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「べらぼう」と「御上先生」 考証

今日は、「べらぼう」と「御上先生」について考証していきたいと思います。

ほぼ、今年度の冬季テレビドラマの話題は、このNHK大河ドラマ「べらぼう」とTBSテレビ日曜劇場「御上先生」が、独占しているといっても過言ではないと思います。

この2つのドラマは、同じ日曜日の8時が「べらぼう」で9時からは「御上先生」が放送となります。確かに、NHK大河ドラマとTBS日曜劇場は、どちらも過去に名作を多数生み出しており歴史と伝統のある番組枠であることは間違いありません。

実は、この二つのドラマ枠には、あるジンクスが囁かれています。それが、「大河が弱いときは、日曜劇場の視聴率が上がる」というものです。つまり、「負の相関関係」ですが、今回だけは、この相関関係が「正の相関関係」となっています。

例えば、二つのドラマの初回から最新話までの視聴率の推移や、NHKプラス、TverなどのタイムシフトのUB数(再生回数)の上昇率などが、ほぼ同じものとなっています。

では、何故、今回この大河ドラマ「べらぼう」と日曜劇場「御上先生」が、「正の相関関係」となったのかを考えていきます。

「べらぼう」と「御上先生」の世界観とコンセプト

「べらぼう」と「御上先生」共に、放送前の評価はあまり良いものではありませんでした。

例えば、今年の大河ドラマ「べらぼう」では、江戸中期の出版界の異端児である蔦屋重三郎が主人公となっています。この蔦重は今までの大河ドラマなどで登場する歴史の教科書等で取り上げられるような偉人ではなく、あまり有名な人物でないことから、大河ドラマとして成立するのかと。

一方、「御上先生」は、「日曜夜9時に観るにはテーマが重過ぎる」という声や、現在では「金八先生」などの熱血教師そのものが絶滅危惧種であり、従って、昨今ではドラマで「学園ものはヒットしにくい」流れがあるために、視聴率そのものを危ぶむ声も上がっていました。

しかし、この二つのドラマが放送されると、これら危ぶむ声は、称賛の声へと変わっていきます。

この成功の裏には、二つのドラマの持つコンセプトそして世界観が、今までのドラマとは一線を画くものであったこと。

もっと詳しく言うと、この2つのドラマのコンセプトが、意識の自由化の流れで、権威が重要視されなくなり、「SNSとマスコミ」や「塾の講師と学校の先生」などの似通った区分の境界線があやふやになっている現在において、今まで権威または聖職と言われていた「マスコミ」や「先生」の存在理由を、もう一度、問うものとなっています。

一方、2つのドラマの世界観(テーマ)は、いままでの大河ドラマ及び日曜劇場の定石からずらした物となっています。「べらぼう」で言えば、覇権争いではなく、「御上先生」では、熱血教師ではありません。

しかし、よくよく観ていくと、その根底には、それぞれのドラマ枠の持つテーマである、人間模様やモノの本質を描くという想いが流れています。

思想の自由により、過去の封建的で一方的なものの見方が無くなりましたが、同時に境目が見えないことにより、それぞれの持つ本質が見えなくなり不安な状況の現在だからこそ、こういったドラマのコンセプトやテーマが受け入れられるのではと思います。

「べらぼう」「御上先生」の主役を支える俳優たち

もう一つ、このら2つのドラマが、支持されている要素としては、それぞれのドラマのストーリーを引っ張っている主人公、「べらぼう」の横浜流星さん、「御上先生」の松坂桃李さんの人気及び役者としての実力はもちろんのこと、その主人公を支える俳優さんが、素晴らしい事が挙げられます。

特に、「べらぼう」で言えば、花魁の花の井を演じている小芝風花さんと「御上先生」で言えば是枝先生役の吉岡里帆さんの存在が大きく関わっています。

小芝風花さんと吉岡里帆さんは、共に「可愛い系」で「清純派」と呼ばれる俳優さん達ですが、その容貌が災いしており、俳優としての実力が低く観られています。

然しながら、小芝風花さんは、『月刊アフタヌーン』(講談社)にて、2014年9月号から連載されている漫画「波を聞いてくれ」の実写化(2023年)で、主人公の「鼓田ミナレ」を演じていますが、その演技力の高さが注目されています。

小芝風花さんは、このドラマでは金髪でギャルメイクをし、やさぐれた女性を見事に演じており、その人気が単に可愛らしい容姿ではなく、その演技力によるものであることを証明しています。

だからこそ、今までは元気で明るい女性を演じることが多かった小芝風花さんが、「べらぼう」では、儚くそして妖艶な色気を持つ花魁を演じることができるのです。

一方、「御上先生」では、吉岡里帆さんは、「金八先生」を理想とした先生でありながら、理想と現実の間に苦悩している女性、しかし、はじめは常識にとらわれない御上先生に翻弄されながらも、教師として影響を受ける様を上手く演じています。

実は、この吉岡里帆さんの演技のフリ幅もかなり大きく、俳優としての実力も一般に認識されている以上のものがあります。

その証拠として、2023年に公開された映画「Gメン」で、容姿は「御上先生」と同樣ながら、真逆の性格を持つ先生を演じています。この映画で、吉岡さんの出演シーンは多くありませんが、このシーンがこの映画のヒットに大きく貢献したと言われています。

吉岡里帆さんは、水着のグラビアや「どん兵衛」の狐役などぶりっ子演技ばかりが取り沙汰されますが、演技の実力は計り知れないものがあると思います。

因みに、矢本悠馬さんが演じる学生に、里帆さんがビンタをかますシーンが登場しますが、これ、アドリブで演じたそうです。

この様に思っているのは私だけでは無いようで、All aboutニュースの「冬ドラマで演技が光っていると思う女性俳優」のランキングにおいて、小芝風花さんが堂々の2位、そして、吉岡里帆さんが、1位を獲得しています。

更に、このランキングに挙がっている他の女優さんは、3位に川口春奈さん、4位には清野菜名さん、その他順位には、夏木マリさん、波瑠さん、広瀬すずさん、芳根京子さん、門脇麦さんなど錚々とした女優さんを抑えての結果となっています。

しかし、小芝風花さんと吉岡里帆さんは器用であるがために、色々な映画やドラマなどに起用されていながら、今ひとつ代表作にめぐりあえていないのが不思議です。

その他にも「べらぼう」では、最新話で登場したダチョウ倶楽部の肥後克広さんなどの多彩な配役や「大富豪同心」の主役である中村隼人さん、眉毛なしで登場しているために分かりにくいのですがベテランの水野美紀さんや安達祐実さん、かたせ梨乃さん、飯島直子さんら、豪華な出演者達。

「御上先生」では、生徒役の報道部部長役で出演の2020年に各映画賞新人部門を独占した奥平大兼さん、また同じ生徒役には今年後期の朝の連続テレビ小説「ばけばけ」ヒロインの高石あかりさん、2021年「おかえりモネ」出演の蒔田彩珠さん、同じく朝ドラ「ブギウギ」出演の吉柳咲良さんなど、さしずめネクストブレークの品評会のようです。

公式ホームページとスピンオフ

また、「べらぼう」では、公式ホームページでは、「べらぼうプログ」で各話の時代考証や解説がされており、より深くストーリーが楽しめるようになっています。

「御上先生」では、「御上先生には内緒。」というスピンオフ作品をTver上で見ることが出来ます。このスピンオフ作品は、Tiscktok風に作られたショートストーリで、あまり出演場面のない生徒たちにも日が当たるように作られています。スタッフの若手俳優達に対する愛を感じるような作品となっています。

以上が、「べらぼう」と「御上先生」の考証について書いてみました。

最近、韓国ドラマの勢いがなく、自然と国内ドラマに今、ハマっています。

日本のドラマも一時は、演技能力を度外視され、大手事務所の俳優の人気だけ又は、その俳優のバーターで登場する俳優とも言えないような芸能人で作られたドラマが多かったのですが、少しずつ改善され、名作と呼ばれるような素晴らしいドラマが生まれつつあるのも真実です。

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