見出し画像

インストラクショナルデザイン(研修設計)にリフレクションを活かす~BoudのReflective learning model~

経験学習といえばコルブさん、、のイメージが強いですが実はいろいろな派閥のようなものがあるってことを最近学びました。

ちなみに、デューイ・ショーン・コルブなどは Constructivist (構成主義派)の理論家です。これ以外にもあと主に4つの派閥があり、追々紹介できたらと思います。

構成主義派の理論家の共通点は「リフレクション(省察)」を経験学習の軸に置いているということです。

We don't learn from experience. We learn from reflection on the experience.(我々は経験から学ぶのではない。経験の省察から学ぶのだ)

という言葉があるように、とにかくリフレクションからでなければ経験からの学びは得られない!という考え方です。(他の4つの派の理論家たちからはクリティークもされていますが)

この「構成主義」のなかの理論家、Boudさんが提唱したリフレクションを活用した学習モデルを紹介します!この学習モデルは、ファシリテーターが学習者に経験学習を促したいときに使われるものです。

ちなみにこのモデルは、シミュレーション・ロールプレイ・研修などのインストラクショナルデザイン(ID)にも活用できます

旧 リフレクティブ・ラーニング・モデル

このモデルを中心となって率いたのが、オーストラリアの教育学の教授、David Boud (デイビッド・ボウド)さんです。

画像1

ボウドさんが、Walkerさん、Keoughさんとともに作ったのがこの Reflective Learning Modelになります。

1985年に作成されたものがこちら。

画像2

英文の原著を元に、日本語バージョンを作りました。(字が小さくてすみません!)

人は何かを経験したあと、一旦経験に戻る(中央の円)。そして行動やその時の感情を振り返りながら(左の円)、ポジティブな感情を残して再評価することで、(右の円)経験に対して新しい見方を獲得していったり、行動に変化が起きるように繋がっていきます。

たとえば研修を行った場合、学習者と一緒に経験に戻り、その時こう思ったこんな行動をとったと一緒にリフレクションを行う→じゃあ次はこうやってみよう、現場にでたときにはこのように応用していこう、とその経験学習から学んだことを現場に活用できるようにしていく、といったかんじ。

この一連の経験学習に使用されるリフレクションを視覚的にモデル化したのが上の図になります。


ところが。。。

ボウドさん達は気づきます。

「経験って、本当に戻ることだけなのかな?後から振り返ることでしか経験学習っていわないのかな、、」

そして参考にしたのが、ショーンの reflection in action (行為中の省察)の理論です。

まだ読んでいない方はこちらから↓

reflection-in-actionは「行為中の省察」、経験しながら同時に振り返りをしていくというものです。まさに、やりながらリアルタイムで振り返りまくる。

そして、1993年にこのモデルをリニューアルしました。

新 リフレクティブ・ラーニング・モデル

画像3

3つの円は同じなのですが、今度は【準備期】【経験】【経験後】の3段階で分けられるモデルに変わりました。

【準備期】

ファシリテーターは学習者だけではなく、ニーズ・目的・現在のスキルを把握。そして環境にも注意を払ってアセスメントをする。

【経験】

ここに「行動のなかの省察」を軸に、学習者は経験を通して知覚したり、リアルタイムの学びを得る。そして個人がもともと持っている経験もここで尊重される。

【経験後】

そして、行動中も経験に戻り、今どんな感情かなぁとリフレクションを行いながらリアルタイムに再評価をしていく

しっかりと学習者と環境をアセスメントする準備期を経て→経験しながらの知覚したことや感情を「後から振り返る」のではなく、「やりながらリフレクションをして学びにする」という経験と評価の循環がとてもわかりやすく示されているモデルだなと思いました。

すでにインストに携わっている方には目新しいことではないのかもしれませんが、こうして研修や経験学習のアクティビティをファシリテートする時に、3つのステップが明示されたモデルを参考にしながらリフレクションを組み込むと、研修設計の段階でそれぞれのステージの目的が明確になると思いました。学習者にどの段階でどんな風にリフレクションをしてもらいたいのか、、

私自身このボウドのモデルは授業で初めて知ったのですが、これから研修など設計する機会があったらこのモデルの3つのステップをたどってリフレクションを組み込んでみたいなと思います。

さくっと短めですがこのへんで!


参考文献

Taylor, K., & Marienau, C. (2016). Facilitating learning with the adult brain in mind. Chapter 8. Jossey-Bass.

Boud, D. (1993). Conceptualising learning from experience: Developing a model for facilitation. Published in Proceedings of the 35th Adult Education Research Conference, 20-22 May 1994, Knoxville, Tennessee:
College of Education, University of Tennessee, 49-54.

図:Boud文献を元に筆者が作成


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?