てられていて、飢餓がこんなに起きている!という文章は、確かにセンセーショナルです。

 しかし、この文章にみなさんは違和感を覚えないでしょうか。簡単に言えば、飽食が飢餓を生み出すという論理は少し破綻しているように見えるのです。番組内でも紹介しましたが、日本では年間472万トンの食品が廃棄されています(2022年分の推計値、環境省)。これは放送内でりさが指摘したように「見栄え」や「提供速度の向上」などといったマーケティング戦略の結果が生んだ過剰な生産の結果といえます。

では、この廃棄を減らせば資源の無駄遣いが減り、その分が飢餓に苦しむ貧困層に届くのか?答えは恐らくNOです。食料生産の過剰分が減ることで、資源保護にはつながります。水産資源などにおいては、長期的に漁獲量が回復し価格下落が起こるかもしれません。ただ、相対的貧困に苦しむ人の多くはこうした「食材」を購入し、調理するという余裕がありません。まとまった金額で長期の食材を確保することが厳しい人にとっては、大量生産によって安く提供されるコンビニ弁当などが第一の選択肢となってしまいます。

フードドライブ・バンクも同じです。提供できる食品の数には限りがありますし、一時的な支援自体が相対的貧困を解決できるわけではないのです。

3.行間を示す広報を

 フードロスに関わらず、こうした「目的と手段の乖離」は、社会課題の啓発において頻繁に起こりがちです。食料廃棄に対する「もったいなさ」という感情は大事にすべきですが、「過剰」と「不足」が同じ分野で起こっているからと言って、一挙両得のように解決できるような印象を与えるのは、不正確だと思います。

国内の問題と国外の問題は必ずしもリンクしないし、その点でメーカーへ批判を向けることこそ不必要な労力だと言えます。かつてマリーアントワネットは「パンが無いのならケーキを食べればいいじゃない」と発言したとされています。では、王家が余らせているケーキを配ればフランス国民の貧困が解決されたかと言えば、そうではありません。

 りさが言うように、「想像力」をより働かせる広報方法が求められるように感じます。つまり、間接的に解決できる問題を提示するような形で啓発を行う、ということです。例えば、フードロスの削減はごみ焼却の量を減らすことを意味します。ごみを燃やすことで出るCO2の削減にも繋がるうえに、容量不足が問題視されている埋立地の寿命を延ばすことにも貢献できます。

 フードドライブ・バンクには直接的な支援以上のメリットがあります。それは、「やさしさとの関わり」です。

 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが2020年に実施したアンケートでは、「居住都道府県の子ども貧困対策計画を知っているか」という質問に対し、大人世代の7割が「知らない」と回答しています。

ピンクが「内容までよく知っている」黄色が「内容について少し知っている」緑が「名前だけは聞いたことがある」青が「聞いたことがない」

実際の支援策自体は非課税世帯へのポスティングなどで周知されているようですが、存在自体を知らず、「孤独である」と閉鎖的になってしまうケースが存在することも事実です。

フードバンクやフードドライブは、登録などの面倒な手続きがほぼ不要で、無料で食品を受け取れるという点でハードルが低くなっています。私自身、何度か受け渡しのボランティアを行いましたが、沢山のお米や野菜を受け取った皆さんは、きまずい雰囲気もなく、笑顔で帰られていました。

参加したフードドライブの様子。お米がたくさん。

 フードバンクは確かに貧困そのものからの脱出手段を提供することは難しいかもしれません。しかし、こうした支援策は横の繋がりが強く、新たな支援への足掛かりになる可能性も秘めています。即効性だけでないメリットを示すことで、こうした支援策が長く、広く続いていくことを願っています。

 そして、そのためにも「行間を伝える広報策」がスタンダードとなることを、強く訴えかけていければと思います。短絡的に、直感的に伝わりそうなプロセスや問題ではなく、なぜこの問題が重要なのかを、丁寧に、粘り強く訴えることが、最終的には解決の近道なのではないでしょうか。

 最後に、フードバンクやフードドライブの受け渡し場所としてよく用いられるこども食堂について紹介します。「こども食堂」という名前の性質上、大人や大学生は関わりづらさを感じますが、一部を除けば誰でもご飯を食べに行くことが可能です(年齢に応じて有料の場合があります)。支援に興味がでたら、その支援がどんな笑顔をもたらしているかを見に行くことも、おすすめの行動です。

↑こども食堂のマップはこちらから

4.SNS展開

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