曾祖母のこと
私は母方の祖父母の家の近くに住んでいた。当時専業主婦の母と弟と一緒によく遊びに行った。祖父母の家では祖父の母、私からすると曾祖母も同居していた。当時はなんとも思わなかったが、要は祖母は曾祖母の介護をしていたのだ。祖母はとても大変だっただろう。
曾祖母はとっても穏やかな人でいつも小さなテレビで水戸黄門を見るのを楽しみにしていた。母と一緒に曾祖母の部屋を訪ねるといつも嬉しそうだった。内緒でレモンスカッシュの飴をよくくれた。飴を舐めている私を見て祖母が私に「どしたのそれ?」と聞く。私は素直に「ひいばあちゃんがくれた」と答える。実は曾祖母は糖尿病で祖母に隠れて、飴を買っていたのだ。悲しいかな、ひ孫に分け与えた曾祖母の優しさが祖母にバレるきっかけとなってしまった。曾祖母が祖母に怒られているのを「これは私のせいか…?」と謎の罪悪感を幼いながら感じていた。
そんな曾祖母も認知症が進み、施設に入ることになった。私もそれなりに大きくなっていて、学生生活に忙しく曾祖母に施設で会ったのは1回程度だ。曾祖母はもう私のことも、母のことも、祖父のことも覚えていなかった。でも、祖母のことは最後まで覚えたいたらしい。実の息子でさえ、忘れてしまうのに、最後まで介護をしていた祖母のことは覚えていた。
自分もいつか老いていく。その時に、どんなことを覚えているのだろう。どんな話をしているのだろう。今はまったく想像がつかない。
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