回避性パーソナリティ障害を克服した人が書いた本を読んだ: 回避性パーソナリティ障害者の日記(5)
回避性パーソナリティ障害(APD)について何か情報が無いかと調べていたら、amazonで"How To Dismiss Anxiety: How I Cured My Avoidant Personality Disorder And How You Can Do It Too"という本を見つけました。
タイトルを見ると、どうやら回避性を克服した当事者が書いた本のようです。これは気になります。ということでこの本を読んでみました。
本の感想
基本的にかなり薄い本なのですが中身は、1. 私のストーリー(My Story)、2. 明らかになった心理学的原理 (Illuminated Psychological Principles)、3. 不安を取り除く (Getting Rid of Fear)、4. 不安を超えた先にある人生(Life Beyond Fear)、の4章でした。1章では著者の病歴、2章では著者の考えるAPDや不安の仕組み、3章ではAPDを克服するための具体的な方法、4章では筆者が不安を克服してからどのように生活が変わったかが書かれていました。
2章で不安の仕組みが説明されていますが筆者は専門家の方ではないので、中身が参考になるものかどうかは正直謎です。
さてAPDの当事者からすると気になるのは3章の不安を取り除く (Getting Rid of Fear)で紹介されている、不安に対する具体的な処方箋です。
不安を減らすための方法として筆者が提案していたのは、基本的にはいわゆるマインドフルネスで、自分の不安という感情を、不安を感じていることを認識して、そして手放す、というやり方でした。これ自体は当然新しいものでは無く、様々な人が不安への対処法として提唱しているやり方です。
ただ個人的に目新しかったのは、著者は不安な場面のイメージを元にしてマインドフルネスをすることを提案している、という点です。つまり暴露療法や認知行動療法のように実際に行動をしてみて、その際の自分の感情の変化を追うということはしません。代わりに、例えば面接で聞かれたくない質問をされるシーンを想像して、その想像で心に生じる不安を認識して、手放すという感じです。(なお本の中ではもう少し詳しく5ステップに分けて筆者流のマインドフルネスのやり方が説明されています)
不安を感じる様々な場面を想像して、繰り返しその不安を手放していくことで治療が進んでいくそうです。
筆者の方は実際にこのやり方で、数か月でかなり不安が軽減されたらしいです。凄い効果ですね。
本書によるととにかくちゃんと実践するのが大事らしいです。不安に向き合うのは非常に不快なのでなかなか実践できない人も多いとのこと。そこを乗り越えて実践できればすでに半分は成功したようなものなのかもしれません。
なお筆者は精神科医というわけではないので、提案されている方法が万人向けかどうかは分かりません。著者の真似をするには不安と直接向き合う必要があるので、APD以外の疾患が悪化する可能性もある気がします。試す場合は自己責任でやることになると思います。
終わりに
回避を克服した人の書いた文章はなかなか見つからないので、その意味でも興味深かったです。当事者としては克服した方が存在するという事実に非常に勇気づけられます。今回紹介した本はかなり分量も少なく、また専門書でもないため平坦な英語で書かれていたので、英語が分かる人は是非読んでみてください。何か発見があるかもしれません。自分が読んだときはkindle unlimitedで無料レンタルできました。