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ショートエッセイ「悪ガキたちとの楽しい酒」

  スナックやバーなどで飲む楽しみの一つに、初見のお客さんと交わす何気ない会話があげられる。そんな中で、自分にとって今でも異彩を放っている一件がある。

 「マジシャンめどう」として名乗りを上げる遥か以前、長野県上田市に住んでいた20数年前、シンセサイザーとコンピューターを駆使してライブ活動をしていた頃のこと。新聞記事やケーブルビジョンの取材を通じて、僕は上田市周辺でミュージシャンとして知る人ぞ知る存在となっていた。

 そんな頃、「戦国」っていう行きつけの居酒屋で、若者二人組と知り合った。
 彼らはいつも陽気だったが、高校時代はワルだったと言っていた。その二人の話が、私にとっては新鮮で面白かった。
 他校のワルと張り合ったり、彼女を取り合ったりして、相手をボコボコにしたり、その逆に顔を晴らして鼻血を流したことなどを笑い飛ばしながら面白おかしく話すのである。眉を吊り上げるでも肩を怒らせるでもなく、恨みつらみもまったく感じさせないカラカラとした笑い声をあげながら、面白おかしく話し、その時の様子が映画の一場面でも見ているようにありありと目に浮かぶ。
 そんなを見ていると、それまで忌避し遠ざけていた悪ガキたちの暴行沙汰が、軽く明るいレクリエーショ彼らンみたいに思えて、それまで感じたことのない、心地良い風に吹かれているような解放感を感じた。
 楽しい酒を酌み交わしているうちに、片方の一人からこんな誘いを受けた。
 「ミュージシャンのダチなんて初めてだから、すっげえ嬉しいですよ。こんど俺たちの行きつけの店に来てください。おれたちがおごりますから!」
 その後、上田市の隣の東部町の居酒屋に移動。そこでどんな話をしたのかは全く覚えていないが、話が尽きることのない笑い声に満ちた時間を過ごさせてもらった。彼らの裏の顔まで知り尽くしていたわけではないが、少なくとも目に映る彼らの姿は、底抜けに明るくて、ある種のヒーリング効果さえもたらしてくれる良い奴らだった。

 あれから、もう20年余り。彼らも中年になっている。どうしているんだろう? 良いパパになっているんだろうか?
                   (2023年 9月)


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