【読書】伊藤亜紗(著)『記憶する体』を読了。〜脳は、誤作動を起こす事もある〜
歳をとるとトイレの回数が増えて、最近は夜中に2、3度、目を覚ますようになりました。いつもならトイレを済ませて直ぐに眠る事が出来るのですが、暑さのせいか眠れなくなってしまい、枕元にあった伊藤亜紗(著)『記憶する体』を読み進める事にしました。
読んでいる途中、人間の体の不思議さを思い出して、以前読んだ山本健人(著)『すばらしい人体』を本棚から引っ張り出して、寄り道もしてみました。
その『すばらしい人体』の「第一章:人体はよくできている」の冒頭で書かれているのですが、人間は椅子に座った状態から立ち上がる時、頭を動かさずに立ち上がることはできないのです。必ず、一旦頭を前に突き出さないと、腰は浮き上がりません。このように人間は、意識をせずに、様々なことを行って行動しているのです。普段、私たちが当たり前の様にやっていることは、とても複雑な動きなのです。
『記憶する体』には、「幻肢痛」を実際に体験した方のリアルなエピソードが、書かれています。「幻肢痛」という言葉は、聞いたことはありましたが、読んでいるとなんとも言えない気持ちになりました。ある筈のない腕や足が痛むというのは、私たちには計り知れない辛さがある様です。
7月23日(日曜日)の日本経済新聞の26面に〔慢性痛、原因は脳の「誤作動」〕という記事がありました。この記事によると、慢性痛と急性痛とは、根本的に脳内の回路が異なると書かれています。そして痛みには、体の損傷で起きる痛みと、神経の障害で起きる痛みと、そうした原因が見つからないのに痛む「第3の痛み」というものがあるそうです。ストレスなどで体の危険を感じると、それを痛みに変換して警告をする「誤作動」を作ることがあるということです。「幻肢痛」も、この「誤作動」と似たようなものだと思うのです。
椅子から立ち上がるときに、頭を前に出すという動きは、意識はしていないかもしれませんが、脳が指示を出している筈です。痛みを感じるのは、自分の命を守るための、脳が発する警告です。そう考えると、無い腕が痛むというには、「誤作動」としか考えられません。その「誤作動」を修正する事ができれば、「幻肢痛」の苦痛から解放されるのです。「幻肢痛」も人によって様々な様ですが、医学とテクノロジーの力を使って、研究のスピードを早めて頂きたいものです。