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徒然なるままに

今日は、「徒然なるままに」という題で書きたいと思います。

徒然とは

「徒然なるままに」という言葉を聞くと、ほとんどの人は、兼好法師の「徒然草」を思い浮かべると思います。

「つれづれなるままに、日暮らし、硯(すずり)にむかひて、心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。」

(一人で特にすることもなく、手持ち無沙汰に任せて(徒然なるままに)一日中、硯と向かい合って心のなかに浮かんでは消えていく他愛もないことを、あてもなく書きつけていると、妙におかしな、狂ったような気持ちになってくる)

あまり知られていませんが、この「徒然」と言う漢字は、「つれづれ」だけでなく「とぜん」と読む場合があります。

「つれづれ」は、主に貴族や知識人などが使う和語で、一般民衆はほとんど使うことがなかったそうです、一方、「とぜん」は、庶民のあいだで使われ、全国に広がって方言となっていったと言います。

この「とぜん」は、もともと漢語読みで、平安時代頃から「虚しい」という意味で、漢詩文や日記の文章に登場します。この「とぜん」が派生して、東北では「とじぇね」(秋田)、「とじぇんこだ」(岩手)、「とぜんだ」(宮城)。九州では「とぜなか」(福岡)、「とじぇんなか」(佐賀)、「とぜんなか」(熊本)、「とぜんね」(宮崎・鹿児島)と微妙に形は違いますが、現在でも方言として存在しています。どちらの場合でも、その意味は、本来の意味から再び派生して「寂しい」「退屈」となります。

プライミング効果

上のように「徒然なるままに」という文を、「とぜんなるままに」ではなく、ほとんどの人が兼好法師の「徒然草」を連想して、「つれづれなるままに」と読みます。

こういう現象を、プライミング効果とよんでおり、日本語では『呼び水効果』とも呼ばれています。

プライミング効果とは、「事前の刺激によってその後の処理が促進(もしくは抑制される)効果のこと」と定義されており、心理学では、色々な現象の元ともなっている非常に重要な効果をいいます。

上の場合では、兼好法師の「徒然草」が、事前の刺激であり、「つれづれ」と読むことが、その後の処理となります。

例えば、昼飯時に、何を食べるか決めていない時に、ラーメン屋から美味しそうな匂いがすると、いたたまれずに、ラーメン屋の暖簾をくぐった経験が、あると思います。これは、匂いによるプライミング効果と呼ばれるものです。

我々は、日々、膨大な情報に晒されており、これら全てを一から処理していったのでは、脳がパンクをしてしまいます。

そのために、脳は、無意識のうちに情報をフィルタリングし、過去の経験や目の前の情報に基づいて素早く判断を下します。これがプライミング効果を引き起こす原因となっています。

プライミング効果は、素早い思考と判断、そして行動を促し生存上非常に重要なものですが、諸刃の刃で、これを悪用すると人を操ることができます。

昔から、このプライミング効果が、消費増大に大きく影響していることが認識されており、研究が進み、今や、殆ど場面で、分からないようにこのプライミング効果が、商品の販売の為に悪用されています。

何となく買ってしまったという時には、ほとんど場合、自分の意志で買ったのではなく、このプライミング効果を用いた方法に騙されたと言えます。

暗示による洗脳

このプライミング効果が、言葉によってなされると、これが「暗示」となり、最終的には「洗脳」の最も効果的な道具として使用されることとなります。

「洗脳」という言葉は、非常に強い言葉であり、ほとんどの人が忌避感を抱くと思いますが、これは、日常社会によく見られる現象でもあります。

例えば、政治家が、選挙の時に使うフレーズ、テレビでの解説、新聞や雑誌による説明など、また、学校においても「ここテストに出ます」という先生の言葉も、その部分が重要であるという暗示を生徒にかけて、暗記させることも、洗脳の一種であると言えます。

この言葉による暗示が、特に上手かったのが、小泉元首相でした。小泉元首相は、重点をキーワードを使い、相手に暗示を与え、洗脳していました。
繰り返し同じキーワードを使い、それに対応した政策を打ち出し、プライミング効果を利用して国民を納得させていました。

その息子である小泉進次郎議員も、「小泉構文」なる言葉があるように、何を言っているのだか良く聞いてみると分かりませんが、なぜだか、納得してしまうという、言語感覚が他の人に比べて鋭いかもしれません。意外と、首相になると大化けするかも。

さて、最近、特にマスコミ関連で、「多様性」というキーワードが、多用されています。そして、鼻につくのですが、この「多様性」と言うキーワードで、韓国ブームに無理やり関連づけようとしています。

その公式が、「多様性」=「異文化」=「韓国」というものです。

例えば、最近では、「SHOGUN 将軍」が、エミー賞を18個も受賞したのは何故かという記事が多く掲載されています。

そして、大体の論旨は、同じで、記事のキーワードが、「多様性」そして、例として取り上げられているのが、韓国のドラマ「イカゲーム」と映画「パラサイト」です。

これら韓国のドラマ映画が、アメリカで流行したために、日本の戦国時代をドラマ化した「SHOGUN 将軍」が、アメリカで受け入れられるようになったという内容となっています。

何も考えずにこの記事を読むと、なるほどと納得するのですが、よくよく、調べていくと、「多様性」=「韓国」ではなく、「SHOGUN将軍」が、此れほどまでにヒットした要因が簡単に説明が付きます。

そもそも、「イカゲーム」は、日本の「だるまさんがころんだ」と深作欣二監督の「バトルロワイヤル」のパクリであり、映画「パラサイト」も実は、1963年の黒澤明監督の映画「天国と地獄」で表現された金持ちと貧乏人を、物理的高低で表現したものをそのままパクっているだけです。

つまり、「イカゲーム」や「パラサイト」以前に、アメリカやヨーロッパでは、「バトルロワイヤル」や「天国と地獄」が既に、アメリカ・ヨーロッパ文化に影響を与えていたという事です。

更に、このドラマ「SHOGUN将軍」を調べてみると、1980年に一度、アメリカドラマとして放送されており、第3話では、アメリカの視聴率の最高記録であるニールセン調べで57%を記録しており、今以上の話題のドラマであったことが分かります。

このニールセン調べ57%という数字が、どれだけ桁外れなものかと言うと、アメリカではNFL(アメリカンフットボール)の決勝戦である「スーパーボール」という試合が、毎年2月上旬の日曜日に開催されますが、この試合の日が、祝日になるのなど、アメリカでは毎年テレビ番組で年間最高視聴率を記録するなど、極めて注目度の高いコンテンツになっています。

しかし、この「スーパーボール」の放送でさえ、最高視聴率が、2016年の46.6%、視聴者数が1億1190万人であり、1980年に放送されたドラマ「SHOGUN将軍」と比べても、かなり低いものであり、どれだけこのドラマ「SHOGUN将軍」が、当時のアメリカで異様なほどの現象になっていたかが分かります。

つまり、「SHOGUN将軍」が、エミー賞を独占できたのも、1980年の現象を知っていれば、別に驚くものではないと言うことです。「SHOGUN将軍」が、受け入れられたのは、「イカゲーム」「パラサイト」の貢献の為ではなく、単純にストーリーが、アメリカ人の関心のど真ん中であったためでした。

そして、製作者の一人であり主演の真田さんの「本格的」というこだわりが、さらにこのドラマを深化(個別化)させ、1980年のドラマ以上にアメリカ人の心に衝撃を与えたためです。

以上のことから、このドラマが、これだけの現象を引き起こしたのは、「多様性」ではなく、その真逆である「個別性」が引き起こしていると結論付けられます。

図らずも、この「SHOGUN将軍」のヒットは、映画ドラマにおけるオリジナリティーの重要性も同時に明らかにしています。

結論として、この例にあるように、マスコミ関連の情報は、意図して読者を誘導しています。「洗脳」や「統制」に反対しているマスコミが、逆にこの様に「洗脳」という手段を使っているのには、本当に嫌気がさします。

こうした誘導された情報によって「洗脳」されないためにも、情報の多面性が、十分に担保されることが必要であると思っています。また、この情報の多面性の担保が、マスコミの良心であると思っています。



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