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井上靖著『夏草冬濤(下)』 を読了。|続編『北の海』が楽しみ
井上靖著『夏草冬濤』の下巻を読了しました。
11月14日から上巻を読み始め、1ヶ月と10日かけて、じっくりと物語を味わいました。
三島の親戚の家から沼津中学校に通っていた洪作ですが、成績の方は悪くなっていく一方であるため、学校の近くにあるお寺に預けられることになります。
最初は嫌がっていた洪作も、友達の話を聞いているうちに、お寺で暮らすことが楽しみなってきます。
暮らし始める前に、1学年上級生の木部と、留年して同級生となった藤尾の3人で、そのお寺を訪れます。
そこで待ち受けていたのは、お寺の娘、郁子でした。
郁子は3人に、畳を3枚上げて、おもてに干す作業を言いつけます。
そして、その見返りとして風呂を沸かしてもらい、天ぷらまでご馳走になります。
一連の郁子と洪作たち3人のやりとりが、令和の現在では考えられないことばかりで、思わず微笑んでしまいます。
『夏草冬濤』では、女性との絡みが随所に描かれます。
思春期の男子にとって、表向きは女性を意識していないつもりでも、心の奥底では強烈に意識してしまうものです。
その心の動きが言動や行動に現れ、ぎこちないコミュニケーションになってしまう様子が、巧みに描かれているのも、この作品の特徴です。
物語の最後は、友達たちと伊豆の西海岸へ旅行に出かけるところで終わります。
その旅行の費用も、机や本箱を買うために祖父からもらったお金を使うなど、『しろばんば』に登場した小学生の頃の洪作と違ってどんどん「悪く」なっていきます。
その後の洪作の物語は、続編である『北の海』へと続きます。
一体、この先どのような人生を歩んでいくのか、続編を読み進めるのを楽しみにしています。