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映画「IT」の指輪 〈映画の指輪のつくり方〉第15回

「ピエロ怖すぎてなんも入ってこない」
1990年公開映画「IT/イット(IT)」
文・みねこ美根(2018年10月1日連載公開)

 私は鼻血が出やすい。子供のころから今でも、ずっと同じ体質だ。鼻血が出ても今更パニックになることはなく、血が垂れてくる前に「あ、鼻血出そう…」と感じる予知能力も育ってしまった。この体質を人に言うと、「えっ、私、鼻血出したことなぁ~い」「鼻血ってそんなにでるもの?(笑)」といわれることもあって、そのたびに、こぶしを握り「今出してみます? 手伝いますよ」と振りかぶろうとする自分を抑えなくてはいけない。鼻血=興奮・チョコレート、という知識を押し付けてくるのも勘弁してほしいし、「上を向けば止まる」と言ってくる大人に従ってひどい目にもあった(のど元に血が降りてくるので非常に気持ち悪く、せき込み、そして止まらない)。中学生の時に、血があふれる鼻を抑えて保健室へ向かう姿を教師に笑われたことがある。「また?(笑)」と言われた瞬間、人が出血しているところを見て笑う人間も教師になれるのか、と非常に残念に思った。唯一、私と同じように、鼻血を出しやすい少年が同級生にいて、鼻血をいかにして止めるか、という話で盛り上がったことを思い出す。「IT」ではたくさん血しぶきがあがるので思い出した。元気だろうか。

ハロウィンも近いので、スティーブン・キング原作の「IT」1990年版のものを見た。これはテレビで放映された映画である上に、原作とはかなり違うとのこと。カメラワークも、もっと引いて撮ってくれたらもっと美しいのに!とか、カットが細かすぎるよ、このまま見せておいてくれよぉ!という気持ちになったり、オープニングやほんのり映し出されるペニーワイズ(ほんのりペニーワイズ)もちょっと面白かったりとダサ可愛い…。「ホラー版スタンド・バイ・ミー」とよく評され、確かにその通り。しかし、ピエロが強烈過ぎて、この映画版については、もっと子どもたちにフォーカスした方がよかったし、私ももっと子どもたちに重点を置いて見るべきだったと反省した。

それもこれも原因は、ピエロのペニーワイズが怖すぎる!!!!ということ。画力(えぢから)強すぎて、むしろ芸術。演じるティム・カリーが素晴らしい。私は「ロッキーホラーショー」のティム・カリーが大好きなのだが、嗚呼! あの顎のずらし方! なんて素敵なのだろう、ペニーワイズのティムもそれを見せてくれた。少し離れた目と大きな口、特徴的で素晴らしい顔の配置に加え、あのメイク、目の覚める真っ赤な髪に白い肌。なんだか存在が「素っ頓狂」なのだ。突然ぽっかりそこにいる。日常の景色にあのパキッとした色合いが急に存在すると、間が抜けるのと同時に「なんだか気味が悪い」うっすらとした恐怖が襲ってくる。だからこそ、シャワー室のシーンなんかは超絶もったいない。もっとペニーワイズを固定で映しておいて欲しい! めっちゃ怖いから!! 一生、浴室に入れなくなるところだった。

 高校2年生の時の文化祭で、クラスの出し物としてお化け屋敷をやったことがある。その題材としたのがこの「IT」だった。最後に殺人ピエロが追っかけてくるというとてつもなく怖い設定。みんなで準備をしたり、考えたりするのがとっても楽しかったのだけれど、“集合写真”に、私は写っていない。いつのまに撮ったのだろう…。恐怖。

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モチーフ:赤い風船とペニーワイズの腕、エディの吸入器、
     ベバリーのパチンコ、ベバリーの洗面器、ジョージー号、
     血の滴るジョージーのアルバム
音楽:「Library Balloons」Richard Bellis(オルゴールver. cover)

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