忘れられない先生のこと
教育実習に行った時に初めて子どもから「せんせい」と呼ばれたことを覚えてる。なんだかむず痒くて、先生なんて呼ばれるような人間じゃないのに。私が先生って呼んできた人たちは、どんなふうに思ってたんだろう。
私には忘れられない先生がいる。中学校の時の理科の先生だ。もうじき定年間近のおじいちゃん先生で、授業内容もたまに脱線し、自分がやりたいことやってるだけじゃない?というようなかんじだった。
先生の授業で忘れられないのがマウスの解剖だ。まず、手の届くところにあるマウスの衝撃といったらない。爬虫類用の餌としての冷凍マウスなのでとっくのとうに死んでいる。なのだが、これから解剖しなければいけないという中で見るととんでもない存在感だった。グループでの解剖だったため、誰がハサミとメスを入れるのかそれとない探り合いが始まったが、私のグループではやりたいという子がいたため速攻で決まった。みんな「どうぞどうぞどうぞ!」といった具合である。恐る恐るその子が解剖するのを見る。出てくる血、生々しい匂い、なかなかに強烈だ。けれども段々とそんな光景にも慣れて、尻尾をハサミで切ろうとする子や「私も切りたい」と言い出す子なども出てきており慣れとは凄まじいと思った。なんとなく理科室が異様な空間になったころ授業は終了した。その後は英語の授業だったのだが、あの異様な空間からの日常の風景に戻ったギャップの雰囲気がクラスから出ていたのだろう。「なんか、みんな疲れてない?」という英語教師の問いかけに誰も答えることはなかった。
先生とは卒業以降会うことはなかったが、忘れられない授業としていつまでも覚えている。
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