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オンライン資格確認の導入とその意義

現代社会ではあらゆる分野でデジタル化が進んでおり、オンラインによる資格確認もその一環です。特に医療や福祉の分野では、資格や身分を迅速かつ正確に確認することが重要です。オンライン資格確認の導入は、こうした課題を解決するものとして期待されています。

本稿では、オンライン資格確認の概念、導入の背景、オンライン資格確認の導入に必要な準備、補助金の活用、今後の展望と技術革新について解説します。

特に、医療・福祉関係者及び関連システムの導入を検討されている団体に有益な情報を提供することを目指しています。 


1. オンライン資格確認とは?

オンライン資格確認とは、マイナンバーカードや健康保険証などを使って、保険加入者の資格情報をオンラインで確認する仕組みです。
資格確認には以下の2つの方法があります。

  • マイナンバーカードと顔認証リーダー(*)を利用する方法

  • 被保険者番号や記号・番号を使用する方法

*マイナンバーカードから抽出した顔写真と、患者の顔をカメラで撮影し、本人確認を行います。

オンライン資格確認の基盤とシステムの連携

政府はオンライン資格確認システムに基づき、オンライン請求や電子カルテ情報の共有を含む医療情報プラットフォームの構築を進めています。

2023年4月、医療機関、クリニック、保険薬局におけるオンライン資格確認が義務化されました。2024年4月には、訪問看護ステーション(医療保険分)にもオンライン資格確認とオンライン請求システムが導入され、同年12月には訪問看護においても導入が義務化となる予定です。

このネットワークにより、データの正確性と迅速な情報共有が確保され、医療機関間の連携が強化されます。

参考:

2. 導入の背景と必要性

デジタル化の進展と医療サービス向上への期待

オンライン資格確認の導入の背景には、社会全体のデジタル化の進展と、迅速かつ正確な情報確認の必要性があります。特に、資格の改ざんや誤認が起こりやすい医療分野では、オンラインによる資格確認システムの信頼性が強く求められています。また、感染対策や非接触のニーズが高まったことも導入の後押しとなっています。

資格確認の効率化により患者の待ち時間が短縮され、より迅速な医療扶助への対応などができるようになり、医療業界全体の効率化が期待されます。また、オンライン資格確認を通じて、患者の同意のもと診療情報や医薬品(薬剤)情報を入手することができ、医療の質の向上にもつながります。

デジタル化の推進に伴い、医療にとどまらず、今後オンライン資格確認を導入する施設・業界がますます増えることが予想されます。

3. オンライン資格確認に必要な準備

オンライン資格確認に必要な機器としては、顔認証機能付きカードリーダー、資格確認用コンピューター、レセプトコンピューター、また、ネットワーク環境によっては、パソコンの設定に加えルーター等の配線が必要となります。

オンライン資格確認導入のための手続きとは?

オンライン資格確認の申し込みフローは、初めての方でもスムーズに手続きできるよう、いくつかのステップに分かれています。

(1) ポータルサイトでアカウントの作成
(2) 顔認証機能付きカードリーダーの申し込み
(3) オンライン資格確認の利用申請 / 電子証明書発行
(4) 補助金の申請

(1) ポータルサイトでアカウントの作成
普段医療機関で使用しているメールアドレスで登録します。画面上部の「初めてご利用になる方(アカウント登録)」をクリックし、次の画面で「仮登録メールを送信する」をクリックすると、登録したメールアドレスにアカウント登録用のURLが届きます。そのURLをクリックすると登録が完了します。

(2) 顔認証機能付きカードリーダーの申し込み
患者がオンライン資格確認をするための顔認証機能付きカードリーダーの申し込みを行います。カードリーダーの種類を決定し、ポータルサイトを通じてカードリーダーを申し込みます。

(3) オンライン資格確認の利用申請 / 電子証明書発行
オンライン資格確認の申し込みには、以下の4つの情報が必要です。

  • 通信回線種別(IP-VPN接続方式またはIP-sec+IKE接続方式のいずれか)

  • お客様ID(NTT回線をIP-VPN接続方式で利用の場合)

  • オンライン資格確認利用開始予定年月

  • 動作試験開始予定年月

ポータルサイトを通じてオンライン資格確認の導入申請が完了後、「電子証明書」をダウンロードして発行します。この手続きには「電子証明書取得に関する情報」が必要です。電子証明書は、データの送受信を行う際に接続するパソコン一台ごとに必要となります。

(4) 補助金の申請
補助金の申請(*)には以下の書類が必要です。「オンライン資格確認等事業完了報告書」は医療機関・薬局が作成し、領収書類はシステム会社から受け取ります。

  • 領収書の写し

  • 領収書内訳書の写し

  • オンライン資格確認等事業完了報告書

申請はポータルサイトから行います。ログイン後、「オンライン資格確認関係補助金申請」をクリックし、「総事業費」には導入に伴いかかった金額(補助金の対象となる分)を入力し、申請する補助金額を確認します。提出書類はPDFまたはZIP形式でまとめてアップロードし、内容を確定すれば補助金申請が完了します。

*補助金の申請に関しては、最終章「6. 機器・設備投資にかかる費用と補助金の活用」で詳しく紹介しています。

出典:オンライン資格確認の導入マニュアル。 導入にあたって準備すべきこと|ウィーメックス株式会社

4. オンライン資格確認のメリットとデメリット

メリット:診療所・薬局・訪問看護の利便性向上と効率化

オンライン資格確認の導入により、資格確認に要する時間が大幅に短縮され、効率化が図られます。

医療・薬局の現場では、必要な情報を瞬時に確認できるため、書類管理の手間が軽減され、医療従事者・利用者(患者)双方の利便性が向上します。

また、デジタル・プラットフォームにより、地理的な制約を受けることなく、どこからでもアクセスできます。さらに、デジタル化されたデータは簡単に更新でき、常に最新の状態に保つことができるため、情報の正確性が向上します。

デメリット:情報漏えいなどのリスク懸念

オンラインで資格情報を確認する場合、個人情報保護やシステムのセキュリティ対策も必要です。資格情報(個人データ)が第三者に漏洩しないよう、セキュリティは万全でなければなりません。

また、システム障害やインターネット接続障害等により、業務に遅延が生じる可能性もあります。

さらに、利用者には基本的なITスキルが求められるため、システムの利用方法に関してスタッフなどに十分な教育を行い、サポート体制を強化することも重要です。 

5. オンライン資格確認の技術革新と今後の展望

技術の進歩は、オンライン資格確認の分野に新たな展望を開いています。

特に、AI(人工知能)とブロックチェーン技術の導入は、プロセスの信頼性と効率性を高めると期待されています。

  • AI技術:顔認証による本人確認がより正確でスピーディーになります。

  • ブロックチェーン:データの改ざんを防ぎ、情報の透明性と安全性が強化されます。これにより、資格情報の管理が信頼性の高いものとなります。

認証システムやリーダー端末の役割

認証システムやリーダ端末は日々進化しており、顔認証や指紋認証などの生体認証技術が普及しています。資格確認のプロセスはよりシームレスになり、ユーザーにとって一層直感的で簡便なものとなるでしょう。今後もAIやブロックチェーンなどの技術を活用し、セキュリティを向上させ、利用者が安心して利用できる環境が整うことが期待されます。

医療およびその他業界への影響と予想される変化

オンライン資格確認の普及により、医療業界をはじめとした多くの業界で業務効率の向上が見込まれます。

  • 医療業界:患者情報の迅速な確認により、診療時間が短縮され、医療サービスの質が向上します。

  • 保険業界:加入時の確認作業が迅速化し、手続きが効率化されます。

  • 環境面:オンライン資格確認や電子カルテが普及し、全体的に紙媒体からデジタルへの移行が進むことで、環境負荷の低減やコスト削減が期待できます。

このような効果は、業界全体のデジタルトランスフォーメーションを加速し、信頼性の高いビジネス環境の形成に貢献するでしょう。

6. 機器・設備投資にかかる費用と補助金の活用

オンライン資格確認の導入には、関連機器やシステム等への初期費用がかかりますが、長期的には業務効率化による費用対効果の大幅な向上が期待できます。デジタル化により紙ベースの手続きが減少し、人的コストも抑えられ、医療機関や薬局、訪問看護などの現場での負担が軽減されます。

また、政府や業界団体が提供する補助金や助成金制度を活用することで、オンライン資格確認の導入コストを抑えることができます。

厚生労働省「医療機関・薬局における顔認証付きカードリーダーの増設支援」

厚生労働省は、マイナ保険証を利用する患者が多い医療機関や薬局に対して、顔認証機能付きカードリーダーの増設を支援しています。

出典:オンライン資格確認の導入について(医療機関・薬局、システムベンダ向け) - 医療機関・薬局における顔認証付カードリーダーの増設支援|厚生労働省

まとめ

オンライン資格確認の導入は、患者・医療従事者双方にとってより良い医療環境づくりを目指すための1つの手段となります。

今後ますます医療業界のデジタル化が進み、医療サービスの質と利便性が向上することが期待されます。

医療機関はこの変化を前向きに受け止め、専門ベンダーや行政機関の各種サポートも活用しながら、スムーズな導入を目指しましょう。


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