【365日のしあわせ】ねこのおなか
久しぶりに実家に帰ると、ジジがすねこすりよろしく足元にまとわりついてきた。
学生のころ、車に轢かれていたところを拾ったまっくろな猫だ。
「おかえり、紀春。帰ってくるの、久しぶりやね」
ジジからすこし遅れて、母が出迎えてくれる。もう、1年以上も実家に顔を出していなかった。
「ジジも喜んどるとよ」
母が笑った。ジジは相変わらず俺の足にまとわりついて離れない。
「ちょ、ジジ、家の中入られんてそれじゃ」
俺が少々困っていると、母がひょいとジジを拾い上げる。
「後にせんね。またどうせ嫌ってほどいらわれるけん」
そういってジジのおなかにもふもふと手をやった。
母の助けに感謝しつつ、俺はジャケットを脱ぎ手を洗う。
「にゃあーん」
ジジがこちらを見上げて鳴く。
早く構えといった様子だ。
「しょうがないな」
手を拭いてジジに手を伸ばすと、ジジはとてとてと俺をリビングに案内する。
ごろん。
リビングのど真ん中で、おなかを見せて寝転がった。
ふは、と思わず笑ってしまう。
しばらく帰ってなかったのに、ジジは俺のことを忘れるどころか待っててくれてたんだな。
ジジの頭を撫で、おなかに触れる。ジジのおなかはふわふわしててやわら
げしっ。
手を蹴られる。
負けじと、再度おなかに手を伸ばす。
げしっ。
おなかの匂いをかいでみる。
げしっ。
さすがに、俺はまだ触っちゃだめらしい。
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