【ドローンライトショー】とは何か?
近年、夜空を彩るエンターテインメントとして「打上花火」に取って代わる「ドローンライトショー」(drone light show)が注目を集めている。本稿では「ドローンライトショー」とは何かを概観する。
ドローンライトショーの定義
「ドローンライトショー」(drone light show)は「ドローンアニメーション」(drone animation)あるいは「ドローンディスプレイ」(drone display)または「ドローンライトインスタレーション」(drone light installation)とも呼称され、空や劇場などの空間をキャンバスとしてLEDやレーザー照明等を搭載したドローンを飛行させてライトの明滅・色彩変化で立体アニメーションや模様を描写するアートまたはエンターテインメントの一般名称である。
ドローンライトショーは多くの場合、複数のドローンによる集団飛行(編隊飛行)である「群ドローン」(drone swarm)で行われる。また、音楽や照明・レーザー3Dホログラムなどと連動させた夜空の総合エンターテインメントショーとしても実施される。
ドローンライトショー普及の背景
打上花火の騒音によるペット・家畜への悪影響や野生動物への被害、発生する化学物質による大気汚染や山火事などの環境問題から花火忌避の世界的な潮流、中国やインド等での地域・時節による花火禁止の動きなどから打上花火の代替となるエコでクリーンなエンターテインメントとしてドローンライトショーが注目を集めるに至った。
ドローンライトショー用ドローン機体
ドローンライトショー用のドローン機体はLEDライトを搭載したものがメインだが、演出構成によってはレーザー照明等を搭載したドローンも使用される。屋外用はGNSS(GPS等)、屋内用はコンピュータビジョン等によって測位し、プログラムに沿って群ドローン飛行するものがほとんどであるが、ケースによっては自律型ドローン(つまり、AIによる制御)が使用されることもある。
写真は私たちのチームが開発(私はドローンアーティストとして演出を担当)した日本初の国産ドローンライトショー用ドローン機体(およびシステム)「電磁螢」を2018年に撮影したものだが、残念ながら現在は権利関係が海外企業に渡っていると思われる。
ドローンライトショー用ドローン機体の型式には特徴があり、大きくアメリカタイプ、中国タイプ、ロシアタイプに分類できる。アメリカタイプの代表的機体はIntelの「Classic Drone(旧Shooting Star)」(2021年開催『東京2020オリンピック大会』開会式で使用されたのは「Premium Drone」)、ロシアタイプの代表的機体はGeoscanの「Geoscan Salute」、「電磁螢」は中国タイプに分類できる。
ドローンライトショー用システム
ドローンライトショーシステムとしては2018年の平昌オリンピック開会式でドローンライトショーを担当したIntelの「Shooting Star」が黎明期を牽引。現在ではドローンライトショー世界記録をそれぞれ更新した中国の一飛智控(天津)科技や深圳大漠大智控、高巨創新科技開発、あるいはロシアのGeoscanのシステムが有名である。
また、ドローンライトショー用ソフトとしてはラトビア企業SPH Engineeringの「UgCS」が黎明期から有名であり、本稿執筆時点(2021年5月17日)では3,945機までの群ドローン飛行に対応している。
ドローンライトショー世界最長上演記録
[情報更新]2021年5月19日、中国の高巨創新科技開発が深圳でのイベントで1,000機からなる群ドローンによって26分26秒間上演し、ドローンライトショー世界最長上演のGuinness(ギネス)記録を更新した。
ただし、同じ日に同社が行った100機からなる群ドローンの上演時間が26分40秒を記録している。しかし、当該ショーはギネスのドローンライトショー「最多フォーメーション数」の対象であり、「最長上演記録」の対象でなかったためギネスの「最長上演記録」には認定されていない。
従って、ギネス記録ではないが、事実上のドローンライトショー世界最長上演記録は高巨創新科技開発の26分40秒間となる。
ドローンライトショー世界最多機数記録
[情報更新]2021年5月18日、中国共産党100周年を祝う深圳でのイベントにおいて中国の高巨創新科技開発が5,164機からなる群ドローンを実施し、ドローンライトショー世界最多機数記録を更新した。
ドローンライトショーのビジネス展開
ドローンライトショーは新年や聖パトリックの祝日など季節柄のイベント、医療従事者などエッセンシャルワーカーへの敬意と感謝を表す時節柄のイベントで打上花火に取って代わるだけでなく、企業ロゴや商品の3Dアニメーションを大空にディスプレイできることから前述のドローンライトショー世界最多機数記録を更新した『GENESIS BRAND NIGHT | GENESIS』や『Wild new Volkswagen ID.4 drone show』『Walmart Holiday Drone Light Show』など中国やアメリカ等の先進国では企業や商品・サービスの広告宣伝イベントとして重宝されつつある。
ドローンライトショー劇場
劇場などでの屋内型エンターテインメントとしてのドローンライトショーも開催されており、スイスのVerity(Verity Studios)はドローンショー(drone show)としての屋内ドローンライトショーのパイオニアである。因みに、日本ではPerfumeがドローンショーの要素を早くからパフォーマンスに取り入れており、遅くとも2014年の『NHK紅白歌合戦』から使用されている。
アートとしてのドローンライトショー
アートとしてはオランダのDRIFT(Studio DRIFT)が2018年の「Burning Man 2018」(Black Rock City)などで展示した空飛ぶ彫刻(performative art installation)、600機の自律型ドローンからなる群ドローン(ドローンスウォーム)による光のインスタレーション(drone light installation)『Franchise Freedom』が印象に残る。
ドローンライトショーでプロポーズ
さらに、ドローンライトショーが人気になっている先進国の中国では、春節祝賀イベントや企業広告宣伝などだけでなく、カップルがプロポーズのサプライズイベントとしてドローンライトショーを催すこともある。