20日間のインド視察〜ビジネス・医療・お坊さんのもとでの学び〜(10分)
旅の始まり
こんにちは。旅を終え落ち着いたところで、旅での学び、気づきを書きます。
まず、この旅は2023年の目標から生まれました。
https://twitter.com/tektek_medical/status/1610110299629289472?s=20
1月時点で、何も決まっておりませんでしたが
目標を立てるとすぐにチャンスは舞い込んできました🕊️
私が所属してるIHL(ヘルスケアリーダーシップのコミュニティ)にて、インド視察の話があり、見た瞬間に即決で「運営として手伝います!」と連絡しました!
そして、持ち前のフットワークの軽さを活かして、+αでイギリス・スウェーデン・イギリスの友人・恩師ジョンさんからご紹介頂いたシンガポールの院長先生に会いに行こう!と思い、リュックひとつで世界を飛び回ってきました✈️
1. インド🇮🇳_ビジネス編
インド視察での訪問先
・豊田/セコム合同設立『Sakra World Hospital』
・スラムでの医療を行う『Helpage India』
・世界最先端の(株)病院『Narayana hospital』
・日本企業のインド進出をサポートする『JETRO』
・富士フィルムが展開する健診センター『Nura』
・Beyond Next Ventures 代表 伊藤毅さん(VC)
・Incubate Fund India 代表 村上矢さん(VC)
・インド仏教徒2億人のトップ、佐々井秀嶺さん
1-1. インドはここから
「14億人を突破!世界で1番の人口に!インド来るぞ!」と言われていますが、インドに訪れて、あと5年10年でもっと盛り上がると実感しました🔥
その理由は、14億人が日本の東京のように一極集中しているのではなく、まだ全地域にバラバラに分散しており、都市へ一極集中していないからです。
1番の大都市デリーで、2,587万人しかいません。
(令和5年時点で、東京都は約1400万人)
交通網の発展、都市化、核家族化の加速
国土が広いことで、インフラ整備は全く追いついていないのです。現在、移動インフラの整備が急務で、都市部にやっと車道が完成しつつある段階です。歩道なんてものはありませんでした。まさしくこんな感じ👇
今から、高速道路などのインフラ整備が進み、田舎から都市へのアクセスが改善されることで、若者の出稼ぎが増え、都市人口が急増することが予想されています。この一極集中により、ビジネスは活発化する一方で、ベッドタウンの形成や核家族化など、今、日本が直面している問題が起こり始まります。
1-2. インド盛り上がってるけど、稼げるの?
準富裕層が増えてきた!と言われていますが・・・
職業別年収(2022年)
・土木技術者 : 55万円
・運用管理者 : 120万円
・プロジェクトマネージャー : 220万円
・ソフトウェア開発者 : 630万円
・ソフトウェア開発者・プログラマー: 1,200万円
年収は、職種やエリアによって大きく変わります。
実際のところ、平均年収は200万円と言われており、家計に余剰金があるわけではありません。つまり、贅沢品を買える人は少ない国ということです。実際、カラーテレビ以外の普及率はまだまだ低いということです。
ではなぜ、物が売れない国にグローバル企業が次々と進出するのでしょうか?その目的は、14億という巨大マーケットでのビックデータ回収と、インド工科大学にいる超一流エンジニアのスカウトです。
グローバル企業にとって、現在のインドはサービスを売り込む国ではなく、データを集めAIの精度を上げサービスを改善させるための国なのです。
そして、もうひとつの驚きの事実が・・・
なんと大卒の就職率はたったの3割!!!
14億人いるが故に、就職受け入れ先の数が足りていない!大学卒業後、院や専門学校などに再入学し、手に職をつけて就職するのが現状で、大卒の優秀な人材がフリーターという超大国ならではの現象も起きています。
GDPから見るインドについてはこちら👇
2. インド🇮🇳_ヘルスケア編
2-1. アジアで(株)病院が急成長する理由
そもそも、医療を提供するには以下の2点必要です。
病院建設/最先端の医療機器/医薬品
高度に教育された医療従事者
このためには、多大な資金が必要となります。
日本は高度経済成長期を通して、病院が充実した後に医療ニーズが増加しました。しかし、新興国ではグローバル化に伴い医療需要が経済成長よりも早く顕在化したことで 、発展途中の国には病院を作る資金力がなかったのです。
これらの背景から、インドの病院は株式会社化し、外国から資金調達を行うことで急成長してきた。
著書:医療で「稼ぐこと」は悪いことなのか?より
本来、病院を含めたインフラを外資に依存することは国防上の危険があるため法律上の制限をかける国が多い中、インドやシンガポールでは外資出資上限を100%という戦略を取っています。
2−2. Sakura world Hospital で聞いたインド医療の現状
聞いたことを、下記に箇条書きでまとめます。
● 国民の半分が医療にお金を使わない ⁉︎
インドでは、平均年齢がまだ28歳ということも理由にありますが、ヘルスケアに1ルピーも使っていない人が14億人のうち半分いるみたいです。
● 外来と手術、病院の使い分け。
公立病院の外来は無料で利用できますが、待ち時間が長くサービスに課題があるため、多くの患者さんが私立病院を選ぶことがあります。保険適用外の私立病院でも、外来の費用は500ルピー(約800円)と手頃です。しかし、このような料金設定のためインドのクリニック収益は低く、手術に関して高額になるケースが多いので医療費の安い公的病院を利用する患者さんが多いです。
● 相見積もりが当たり前の世界
救急の窓口が完全に整備されていないため、患者は複数の救急車事業者に連絡を取る必要があります。一番最初に到着した救急車を利用するのが一般的で、遅れて到着した救急車は他の車に先を越されることが多いです。
また手術においても、患者さんは多くの病院で料金を比較するため、手術日が決まっていても、手術当日になって患者さんが現れないことがあるそうです。
● 先端機器がマーケティングに?
患者さんは最新の医療機器がある病院を好む傾向があり、診療科を問わずそのような病院を選びます。多くの患者が複数の病院で相見積もりするため、単なる料金では差別化が難しい。そのため、病院は有名な医師の存在や最新機器の導入で差別化し、これが広報や集客の手段となっています。
● 医療費未払い防止のために、検査費用は前払い
インドでは、治療や検査を受ける前に医療費を前払いするのが一般的です。例えば、外来受診で500ルピー、血液検査やCT検査前にそれぞれの料金が求められます。また、検査前に都度払いするという体制によって、受診した病院の血液検査が高い場合は、多くの患者は採血を外部の血液センターで受けるといった状況も生まれています。日本にはない面白い仕組みですね。
● 医療スタッフの質がバラバラ
インドの看護師や理学療法士は国家資格を必要とせず、学校卒業後すぐに就職が可能です。これにより医療スタッフの質が一定でないため、実際に現場で働いてもらうためには病院での教育研修が必要となっています。
● 医療のサービス意識
大手企業の従業員が無料の人間ドックという福利厚生を受けられるよう企業が提供しています。これにより、これらの従業員の医療リテラシーは高まっており、医療サービスへの要求も強いです。インドと日本の健診フローは異なります。日本では、全身の検査に1日をかけ、結果は1ヶ月後に報告されます。一方、インドでは午前中だけで全ての検査が完了し、同日のお昼には結果確認があり、午後には詳細な報告が医師から行われます。もし問診が10分以内で終わると、患者から「早すぎる!もっとちゃんと診て!」と怒られるそうです。
● 保険制度:モディケア
2018年8月にインド長寿化計画が始動、国家国民医療制度(PM-JAY)が創設された(通称:モディケア)。これが実施されることによって、これまで利用が限られていた約5億人の貧困層にも幅広く医療保険が適用されるようになりました。一家族に対して年間50万ルピー(日本円で70万円)を上限として支給される。医療費負担のできない家庭が多い中、医療アクセスが急速に改善しました。
● インドは、もう感染症で死ぬ国ではない!
死亡要因を1990年と2017年で比較すると、「心血管疾患」の増加が顕著である。
→予防の概念がないため、高血圧などの段階でスクリーニングされず虚血性心疾患や脳血管疾患で突然死する率が高い。
「虚血性心疾患」が死亡要因の1位であり、約15%を占め、先進国と同様に 「糖尿病」「慢性腎臓病」などの生活習慣病による死亡率も高くなっている。
2-3. 最先端医療とスラム医療
● 世界最先端の(株)病院『Narayana hospital』
視察の中で、時価総額3,600億円を超え、世界最大の心臓手術を行なうNarayana Hospital病院の創業者であるDr.Devi氏にお会いしてきました。
この病院、とんでもなく凄いんです。
特に、病院デジタル経営の話は衝撃的で、30あるグループ病院のデータは統合、EMRで一元管理、医師はスマホで担当患者の診療状況やAIによるリスク管理が行われ、600以上の医療機器からデータは自動連携されており、もう異次元でした🤯
どの患者さんに、"誰が"、"いつ"、"どんな処置"、を行ったのか全てデータで管理されています。例えば、なぜあの患者さんはこの検査の前に20分も待っているのか?という問題があれば、すぐに原因究明を行い、PDCAを回し続けることで、貧困層にも低価格の医療を提供することが実現しています。
また、病院横にはイノベーション施設も併設されており、ヘルスケアベンチャー企業がいつでも病院と連携しながら開発できるような環境も整備されていました。
訪問の中で、Shetty先生に実習させてください!とその場でお願いすると快諾して頂いたので、2024年はNarayanaHospitalで実習してきます( ̄^ ̄)ゞ
● スラムで医療を行うNGO法人『HelpAge India』
今回は、実際に見学させて頂いた無料医療サービスについて書きます。モバイル・ヘルスケア・ユニットという診療車に、医師、薬剤師、ソーシャルワーカーの3人体制で乗車。設備としては、バイタルを測る機器や注射器などの基本的な医療機器、70種類以上の薬が備えられています。
診療車は、スラム街を1日の午前と午後に1ヶ所ずつを回り、1ヶ月ごとに巡回します。1ヶ所あたり40-50人ほどの受診があり、対象疾患は、熱、咳、糖尿病、循環器を中心とした慢性疾患でした。事業は、基本、寄付で成り立っています。
また、これとは異なりますが広い国土中に病院建築が難しいことから移動医療ユニットも普及しています。農村部を中心にプライマリーケアを提供しています。このモバイルヘルスの問題点は、各エリアへの出張にあたり交通費が医療費の30%を占めていることです。
スラムでの医療やモバイルヘルスのモデルは、日本の僻地医療と似ている点が多かった印象です。僻地医療の現状については、以下に記載ありますので参考まで。
3. インド🇮🇳_お坊さん編
バンガロールでの視察後、私はナーグプルという第2級都市に立ち寄りました。ちょうど2023年9月にG20サミットが開催される場所でもあり、非常に盛り上がりを見せていました。ここに来た理由は、ある人に会うためでした。
ある人とは、インド仏教のトップに立つ佐々井秀嶺 氏(88歳)です。佐々井氏は、自殺未遂3回、32歳でインドへ渡り、ビザが下りず不法滞在で逮捕されるも民衆による60万人の署名により釈放、暗殺未遂3回を乗り越え、現在 1億5千万人の仏教徒最高指導者にいたります。
3-1. インドにおける宗教とは?
200m区画に4つの宗教が混在、多文化混合の国。
インドはもともと仏教の発祥地です。しかし、現在ヒンドゥー教徒が79.8%、イスラム教徒が14.2%、そして仏教徒は1%弱となっています。インドの憲法ではカースト制度は禁止されていますが、差別の意識は未だに深く根付いており、カースト最下層の「不可触民」の多くはこの不満から政府に無届けで仏教を信仰しています。実際のところ、インドには1億5千万人以上の仏教徒がいると言われています。
3-2. こころに残った仏教の教え
苦しみの根源は、執着である。
仏教は、苦しみからの解放、「その人が持つ苦しみ=執着していることは何か?」に着目している。その視点から人の悩みを聞いてみると、たしかに執着(思い込みや固定概念)から生まれている苦しみが多いと気づきました。諸行無常・諸法無我
「諸行無常」は全てのものが変わり続けること、「諸法無我」は不変の「我」は存在しないことを示す教え。これを理解すると、執着の無意味さがわかり、苦しみから解放される。我があると真愛、真幸にたどり着けない。
仏教の中心的な教えに「無我」という考えがあり、これは永続的で不変の「我」は存在しないという観点です。「我有」とは「我」が存在するという考え方を指します。「我有」は、自分を中心に世界を捉えるため、個人的な欲望や執着が強くなります。このような視点は真理から離れ、真の現実を見ることが難しくなります。真の愛や幸福は無私の心から生まれるものであるため、「我有」の考えは真愛や真幸を得にくいと言います。
3-3. 宗教は心を救う、医療では届かない領域。
お坊さんの日常に同行し、地域の家々を訪れると、家族たちはお坊さんの足に触れて涙を流していました。お坊さんの存在がどれほど大切で、背中を撫でてもらったり、手を握られるだけで心が救われている様子を目の当たりにし、心を強く打たれました。
また、日本人であることが尊敬される瞬間もありました。佐々井氏がトップの日本人であることや、過去に日本人の有方静恵さんが老人ホームを寄付するなど、多くの日本人がインドに貢献してきました。ナーグプルの地域で日本人に対する感謝の気持ちを知り、自分の知らないところで日本が感謝されてる事実をとても尊く感じました。
「ジャイビーム」という魔法の言葉
ジャイビーム!!!これは、インドの仏教徒たちの挨拶の言葉。インドの中央都市ナグプールで朝からインド人同士がこんな言葉で挨拶を交わされます。
僧院で過ごす中で、街の人々と人種も言語も異なる中でただ1つ「ジャイビーム」という挨拶を交わす。どこに行っても、見知らぬ人にも。この言葉には、挨拶以上の心の結びつきを感じ心地よいものでした。
オランダ・イギリス・シンガポールの旅を終えて
オランダでは、友人と合流し現地を案内してもらいました。チューリップに風車、綺麗な自然の街!というイメージを頭に膨らませて到着、いざ降り立ってみると…大麻の匂いが町全体に漂っていて、夜になると赤くライトアップされた風俗街という想像以上にディープな街でしたが、街並みはとても綺麗でまた行きたいと思う街でした。
● 社会福祉が充実していることが全てではない
スウェーデンの人にとって、教育や医療が無償であることは魅力的。しかし、それに伴い医療従事者の給料も低い。だから、卒後は給料が2倍の隣国ノルウェーに移ってしまう。 社会保障費が安いことは素晴らしいが、現場で働く人の給料が低いと、結果せっかく育てた優秀な人材が海外に逃げてしまう。これは、国家にとって大きな損失になる。日本でもこれから同じことが起きているのではないか?
シンガポールでは、恩師ジョンさんにRaffles Hospital Japan clinic 元田先生をご紹介いただき会いに行ってきました。シンガポールの医療制度もまた独特で、シンガポール建国の歴史にも触れながら、それはまた別の機に☺️
● 各国の国立美術館巡り、芸術は国家を反映する。
各国で美術館巡りをしていると、戦争で侵略された歴史や建国の話などが描かれています。例えば、オランダがインドネシアを植民地にしていた時代があり、現在でも交流は深い。そのため、オランダにはインドネシアの人が多かったりする。その背景を知って一歩踏み出すと、なぜ特定の国の人が多いのか、なぜ教育や医療が発展しているのか、この国の今を形づくるものが何かがよりリアルにわかって面白かったです。 美術や歴史に触れる重要性を改めて感じました。
● スクランブル交差点が日本の象徴であるわけ
インドは、人口も多ければ、車も多い。いつも大渋滞。
冗談抜きで、5秒に一度のクラクションが鳴っていました。
追い抜く時にBeeeep!!!、曲がる時にBeeeep!!!、邪魔な時にBeeeep!!!
インドでのクラクションは、”私はここにいるよ!気をつけて!”という意味合いで使われているように感じました。あっ、ちなみに車線という概念もありませんでした。3車線の道路に、平気で車が4〜5台並んでました笑、牛も歩いてます笑
初めはとてもうるさく感じていたのですが、インドを発つ頃にはもうこのクラクション音が聞けなくなるのかと、すこし寂しくなりました。
それと同時に、これってインドの文化なんじゃないか?とも感じました。海外の人が、渋谷のスクランブル交差点を見にくる理由に近いものを感じました。
何かそこにあるわけではないけれど、母国の日常からはかけ離れた異国での日常、そこに文化というものを感じているんだなぁ…と感じる瞬間でした。
● 日本の魅力を再発見
スウェーデンの友達と、大麻の匂いが漂うアムステルダムのカフェにて語り合っていて 「日本は癒される場所がたくさんあるよね。仕事は忙しいけど、温泉やサウナ、美味しいご飯とか。楽しい場所は多くても、ゆっくり癒されて休める場所を持つ国は少ないよ。」って聞いて、新鮮な意見に驚いた。
温泉、日本庭園、和室などをはじめ、癒しを得るための場所、サウナやマッサージなども身近にたくさん存在する。海外を見渡してみて、刺激を得る楽しい場所以上に、癒しを得る場所の貴重さを改めて感じた。
以上に加えて、皆さまの気になる話なども整理して公開していきたいと思いますので、もし、こんなことも知りたい!などあれば、お気軽にコメント下さい!
最後まで読んでいただきありがとうございました!!!
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