教育における「足場作り」~ヴィゴツキーと発達の最近接領域~
最近、あらゆるリーディングによくでてくるのがこの方、
ヴィゴツキー(Vygotsky)さん。
心理学の世界ではスーパー有名ですが、なんと37歳の若さで亡くなっています。彼が残した理論はたった数年間だけの功績、ですがそれでもこれだけ有名なのは本当にすごい、、、
ヴィゴツキーさんは社会文化理論(socialcultural theory)でも有名ですが、
今日は彼が提唱する、Zone of proximal development (ZPD) 、日本語では「発達の最近接領域」について紹介します。主に幼児教育などで有名ですが、成人学習にも応用が利く理論です。
Zone of proximal development
ZPDを図で表すと下記の通りです。
(画像元:https://learn-tern.com/proximal-development/)
円の内側:What I can do 援助なしでひとりでできること
その外側:What I can do with help 援助があればできること
一番外側:What I can't do できないこと
で構成された3重の円モデルです。
そして、What I can do with help (援助があればできること)の部分を、ヴィゴツキーは Zone of proximal development (発達の最近接領域) と呼んでいます。
ちなみに、Proximal というのが「隣接」という意味になります。
このZPDはいろいろな形で表すことができて、
たとえば、「生徒がひとりでできること」と「生徒ができないこと」が重なる部分がZPDだったり、
もしくはこのように縦軸が「難易度」、横軸が「能力の度合い」だとすると、この真ん中の斜めにつっきっているところがZPDとなります。
教育者としておさえておかなければいけないのは、
学習者が最も発達(成長するのは)このZPDの部分だということ。
そして、そのためにはタスクの難易度、学習者の能力に応じてZPDに入れるように調整することです。
Scaffolding (足場)の考え方
ヴィゴツキーさんは Instructional scaffolding (足場指導)という考え方を提唱しています。
足場?
私も初めて見たとき、はて?と思ったのですが、ヴィゴツキーの理論と密接に結びつきます。
たとえば、Googleで「足場」で画像検索をしただけでも、
このような粗め(細かくないという意味で)の足場もあれば、
(https://gaiheki-concierge.com/article/ashiba-important/)
そこそこ細かく組み立てられている足場もあり、
(http://seijou-inc.com/ashiba)
ビルに至ってはめちゃくちゃ細かく組まれている!!!
(https://www.taisei1013.com/menu/%E9%9B%86%E5%90%88%E4%BD%8F%E5%AE%85%E8%B6%B3%E5%A0%B4)
とこのように、「足場」とひとくちに言っても組み方も違えば、細かさも違います。
これも適当に足場を組んでいるわけではなく、
建物の高さ、登る難易度、そして鳶職さんの能力、どの程度リスクがあるのかなど全てを総合して考えられた上で足場を組んでいるわけです。
じゃあ「教育」だって同じ考え方をしてみたらどうかな?
というわけで「足場指導 (scaffolding)」という考え方ができあがっています。
学習者の能力、課題の難易度にあわせてどのくらい細かく足場を組み立てるか?がポイントになってきます。
自分のときを思い返してみても、いきなり見たこともない看護手技をやってみて!と突きつけられるのは、まさに足場がゼロの状態で3階建てのビルに登ってみろ!と言っているようなむごいことです笑
学習者がひとりでできるのか?援助があったらできるのか?じゃあその援助はどのくらいの程度で必要なのか?細かく見極めながら足場を組み立てられる教育者になりたいものです。
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ZPDに関しては、こちらの「なかむら」様のnote、とてもわかりやすく書かれています!