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基礎徹底 そこが知りたい小児科

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知っておくと,見通しが良くなる小児科の基礎的知識・覚え方・盲点的知識を紹介します.間違いなどありましたらコメント欄でご教授いただけると幸いです.
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【無料プリント公開】基礎徹底 そこが知りたい小児の発達

小児の発達は各年齢ごとに覚えることが多く,複雑ですよね。筆者も苦手な分野の1つでした… そこで,各年齢ごとに理解しながら覚えやすいようにプリントにまとめました❕ 小児科を勉強し始めた5年生~国試直前の6年生まで幅広くお使いいただけるプリントとなっています!無料ですので是非ご活用ください!

なぜ腹壁破裂は右側から臓器が脱出しやすいの?

新生児では、出生時に腹壁破裂による臓器脱出が見られる場合があります。 臍の右側の腹壁が欠損しており、速やかな処置が必要な新生児疾患で、ほぼ全例に腸回転異常を伴うとされています。 この腹壁破裂はほとんど右側から臓器脱出が起きるのですが、なぜ左側からは起きないのでしょう? じつは、発生初期の過程で右臍静脈の退縮により、右側腹壁に裂隙が生じ、腹腔臓器が羊膜腔に脱出するためとされています。発生学の知識が疾患にもつながる例の1つなのです。 ちなみに左臍静脈は、臍静脈として発達し、静

心房・心室中隔欠損症の心負荷がわからない!

先天性心疾患は構造や病態、治療が多岐にわたり非常に難しい分野の1つですよね。苦手な方も多いのではないでしょうか。 ここでは、基本的な心房中隔欠損症・心室中隔欠損症の血行動態についてお話します。 心房中隔欠損症の病態と血行動態 心房中隔欠損症は成人で最多の先天性心疾患(無症状経過が多いため)で、左房と右房の間が無くなっています。 これにより、左房→右房→右室→肺へ血流が増えてしまい、右心負荷がみられます。そして肺に弁の大きさに見合わない大量の血流が流れ続けていき、相対的肺

なぜホモシスチン尿症では水晶体が脱臼しやすいの?

水晶体が脱臼する疾患は多く学びます。マルファン症候群やホモシスチン尿症など一見すると眼科と関係ない疾患ばかりですよね。マルファン症候群は結合組織異常なので、水晶体との関連はなんとなく納得がいきます。 では、なぜホモシスチン尿症では水晶体が脱臼するのでしょうか? じつは、ホモシスチンはコラーゲンの合成を阻害します。そのため、水晶体を支えているチン小帯が切れやすくなるのです¹。 また、ホモシスチン尿症は動静脈血栓症による突然死を起こすのではないかという報告もあります²。コラー

なぜ苺状血管腫の治療薬がプロプラノロールなの?

近年、苺状血管腫の治療薬としてβ遮断薬(プロプラノロール)が使われるようになっています。どちらかというと心疾患に使う薬剤なので不思議ですよね。 これは、文献¹によると次のように説明されています。 「By blocking the beta adrenergic receptors, propranolol can make blood vessels narrower, reducing the amount of blood flowing through them. T