とある臨床検査技師の転職経験談
みなさん、こんにちは。メドフィットアカデミア の 服部 です。
私の仕事、臨床検査技師はコロナ禍においてPCR検査やワクチン接種が特例で可能となったことで少し話題になりましたね。
そんな臨床検査技師ですが、私のみてきた中ではなかなか【転職】というもののハードルが高い印象です。
もともと臨床検査技師は「女性が多い職場」です。多くの方はイベントの中で産休・育休によるブランクが生じます。転職を考えられる方の多くは、そのイベントの中で現在の勤務形態がむつかしくなったり、復帰にあたって違う病院を探したりが多いかと思います。
この頃は男性技師も増え、タスクシフティング事業も推進され、臨床検査技師を取り巻く環境は大きく変化しています。
そんな中、私の転職体験談、そして転職してよかったことを記事にすることでみなさんの考え方の参考になればと思います。
「臨床検査技師の」とは書きましたがこのような事例は他の職業でもあり得ることなので、読んでもらえたらうれしいです。
今回は1回目の転職についての記事です。いずれ、2回目のことも記事にしようと思います。
1回目の転職
私がはじめて転職したときのきっかけからお話しします。
実はこれはあまり前向きな転職とは言えませんでした。
原因が「人間関係」にあったからです。
これから綴ることは「私の立場」からの一方的な意見であり、相手方にもいろいろと事情はあっただろうことはご承知ください。なるべく事実ベースで書きます。
そもそもどのような人間関係のこじれがあったのかですが、私の上司にあたる人物が「検査結果をその人に相談しなければならなかったり、検査順の指示をもらわないと業務が回らないシステムを自分で作り上げていたにも関わらず、気に入らない人がいれば無視」する人でした。
また「気に入っているAさんが質問にいけば問題なく業務が回るのに対し、気に入らないBさんが同じ質問にいけば声を荒らげて激怒する」ということがありました。
私は新人のころできることが少なく、その職場のやり方すら把握できていなかったため未熟者の烙印を押され、無視され続けながら何かすれば逆鱗に触れて激怒されました。詳細は省きますが「色覚異常」が関わったことによる技師長の指示でどうしてもその人に教えを請わなければならない状況でした。
今でもその状況を知りつつあのとき助けようともしてくれなかった技師長には恨みがないとは言えません。
ときには深夜に突然お怒りの電話が鳴ったり、ときには自分より遅く来るとは何事だと始業より1時間以上早い出勤を半ば強制されたり、ときには2時間以上廊下で立たされ説教されたり…
それはつらい新人時代でした。そこで私は「転職を決意!」…とはならなかったのです。なぜかそこで頑張らなければならないという観念にとりつかれ、その人に気に入られるように常に神経を張り巡らせて働きました。
いつもその人の思考を読み、一手先を準備し、それがだめだったときの代替案を考え、他の職員にも根回しし…
すると信頼されるようになり、それをうれしいとさえ思っていたのです。
しかし、ある日事件が起きました。その事件はどうしても私には許せるものではなかったのです。
今まで張りつめていた神経の糸がぷっつりと切れてしまった私は何をすることもできなくなり、心療内科にかかり休職することになりました。
とてもつらい休職期間でした。うまく眠れない、食べれない、何をすることもできない…
主治医の熱心なカウンセリングと投薬により約1年かけてゆっくりと回復していきました。
休職も後半になると正常に思考ができるようになってきます。
そこで私にあった選択肢は2つでした。
① 職場復帰する
② 転職する
当時は最初の技師長が退職し、新技師長になっていました。新技師長はとても尊敬できる技師で、休職中も私を気にかけてくれていました。
しかし、そのころ私は職場の中でもほぼベテランで、あらゆる生理検査業務が可能であったことより戦力としては重宝されており、もちろん職場復帰の説得がありました。
とても悩みました。そこで恩師や知り合いの信頼できる医師にも相談した結果、私が選んだ道が ② 転職する でした。
転職してよかったこと
前置きが長くなってしまいましたが、ここでようやく本題の「転職してよかったこと」です。
先述のように様々な悩みを抱えつつ、休職後に元の職場に復帰をしたくないという理由が勝って決断した転職。つまりは後ろ向きな理由なのです。
しかし、これがとてもよかったと考えています。
理由は3つです。①は多くの方にあてはまるかと思いますが、②、③は人それぞれかと思います。私の実例を示します。
①人間関係のリセット
人間関係の悩みこそ、私を最も苦しめたものでした。
これは転職後の人生で学んだことですが、「こちらから何かを働きかけて相手を変えることは基本的にできない」です。
例えば、○○さんがいつも自分にとって嫌な言動をしてくる人としましょう。
たまりかねて「私の嫌なことを言わないで!」と言っても、○○さんは何があなたにとって嫌なことなのかわかりません。さらに、嫌なことを言っている自覚があったとしても○○さんにも○○さんの思考のもとであなたに嫌な言動をとっているので、そう簡単には変えてくれないものです。
アドラー心理学が有名ですが、嫌な言動をするかどうかは相手の課題であなた自身の課題ではないためどうすることもできないのです。
では、人間関係の改善に効果があるのはいったい何なのでしょうか?
私は A.自分がかわる B.環境をかえる の二つだと思います。
A.自分がかわる
人間、だれでも自分を変えることはできます。例えば、朝7時起床を朝6時起床にしようと思ったとき、誰かにそれを変えさせるのはすごく労力を伴いますが、あなた自身なら「朝6時に起きよう」と思って目覚ましをセットするだけで目的が達成できます。
同じように「相手はそういう人なんだな」と「相手のことを深く考えない」という選択をあなたはとることができます。
相手との関係性にもよるかと思いますが、本当に相手はあなたが色々と悩んで時間も心もすり減らす価値がある人間なのかを考えると、意外とそうでもないことも多々あります。
そんなことができれば苦労しないよ!!と思った方もいると思います。
私もそうでした。そのため、私がとった選択が次の②です。
B.環境を変える
相手を変えることは不可能。自分を変えたところで何も状況が好転しない。
そんなときはもう環境を変えるしかありません。
そこで私がとった行動こそ「転職」です。
これも大変勇気のいる決断でしたが、今、振り返ってみても「心の病」をきたす前に決断していればよかったと、少し後悔することがあります。
※私の「うつ病」についてはまたどこかで記事にしようと思いますが、これを書いている今でも闘病生活を送っており、もう一生ものの付き合いになるのだろうと感じています。
「転職」をすれば当然、今までの人間関係はリセットされます。
あなたに嫌な言動をしてきたり、理不尽な要求をしたりしてきた人とは離れることができます。
問題は、また新たな人間関係構築をしなければならないことです。
このとき、もし、あなた自身に人間関係を悪化させる要因があったのであればまた同じことが起きてしまいます。
転職をきっかけにして自分を振り返り、新たな環境で良いスタートを切る準備をしておくと良いと思います。
②スキルの活用
私はつらい日々の中でも自分のスキルは磨くように努力してきたつもりです。そのため、新たな職場の細かな作法は覚える必要がありましたが、検査としての習熟を新たに行う必要のあるものは少なかったです。
具体的には前職場でしていなかった「聴力検査」「心エコー」のみで、他はむしろ自分の方が教える立場でした。
これも「資格取得」をしていたことが大きいと思います。
今思い返しても、あのつらい日々のなかどうやって自分が資格試験までこなしていたのか、どうして耐えられていたのか理解できませんが、相当頑張っていたんだろうと思います。
「超音波検査士(消化器領域)」「血管診療技師」を持っていたので新たな職場の医師からも重宝していただけたことを感謝しています。
③生活リズムの改善
前職での私の生活リズムは過酷なものでした。
朝6時に起き、7時30分(始業1時間前)には仕事をはじめ、夜は20時をこえることが多く、心臓カテーテル検査が延長しているときには22時をこえることも珍しくありませんでした。
また、日当直もしながら心カテ当番もしていたため、夜間や休日に呼び出しがあり、不規則な生活リズムをしていました。また、上司から突然夜中に電話があって叱責されたり、機械の対応を求められたりで気が休まりませんでした。
そんな中で研修会や技師会の催し、当時は労働組合の活動にも参加しなければならず、しっかりと休める休日というものがほとんどありませんでした。
転職してからの病院は当直ではなく「待機」制度でした。
心カテのように一刻を争うような呼び出しではなく、検体検査を少しこなす程度であったことや、待機をまわす人数も11人程度はいて、日直も月に1回か2回程度で前職よりもとても楽に感じました。
基本的には土日が休み、待機でなければ夜間に睡眠がしっかりとれることから生活リズムが良くなったと思いました。
以上、私の体験談をつづりました。
メドフィットアカデミアでは
私はこのように体験談を記事として発信しても良いと考えていますが、みなさんはなかなかそうもいかず、一人で悩む方も多いと思います。
誰かの体験談を参考にしたくても発信している人が少なく、どうして良いかわからない、そんな経験があると思います。
メドフィットアカデミアはクローズドなコミュニティですので、会員にしか発信されません。このnoteのように誰でもみられる場所ではありませんので、会員内で体験を共有し相談することもできます。
また、他のコミュニティにはないメリットとして転職サポートのプロであるメドフィット社員がコミュニティに参加しています。
他の会員に知られたくないことも、DM機能を使えばメドフィット社員とのみ相談をすることが可能です。
もちろん、私にも相談できます。
メドフィットアカデミアでは「検査の技術・知識」だけではなく、「ノンテクニカルスキル」や「悩みの共有・相談」ができるコミュニティを目指していますので、ぜひ、一緒に臨床検査技師としての人生をより良いものにしていけたらと考えています。
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