リビング

2023/10/22

右耳の裂けたところを探してるさいちゅう起きてきた音がした

リビングのために戸棚を買った日の心配な体が戸を開く

シャウティングチキン  水をあたためて液体のコーヒーをいれましょう

「だと思う」お疲れ様の花束を収めたガラスの瓶「だと思う」

鈍器が上の人かそれが飼ってる動物が床板を打った音が天井を

言うまでもないから「降る」とお互いに口にせず窓には翼の毛

みずしごとのうらぎりものは奪われた水のほう? 手放した指のほう?

ひかりからバターナイフを見つけるような影からひとを見上げるような


2023/10/29

眠る前のひととき耳をすますと
どこか遠くで目覚まし時計のベルが鳴ってる

谷川俊太郎「朝のリレー」

ねぼけてるうなだれた子犬の画像がこぼれ落ちそうなその薄目

天国に宅配便は送れない 天国から宅配便は来ない

Amazonが運んでくるというんだから人間が人間の倉庫から

お喋りな地球儀は科学で作るよ喉に単3電池がふたつ

Skip そろそろ引っ越したいね 1000年後ここに何度目の壁

2024/01/20

宗教と宗派を一度お互いに教えた花粉予報みたいに

洗濯の皺を伸ばして干す時の星の蚯蚓腫れに棲んでいる

靴ずれの跡がいつしか取り戻す色を告げ終えているその肌

イルミネーションは画像で見ても現地で見てもおんなじなのがすごいとこ イルミネーションとおんなじ同居

包丁もフライパンもフォークも慣れたりしないから爪を切るべきだと言っている


2024/02/23

フローリングにひらき始めた状態で止まった眉毛ばさみ 薔薇とパチュリ

暑かったもんね 部屋に私の匂いがすると言いながら枝一本を裁ち落とすところ

ひとくち飲んで鉢植えにひとくちあげるひとくち飲んで鉢植えにひとくちあげる


2024/03/29

列島を囲む掃除機/ドライヤー 指の股が自分じゃないみたい

壁と柱と比べてみると人を屋根に喩えることは珍しい

潰れやすい顔を肩へと埋め合う匿っている気分アーチは

炊き出しの鍋は直接見たことはないけど見たことがある 日めくり

借りているのに私達の部屋なんて言えていた日々として思い出す、だろう

会ったことない大家さんが持っているはずの鍵その象徴的な


2024/05/13

爪の乾きつつある鼻ぢ掻き出してどんなにか柔らかい鯨の胃

一瞬を藻掻いて緩む土色の重い重たい拳 癇癪

暴れる魚にのしかかる腕には鱗からも西日が差している


右耳の裂けたところを探してるさいちゅう起きてきた音がした

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