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【読書】『宙ごはん』読了〜他人に優しくなれる物語〜

読み始めた頃は、もう少し軽い感じの物語かと思っていました。
しかし、読み進めていくと、どんどん私の予想を裏切っていきました。
こうなったらいいのになと思ったことが、切ないのですが、そのようになっていきません。

こんなに、それぞれの登場人物に感情移入してしまった小説は、初めてでした。

私たちは、毎日誰かと会って、なんらかの形でコミュニケーションをとっていますが、それは全く表面的なことでしかありません。
人が誰かに向けて発する言葉なんて、その人の脳みその中にあるほんの一部でしか無いのです。
そもそもその発言が、その人の脳みその中にあるものと、一致しているのかどうかさえ怪しいものです。
それは家族同士であっても、親しい友人同士であっても同じです。
家族だからといって、全て本心を表現している訳ではありません。

小説というのは、架空の世界ではありますが、主人公の脳みその中を知ることができます。
主人公の脳みその中身を、文章化したものが、小説であるとも言えます。
主人公が発した言葉の後で、「こんなこと言ってしまった自分に驚いた」というような表現を使われることがよくあります。
こういうのが小説の特徴で、映画やドラマでは楽しむことはできない部分です。

世の中には、生きづらい人生を送っている人がいます。
ものすごく、生きるのが上手い人もいます。
それは、客観的にそう見えているだけで、本人は全く逆に感じているのかもしれません。
困っている人がいれば、助けたいという気持ちは、誰でも湧くと思いますが、本当に助ける方法を知っている人は稀です。
助けることができるのは、同じ苦しみを味わって、その苦しみを乗り越えた経験のある人にしかできないのかもしれません。

人は、基本的には一人で生きていかなければならないのです。
親から決められた人生を、生涯歩み続けるなんていうことはあり得ません。
自分の意思で、決断をしていかなければならないのです。
しかし、迷ったときに相談ができる相手、困ったときに話を聞いてもらえる人がいるだけで、間違った決断をする確率は、大きく下がります。
相談できる相手や、話を聞いてもらえる人が、家族であれば一番いいのですが、家族以外でもそいう人が一人でもいれば、幸せな人生を送ることができます。

映画『タイタニック』を観てから、少し涙脆くなってしまっているのか、この小説を読んで、何度も涙を流してしまいました。
まるで最近の私は、『探偵ナイトスクープ』の前の局長、西田敏行さんのようになってきました。

ありきたりな感想になりますが、家族とは?人の命とは?ということについて、深く考えさせられる小説です。
そして、他人に対して、優しくなれる物語りでした。

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