鬼滅の刃から考えるボウルビィのAttachment theory (愛着理論)
4000字の大作が消えた
最近、ものすごいですね、どこもかしこも鬼滅ブーム。
ちなみに、4000字近くこの記事を書いていたのですが、noteにうまく下書きが保存されていなくて、下書きフォルダを開いたら「最近、ものすごいですね、どこもかしこも鬼滅ブーム」の1文しか残っていなくて本当に泣きたくなりました。
残したかったのはそこじゃない、、というわけでたぶん4000字また書く気力を奮い立たせるのに時間はかかりますが、また書きたいと思います泣
noteで調べてみるといろんな方が鬼滅とリーダーシップ、組織論、などと紐付けて書かれていてとても読んでいて面白いです。
私は、ちょっと違う角度から、「愛着理論」というのを最近学んでいて、鬼滅のストーリーととっても結びつきがあるなと感じたので、その視点で書きたいと思います(もう一度言わせてください、書くの2回目なんです泣)
※本日ご紹介する理論は、幼少期に家族関係でトラウマや苦い経験がある方にはその出来事を彷彿させてしまう可能性がありますので読み進める際はご注意ください。また、現在育児に奮闘しているお父さん、お母さんの方ももしかしたら少し不快に思われてしまうかもしれません。わたし自身子育ての経験はありませんが、自分が辛い時にこの理論を知ったら余計にプレッシャーがかかってしまいそうかなと思ったので念には念を入れてお断りを入れさせていただきました。
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私は大学院で「おとなの学びや発達」について学んでますが、なんと大学院で初めてなくらいに子どもの発達についてじっくり今学んでいます。
なぜかというと、おとなの発達は、子ども時代の発達過程に起因することが多いからです。
今日は子ども(というよりも乳幼児)の有名な、愛着理論(Attachment theory)についてご紹介します。
愛着理論とは
愛着理論の元祖といわれているのは John Bowlbyさん。
今では息子のリチャード・ボウルビィさんが後を受け継いで、研究を行っています。
ボウルビィさんの愛着理論で欠かせないメッセージは、
How frames of references are constructed in childhood (ものの見方は幼少期に形成される)
ということです。ボウルビィ自身、幼少期に親と離れて過ごしていたことや、小さいときに世話をしてくれていたナニー(ベビーシッターさん)との別れからこの愛着理論が生まれたとされています。
赤ちゃんはこの世界にうまれてから、周りの人との間にattachment (愛着)を形成します。でも、それが何らかの要因でうまく形成されないと(dettached)自己防衛反応やなどを身につけてしまい、大人になってからもより良い人間関係を形成しにくい、というのが愛着理論のざっくりとした要約です。
では、いったいどんな愛着関係があるのかを見てみます
(図はボウルビィの理論をもとに筆者が作成)
幼少期に形成される世界は、このようなピラミッド型のヒエラルキーとされています。
トップにいるのが最も赤ちゃんが愛着を形成するとされている「母親像」、これをprincipal attachment (主要な愛着)と言います。
ボウルビィは、この場合多くは「育ての母親」としていますが、これは母親ではなくてももちろん成り立つし、父親でもだれでも、とにかく絶対的に安心できる存在が1人いる、ということが大切です。
そして、その次にいるのがsecondary attachment, key personともいわれる、二次的な愛着形成。
ここには例えば祖父母、コミュニティ、幼稚園や保育園の先生など。
そして最後に位置づけられるのが3次レベルの愛着形成。お友達やよく赤ちゃんが見かける顔見知りのひとなどです。
そして、このどれにも含まれないひとは全員「赤の他人(stranger)」となります。
Mary Ainsworthの実験
愛着理論を理解するのにもうひとつ欠かせないのが、Ainsworthが行った Strange situation(直訳:奇妙な状況)という実験です。
赤ちゃんや小さい子どもにとって脅威となるのは下記3つの条件が揃ったとき。
①知らないひとがいる
②愛着を形成しているひとから離ればなれになる
③見知らぬ土地
私も、はるか昔に広島のジャスコ(祖父母が住んでいた広島という見知らぬ土地)で迷子になり(離ればなれ)、知らないおばちゃんに声をかけられたときの恐怖は今でも忘れません笑(おばちゃんごめん!)
そして、Ainsworthが行った実験は、
これら3つの条件を人工的につくりだしたときに、子どもはどのように反応するのか?
をテストするものでした。
部屋のなかに赤ちゃん・お母さんを二人にして、お母さんが突然部屋をでていき、代わりに知らないひとが部屋のなかに入ってくる→その時赤ちゃんはどのように反応するのか
Ainsworth曰く、赤ちゃんが適切に愛着形成をできているかどうかが判断できるというものです
適切な愛着形成が行われている場合、赤ちゃんはずっと泣き叫びつづき、知らないひとがあやしても全く泣き止みません。お母さんが戻ってくるとぴたりと泣き止みます。
そして、愛着形成がみられない場合は、様々な反応がみられます
①Avoidance (避ける)
不安はあってもそれを「泣く」として表にださない。けろっとした反応だったり、おもちゃで遊び続ける
②Ambivalent (相反性)
ずっと泣き続け、お母さんが戻ってきても泣き続ける
③Disorganized (感情がまぜこぜ)
固まってしまったり、おびえてしまって泣き出すと思いきや突然泣き止んだり、予測不可能な反応
などです。これらは、「赤ちゃんが非常に高いストレス環境のなかで、なんとか身につけた戦略」とも言えます
↑英語になりますが、3分くらいの動画で実際に行われた様子を見ることができます
愛着理論で最も大切なこと
この愛着理論をみてみると、大切なのはピラミッドの頂点にいる「母親像」の存在ではあるのですが、それよりも一番大切なのは
Key personとなる二次的愛着をどれほど形成できているか
の部分、とボウルビィは強調しています。
たとえば、海外ではナニーと呼ばれるベビーシッターに赤ちゃんのうちから全ての世話を任せる、ということはあたりまえですが、そうなると赤ちゃんにとってのprimary figure (母親像)はナニーになります。
そこまではもちろんいいのですが、4-5歳になって突然ナニーとのお別れがきてしまうと、母親を失うのと同じくらいのとても強いストレスとダメージを受けることになります。
そこで、大切になるのが2次的愛着をいくつも赤ちゃんが形成しておく、ということです。
代わりに面倒をみてくれる祖父母だったり、幼稚園や保育園の先生だったり、ご近所さんだったり。ボウルビィは、3人以上のキーパーソンの確保がとても大切だと言っています。
核家族化が進んでいたり、ご近所さんの支援が受けにくい世の中で、赤ちゃんを取り囲むひとはとても少ないという社会問題はあります。
このなかで、一人よりももっと多くのキーパーソンと繋がるにはどうしたらよいのか、課題としていくことが大切です。
鬼滅の刃から考える愛着理論
さて、なぜここで鬼滅が関係してくるかというと、
鬼滅と関連させれば読者が増える、という決して企んでいるわけではなく笑、
この愛着理論と鬼滅の刃が密接につながっていると感じたからです。
※ここから先は鬼滅の刃のアニメ(26話まで)をご覧になられた方を対象としています。ネタバレがいや!という方はここまでで止めてくださいね
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この鬼滅の刃にわたしがこんなにもどはまりしている理由の一つとして、それぞれの鬼殺隊、鬼にそれぞれの過去があり、家族があり、そこに至った理由と軌跡があるからだと思っています。
「家族」というのは本当に大きなテーマで、幼少期の「愛着関係」が後に鬼殺隊になるのか、鬼になるのかの明暗を分けるのではないか、というのが私なりの解釈です。
たとえば、金髪頭の善逸くん。
彼は、幼少期に両親に捨てられ、そして後に師匠でもある「じいちゃん」のもとで育ち、立派な剣士となります。
「じいちゃん」はまさに、善逸くんにとっての Key personと言えるでしょう。(じいちゃんと出会ったのが何歳なのかは不明ですが)そこで構築された愛着関係が、今の善逸くんの誰からも愛されるキャラクターを形成し、剣士としての核をつくっていると思います。
そして、もうひとり、着目したいのが炭治郎たちの同期にあたる、栗花落カナヲちゃん。
(イラストは おこめDさんに掲載許可をいただきました! )
カナヲは貧しい家に生まれ、両親から虐待を受け、身売りにだされたところ、胡蝶姉妹(カナエ、しのぶ)に引き取られます(アニメ第25話)
「ある日、ぷつん、と音がして 何も辛くなくなった。貧しい暮らしのなか、親に売られたときでさえ、悲しくはなかった」
とあるように、一切の感情をシャットアウトし、なんの感情も感じなくなります。カナヲは防衛するために、シャットアウトすることを覚え、習慣にしました。(これが先述したdisattached)
ところが、胡蝶姉妹のあたたかい存在に、だんだんとカナヲは愛着関係を築くようになります。
それでも、ある程度成長したカナヲは自分ひとりではなにも決められない(硬貨を投げて表裏でしか判断できない)、言われたことしかできない、という要素が残っています。
ここからわかることは、カナヲの幼少期の愛着関係はprimary attachmentも、key personもおらず、secure attachmentが適切に行われなかった→後に胡蝶姉妹がkey personとなり愛着関係を築けた→しかしまだ根強く当時のことが影響している というように説明できます
そして、漫画を読み進めていくと、鬼になるという選択肢を選んだ鬼達はそれぞれprimary attachmentやkey personの欠如の背景も見られます(ここはネタバレしないようにします)
現実世界には「鬼になる」という選択肢はないものの、悲しい事件が起きてしまうのは愛着関係も関わっていることが多いと思います。
まだまだ掘り下げていけば無限に語れそうですが、ようやく消えた4000字を越えたのでこのへんで。
おこめDさん、画像の使用許可ありがとうございます!
(参考にしたのは授業内容のため、今回は明確な参考文献は明示しませんがBowlby、愛着理論と調べると文献たくさんでてきます)
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