オシロイバナはちょっと怖い
この前、近所を歩いていたら「オシロイバナ」が咲いているのを見かけた。明るいパープルの色合いをした、一番スタンダードなオシロイバナだ。オシロイバナは夏に咲いているイメージが強かったため、11月に入り急に冷え込んできたこの季節には、不釣合いな花のように思えた。(ちなみに、あとで調べたところ、この花は多年草なのだそうだ)
このオシロイバナ、道端で見かけるまでは名前すら忘れていたのだが、わたしは昔この花が大好きだった。
小学生の頃、夏になると色とりどりのオシロイバナがそこかしこに咲きほこっていた。そして、珍しい柄や色のオシロイバナを見かけては、真っ黒の丸っこい種を持ち帰り、庭に蒔いていた。
わたしがオシロイバナを好きなポイントは、やはりこの「種」の部分である。このコロッとした小さなフォルム、ツルツルなさわり心地、一見すると種っぽくない感じがいい。そして爪を立てれば容易に種の中を開けることができ、そこには花の名前の通り、”オシロイ”が詰まっているのだ。
これがたまらなく面白い。未熟な種はやや緑がかっており、オシロイも完全な状態ではなく、少しベトッとしていたりする。だから、完全に真っ黒の成熟した種でないと、オシロイを楽しむことはできない。
オシロイバナは大変タフな植物だ。庭に蒔いていたら自然と目を出し、勝手に成長していく。梅雨が明けると、「たくさんお水をいただきました!」と言わんばかりに、めちゃくちゃに育っていてビックリする。
こうして、ガンガン成長していくオシロイバナを見て、わたしはにわかに恐ろしくなってきた。この花、いつまで大きくなるのだろう…?最初はわたしの足元くらいの大きさだったのが、もう胸あたりまで葉を広げている。花はぎっしりと咲き、種を落とし、そこからまた新たなオシロイバナが育っていく。
そしてあるとき、わたしはそのオシロイバナの「幹」を目にした。なぜそれを目にしたのか、きっかけは草むしりをしているときだったか、それともオシロイバナが育ちすぎて幹が折れてしまったからか…覚えていないのだけど、とにかく大量の花をつけるオシロイバナの母体である「幹」を初めて間近で見た。その幹は尋常じゃないくらい太く、ゴツゴツしており、なぜだかそれを見た瞬間、わたしはオシロイバナにドン引きしてしまったのだ。
可愛らしく咲かす花とは裏腹に、根っこの部分にはどこまでも繁殖していくような生命力がある。そのアンバランスさに恐怖を覚えるとともに、わたしの「オシロイバナ」への熱き想いは冷め、そしてこの頃はじめてこの花の”オシロイ”で手がかぶれたこともあり、完全に興ざめしてしまったのだ。
勝手に熱をあげ、勝手に興味をなくした「オシロイバナ」。都内に住むようになってからは、すっかり見かけなくなった。もしわたしが庭付きの家に住んだら、また育ててみたいような気もするけど、あのムッキムキな幹になるのは嫌だなと思う。