6月4日(火)メディア日記
NHKは3日夜、「映像の世紀 安保闘争 燃え盛った政治の季節」を放送した。陳腐な表現だが、心が震える力作だった。翌日、番組を観た娘と孫から「じーじは、大変な時代に生きていたんだね」というメールが来た。 「そうです。爺さまたちは60年代安保のときは大学生だった。あのデモの映像の中にどこかにいたんだよ」。
正直言うと日米安保を番組化するのにNHKは政権に気兼ねしないのかなど、どう料理するかに興味があった。その心配は杞憂に終わった。番組のナレーションは、60年安保闘争をけん引する全学連委員長・唐牛健太郎を「人々は彼を現代の英雄と呼んだ」と表現した。番組中に登場するインタビューも若者のエネルギーに理解を示すトーンが目立った。しかし、70年代の安保世代に入ると、若者は武装し大学に立てこもり、東大紛争など闘争の末路は凄惨な事件を次々に引き起こし、国民の支持を失っていった。60年安保時代は学生も一般国民も、さらにメディアも一体感の求心力があった。太平の今の世の中、爺さまたちにとってはつい回顧してしまう得難い世代だった。
朝日新聞は4日朝刊1面トップに「今国会解散見送り 支持率低迷で判断」と報じた。これまでの報道をみてもほとんどが「今国会の解散なし」で一致しているが、朝日が1面トップに大きく持っていきたのは岸田首相から正式に言質をとったためだろう。読売新聞は翌5日朝刊で同趣旨を報じ、他紙も続いた。
国土交通省は3日、トヨタ自動車など5社の計38車種に車の大量生産に必要な「型式指定」の手続きを巡る認証の不正があったと発表した。その中で6車種は出荷停止となった。自動車各社の社長は3日、一斉に記者会見した。トヨタの豊田章男会長は自社の不正にもかかわらず「ブルータスお前もか」と他人事のように語り、顰蹙をかった。まさに見当違いの「ブルータス発言」は、5日の「天声人語」(朝日)、「編集手帳」(読売)の両コラムでも取り上げられた。