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「ZARD/負けないで」

 ※2007年6月21日の日記より

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 ZARDのヴォーカリスト坂井泉水さんが入院中の病院の非常階段から転落死してから、3週間余りが経過した。そのニュースが伝えられた翌日、仕事先で20代の男の子が、朝顔を合わせると開口一番「昨日のニュースにはへこみました」。
 彼の顏にははっきりと落胆の表情が浮かんでおり、彼らファン世代にとっては大きな存在だったことを知らされた。
 実は、この時まで、ZARDについては、言葉の響き以外は何も知らなかった。坂井泉水さんという名前も、ソロ・ユニットだと言うことも知らず、オーソドックスな編成のバンドじゃないかと、勝手に思い込んでいた。

 その時以来、その身近な青年を含め、僕より若い世代の多くのファンが「支えられたのに」「勇気付けられたのに」と、逝去を心から悼んでいる様子が気になり始め、そのライヴの様子を知りたくて動画を探してみた。真っ先にヒットしたのが『負けないで』。たぶん、何気なく耳にしている歌なんだろうなぁ、と思いながら聴いてみた。

 コンサート会場で、坂井は、熱狂するオーディエンスに向けて、何の気取りも感じられない姿でメッセージを送っていた。


  負けないで
  もうすこし 最後まで走りぬけて

  なにが起きたって ヘッチャラな顔して
  どうにかなるサと おどけてみせるの 

 なるほどと思った。こういうメッセージは、多くの若い人々を勇気付けただろうと思う。自分の気持ちを前面に出すのでなく、相手の気持ちに寄り添うような歌詞。歌っているのは、優し気な美しい顔立ちの若い女の子、ギラギラしたことのないごく普通の育ちの良い女子。身近なところから話しかけてくるような雰囲気だ。励まされたファンが多いのも納得できる。オーディエンスの注目を避けるように、目線が定まらない。人前に立つことを好んでいないような感じだ。
 

 
 不慮の事故によって、ベスト・アルバムの売上が、オリコン売上ランキング2位に急浮上した後、他のアルバムも売上を伸ばしている。購入層は、従来の若年層から中高年にまで広がっているらしい。

 ご冥福をお祈りします。


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