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「エマーソン、レイク&パーマー/1stアルバム」~ 青春の思い出
エマーソン、レイク&パーマー。
元ザ・ナイスのリーダーで、キーボードの鬼才キース・エマーソンと、元キング・クリムゾンのヴォーカル&ベーシストだったグレッグ・レイクが意気投合することによって誕生したグループ。
デビューした時期が、熱血キーボード少年だった僕の高校入学と、ほぼ重なっていたため、このバンドをが、十代の自分の指標を示す唯一無二の理想形と捉えていた。
このバンドのデビューアルバムがイギリスで発表された1970年11月、それがプログレッシヴ・ロックにとって、どういう時期だったのか、リアル・タイムを知らない方のために書き添えておこう。
その1ヶ月前にピンク・フロイドが『原子心母』を発表、キング・クリムゾンが『リザード』を発表した後だったか直前だったか・・・、そしてイエスが『こわれもの』を発表する1年前である。つまり、リック・ウェイクマンがイエスに加入する以前。当然、『危機』もまだこの世に存在していなかったし、そもそもプログレッシヴ・ロックなる括りも、存在していなかった。
The Nice が解散して後、随分長い間、このアルバムを待ったような気がした。Keith のプレイは好きだったが、ナイスというバンドには不満が多かったので、どんなバンドサウンドが聴かれるのか、あれこれと想像を働かせたものだ。
当時の自分は、ロックに憧れる15才の少年だったわけで、音楽体験もまだまだ乏しく、客観的に受け止めていたとは言い難い。音楽雑誌でのアルバム・レビューなどを見ると、EL&Pに対する日本でのイメージは、「数千冊の楽譜を所有する、ジャズ、クラシックに造詣の深い天才的なキーボード奏者が結成した、高い芸術性を持った玄人好みの音を出す、スーパー・グループ」というものだった。
68年にデビューしたLed Zeppelin の人気が凄まじく、そのサウンドを僕自身も気に入っていた。ソロ・デビューする前のビリー・ジョエルがソロ・デビュー前に結成した Attila が、ディストーションを利かせたオルガンを弾きまくるハード・ロックを展開しており、類似のキーボード主体のへヴィー・ロックを期待していた。
その時点で、このアルバムがどう聴こえたか・・・。
勝手に想像していた音とはかなり違っていた。クラシック音楽20世紀前半のハーモニー、ジャズ的なアプローチによる(ジャズとは言えないが)長いピアノ・ソロ、パイプ・オルガンの華麗な響き、高度なテクニックを必要とするピアノ曲、そしてモーグ・シンセサイザーによる、それまでに聴いたことのない斬新なプレイなど、他のロック・キーボーディストでは考えられないことであり、実に新鮮で革新的な音に聴こえた。
そんなキーボード・プレイヤーに、バディー・リッチに影響を受けた、あまりロック的でない手数の多い華やかなドラム、そして、やはり大方のロック・ヴォーカリストからはイメージ的に大きくズレた美しいバリトン・ヴォイスが絡んだバンド・サウンドは、野心たっぷりの若い魅力に満ちており、鳥の羽ばたきが描かれた格調高いジャケットのイメージとも重なって、その後の展開に期待感を抱くに十分過ぎるものだった。
まだ20代だった彼らの、若々しい野心が感じられ、それと同時に、このアルバムを初めて聴いた少年から青年への成長過程にあった頃の自分が思い出され、懐かしい気分になる。