ビジネス書が最も“読まれる”のはYouTube?最強のマス向けコンテンツとは
内容が易しいビジネス書と、難解なビジネス書に二極化
本が売れないと言われて久しいですが、その中でもビジネス書はコンスタントに売れ続けているとはいいます。しかし、過去のビジネス書の年間ベストセラーを見ると、マス受けするビジネス書は「内容が易しくて分かりやすい」に集約されていることが分かります。
インターネットが普及しはじめた2000年代頃から、ビジネス書のタイトルが「面白いほど分かる」「ネコでも分かる」など、ネットに引っ張られるようにキャッチ―なタイトルになっていきます。
それとともに、1990年代は海外情勢などの本がベストセラーになっていたのですが、本の内容も「話し方」だったり「初心者向けの投資入門」であったりと、どんどん初心者向けの柔らかい内容が中心になっていったんですね。
その結果、現在では内容も柔らかくて、説明も分かりやすいビジネス書がベストセラーの上位に並ぶようになりました。
それでは、経営学者が書いたビジネス古典のような、内容が難しく読解も難解な本が売れなくなったかというと、そうでもありません。
そういったビジネス名著もベストセラーの下の方に名前をつらねています。
つまり、現在は「内容が柔らかくて、説明も分かりやすい」本と「内容が難しく読解も難解な本」に二極化しているんですね。
「内容が難しく読解も難解な本」もベストセラーになれる
それでは、「内容が難しく読解も難解な本」がベストセラーになれないのかというと、そうでもないのです。「内容が難しくても、説明を分かりやすくした本」が、数百万部も売れるベストセラーになっています。
この流れを作ったのがドラッカーの「マネジメント」を元にした「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」です。2010年のベストセラー1位になり、映画化もされました。
これ以降も、日本組織の問題を戦時下の日本組織を紐解くことで解説をした「失敗の本質」が、「超」入門という入門書の形で出版されたり、内容が難解と言われた心理学者アドラー哲学を物語形式で分かりやすく解説した「嫌われる勇気」が、シリーズ世界累計900万部に達するなどの事例があります。
“難解本”がベストセラーになるポイントは、物語化とマンガ化
この内容が難しい“難解本”をベストセラーにするには、物語化をするかマンガ化をするかが有効な手段になります。
さきほどの「嫌われる勇気」は、アドラー哲学を解説するのではなく、人生に悩む若者が哲人に話を聞きにいき、対話という物語形式でアドラー哲学の内容が明かされていきます。
物語よりもさらに分かりやすいのが、視覚に訴えるマンガです。物語形式のビジネス書はテキストを目で追う必要がありますが、マンガになれば視覚で理解すれば良いので、さらに分かりやすくなります。
さきほどの例のもしドラもマンガですし、世界で4000万部売り上げたという成功するためのエッセンスをまとめた「7つの習慣」も、マンガ版が登場しています。
ということで、“難解本”は物語やマンガという伝え方の形式に変えることで、「内容が難しくても、説明を分かりやすくした本」となり、数百万部を超えるベストセラーになることができるのです。
ビジネス書が最も“読まれる”のはYouTube
そして、実は最もビジネス書が最も“読まれる”のはYouTubeです。YouTubeには、ここまで紹介した数々のビジネス名著を解説する動画が溢れており、いずれも人気です。
有名なのがビジネスチャンネル「中田敦彦のYouTube大学」で、ビジネス書の内容解説は人気コンテンツの一つです。平均で数十万回再生、100万回を超えて再生される動画も珍しくありません。
100万部売れるベストセラーは数年に1冊出るかどうかですが、YouTubeでの内容解説動画は100万回見られることが珍しくないのです。
つまり、ビジネス書の内容をもっとも分かりやすくする形式は「動画」ということになります。テキストからマンガにすることで視覚情報で追えるので分かりやすくなり、さらにそれが動画になると受け身で観ることができるので、ビジネス書に触れるハードルがさらに下がるんですね。
さらに、マンガ×動画でビジネス書を解説するYouTubeチャンネルもあります。チャンネル登録数100万人を超える「フェルミ漫画大学」では、多くのビジネス書をマンガと動画の形式で解説しています。平均10万回前後の再生数で、中には100万回を超える再生数の動画もあります。
ということで、まとめると“難解本”は物語やマンガという形式を使うことでよりマス向けとなり、さらに動画化をすることでさらにマス受けになります。
今最もビジネス書が“読まれている”のは、YouTubeなのです。本と動画には、能動的か受動的かという大きな川が流れており、今は何かを能動的に見るというハードルが上がっています。
ビジネス書のみならず、コンテンツ全般において受動型のコンテンツがマスを占める動きは、今後も続いていくでしょう。
では受動型のコンテンツがマスを占める中で、どういったコンテンツを作れば良いのか。その解説については、こちらをどうぞ。
YouTubeは観るけど本は読めない時代。マス向けコンテンツの作り方
https://note.com/media_labo/n/n1e21f330dc27
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過去30年のビジネス書ベストセラーに見る、日本の内向きと個人の時代
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